ブレイブ・ストーリー

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宮部みゆき著

図書館で何人か待ちだった本が届いたと連絡を貰って受け取りに行きました。「嘘ッ!」でした。
自分では文庫本か新書版くらいの本を予想していたのですから、私ものんきです。
本屋さんで探す前に「映画」を見て納得がいかなくて、パタパタっと図書館で検索して申し込んで、本を確かめなかったのは私がうかつでした。角川書店の上下二冊本はそれぞれ一冊の厚さが4センチ余りもあろうか?と言う代物でした。
「これじゃ持ち歩いて電車の中で読めやしない!」と言うわけで、読み終わるのにたっぷり1週間はかかろうと思ったのですが・・・かかりませんでした。
でもひどい寝不足で、今頭が働いているかどうかちょっと?かなり!疑問です。
面白かった!
多分、本当の推測ですよ・・・私はロールプレインゲームと言うヤツが苦手です。でも多分?子供たちが小学生の頃友達と廻し読みをしていたゲームの攻略本のようなものを想像してしまいました。
本当に「ゲーム」っていうのはインベーダーからロードランナー、テトリスからズーキーパーぐらいのものをいうもんですよ!私に言わせれば!
ま、それはさておき、この本を読んだのは映画がきっかけでしたから、私が最初に思ったのは「脚本」というもののことでした。
あの本を2時間ほどの映画にまとめるには大変だっただろうということは良く分かりました。それにしては実に要領よく芯を一本にして対象を絞って換骨せずに構築した手腕が「光っていたんだ!」と、思いました。
脚本家を目指す人の気持ちがなんとなく腑に落ちたような気がしました。
下手な脚本家に手がけられたら「骨抜きになって物議をかもす!」なんていうことが起こるのも「なるほど!」です。この映画の脚本家は実にシンプルに「選び取った」のだと感心しています。
さて、宮部さんのこの物語です。
映画と違うのはこれは大人の私にも色々考えさせられる「精神的なステップ」がいっぱい散りばめられてあって、私も子供に戻らない「今の自分のまま」、ハードルを越えていかなければならなかったのです。
そして今の私はこの旅を潜り抜けたワタルほども自分の50年余りの人生でしっかり考え奮闘してこなかったということに気が付いてしまいました。いやはや!
宮部みゆきさんの手の平でまたしても自由自在に操られてしまいましたね!
最後の1ページを読み終わって、今そのことに感心しまくっているところです。凄いや!
だからある意味この本は私を「東京タワー」より泣かせました。
私の中に残っている童心が素直に感応してしまって、彼の(ワタルの)最後の願いにはもう涙!でしたから。
「よくやった!よく成長したね!」と、頭を撫でてあげたいくらいですが、彼の方がもう私より大人です。
気恥ずかしくなっちゃいましたものね。
読む人は皆きっとこの本のどこかで自分の問題と向き合うことになりそうです。
そのときにワタルのような選択をするかどうか分かりませんし、違う選択肢を選ぶのもありなんですよ、きっと。それで良いんです、自分の現世ですからね。
でも、選択すべき時にきちんと自分の選択を出来る自分でいたいものだと・・・遅まきに思ったことでした。
書き抜いてしまっておきたいような言葉をいっぱい見つけました。
宮部さん真っ向から精神論というか倫理論(道徳論?)を振りかざしているのだと感じましたが、その包み紙のオブラートがまるで万華鏡のようで本当に楽しい読み物でした。
キャラクターがちゃんと映画を離れて一人歩きしています。私の中で。
映像を見た後でそれに左右されないでイメージを作るのって結構難しいものでしょう?それなのにこの物語に関しては簡単に私のワタル、キ・キーマ、カッツ、ロンメル隊長、ミーナ、ミツル、カッちゃん、ラウ導師の「オリジナル?イメージ」が出来ました。
それだけ宮部さんの筆も生き生きと登場人物?を描き出していたんですね。きっと、また読み返しちゃうわ。何度も何度も!
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又蔵の火

