浅田次郎著

「雑誌以外の本って余り読まないわ。」という人に尋ねられたことがある。
「読む本ってどうやって見つけるの?読書が趣味なんでしょ?」
「う~ん、色々だけどね。人から教えられたり、本屋さんや図書館でたまたま見つけることもあるけれど・・・そういえば本屋さんで見つける時に面白い出会いもあるのよ。」
と、この本を見つけたときの出会い話をしたことがある。

それまでこの作家の作品を手に取ったことは無かったのだが、「好きだ。」と言った友人がいたのを思い出して、本屋の棚をずーっと見ていった。
かなり沢山の本が並んでいて「ほおぅ!」
そのときに目に付いたのがある短編集だった。
作家に注目する時、私は短編集から入ることが多い。
魅力的な凝縮された短編に出逢うと「ではこの人の長編にトライしてみるか!」という気になるのだろう。
その時もこの短編の題「鉄道員」というのに心ひかれたのだ。
昔この題のイタリア映画だったかな?いい映画があった!
なんとなく旅情を刺激されるし、憧れとか、郷愁とか・・・
それに「ぽっぽや」というルビがまたゆるやかでいながらプロ的な何かを表現していて、思わず手に取ったのだ。
が、その日はもう時間が無くて数ページ目を通しただけで本を棚に返さなければならなかった。
私は親友になる本には慎重だ。
しかし、場合によっては数ページで確信して買い込むこともあるが(ロザムンド・ピルチャーさんの時は「花束」で確信した!が)、この時はそこまでいたらなかったので、次回の楽しみに取っておくことにしたのだ。
結局その後2回の本屋さん通いで(すいません)この「ぽっぽや」を読み通してしまった。
予感にたがわず途中涙で目は曇りかけるし、心は優しくなっていくし・・・普段だったらこの本確実にゲットして帰るはずだった。
ところがこぼれかけた涙のせいで私は本屋から慌てて退散し、その日買わなかったのだ。
そしてこの話をその人に何気なく話したのだが・・・それが運命の分かれ道?

話を聞いたその人が言い放ったのだ。
「へぇっ、読書ってみみっちい趣味なのねぇ!ただ読みじゃん。」
物凄く素敵な作品だと思ったんですよ。
心がふっと優しい異次元に運ばれて柔らかく揉みほぐされて返されるような。
でもその一言!
私は階段を踏みはづしてドッタンと落ちて、尾骶骨にひびが入ったような痛みをがっつんと喰った感じ!
浅田さんと「み・みみっちい?」が妙に結びついちゃって?それ以来まだ浅田さんの棚に近づいておりません。
あれからもう7、8年以上もっとかな?経つというのにね。
最も、その後映画は見ましたよ。健さんのファンだしぃ。
ここで白状しちゃったから、免罪符!
さぁ、次の段階に進みますかな。

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