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藤沢周平著

大好きな藤沢さんですけれど、読んでいないものがそれでも未だ何作もあります。大体現代物は読んでいないんです。
この作品はなんとなく取り落としたものの一つです。
短編というか中篇でしょうか、5篇が収録されています。
「又蔵」意外はやくざ物です。
多分手に取る時、市井物でももっと「優しい」と思えるものから先に選んで読んでいたからかもしれません。それにこの作品は特に暗そうでしたし。
だからといって周平さんの暗い作品は嫌いではありません。
「暗殺の年輪」の中の葛飾北斎の心情を描いた作品「凕い海」などはずっしりきますがむしろ好き、魅入られましたし、「海鳴り」なんて妙な感じに身につまされましたし・・・「伊之助シリーズ?」なんて、もっと読みたかったなぁ・・・と惜しんでいます。
周平さんの作り出した主人公のうち「青江又八郎」「神名平四郎」「立花登」なども皆大好きですが(彼らは安心できるんです)、それ以上に伊之助好きですねぇ。心がギュウッとするのです。

まだ生きるにしろ、死んだにしろこの本の中の男たちは何かを選び取るというよりも、何かに突き動かされたのだと・・・そんな話を作者は書きたかったのだと・・・感じました。
「You are my destiny・・・」というフレーズが頭の中に浮かび上がりました。
どの話もどうしようもなく、どう動かしようもなく、こういう運命から切り離すよすがも窺えないほど、ピィシィッと人生が閉ざされる音が聞こえるようでした。
読んでいるうちにこういう男たちに寄り添っていく、いとしく思えていく自分が居て、それが不思議でした。
この物語に共通して現れる女性像はどぎつい色を持っていたり、はかない色を漂わせていたりはしていても、それと知らずに運命の時に現れて男の命運を断ち割っているのが恐ろしくて、出会いというものが持つ底の知れなさに酔わされました。
究極の場では涙と血は同じものなのかも知れないなぁ・・・と、こういう究極の世界をこのような形で見せてくれる作家の凄さを思いました。
女たちが過剰に「見せる・持っている」情には母性が匂っているのが哀れでした。作家は女に何を求めたのでしょうね。
「又蔵」のハツにもそれは見られて、「そんなもの持つんじゃないよ。不幸を纏った男に入れあげてしまうよ。」と、長屋のおかみさんみたいな口調で気遣ってしまいます。でもハツは魅入られてしまうんでしょうね。
その女たちにもこの男たちがやっぱり「Destiny」なのでしょう。
又蔵の突き進む道には理非のかけらも無いでしょうけれど、又蔵を押し流す情だけは暗く深く迫力を持って流れていますものね。
その流れをまともに受けてしまって死なざるを得なかった男にとっては天災でしょう?その家族はどう受け止めればいいのでしょう?受け止められはしませんよ!
やりきれないと思うのに男や女が生き生きしているのですよ、ここでこうしている私なんかより。ちゃんと生きていると思ってしまうんです。そしてどこか羨ましく思う心が私の中に潜んでいます。
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東京タワー  オカンとボクと、時々、オトン

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リリー・フランキー著

図書館に予約して千人待ちを超えたのは初めて。
ハリー・ポッターで600人待ち、ダ・ヴィンチ・コードで500人待ちっていうのはあったけれどね。
これってどういうのでしょうね?私みたいに気の長い人が世の中にはこんなに居るってことでしょうか?
おかげさまで待つこと後900人余り・・・というところで貸していただけたのでこうして、来年?を待たずに感想を書けるわけです。
貸してくれる時、彼女は「今までで最高に泣けた!」と、言っていましたからどうやら「広告の通りらしいぞ!」と、あらかじめ心の準備?をすることが出来ました。それが良かったのかどうなのかは分かりませんが。

「オカン」・・・「オカン」かぁ、「オカン」ねぇ・・・私が子供の頃は「かぁちゃん」と「おかぁちゃん」と「おかぁさん」が3分のⅠずつって感じだったなぁ。
参観日に当てられた子が「かぁちゃんが・・・」と言いかけたら、後ろに居たお母さんが慌てて「おかぁさんって言いなさい。すいませんねぇ、先生、躾がなってなくって。」と大声で言ったので、教室中大爆笑しちゃったのを思い出した途端、母の思い出がぞろぞろぞろぞろ這い出てきてしまったのには参ってしまった。
本を読みながら本の中の「ボク」の思いに泣けて、自分の母の思い出に泣けた。
それにしてもリリーさんの世代ならお母さんへの思いをこんなに素直に書くなんて有り得なかっただろうに・・・?
「オカン」だから言えたのかもなぁ?
転勤で地方を回っていたせいか、まとめて数日休めると必ず夫は実家へ家族連れで帰った。
「留守にするのでお願いします。」と近所に声をかけると「よく帰るねぇ、ご主人マザコンなのね。」と、何度か言われた。「アア、そうなのか、これがマザコンかぁ?」と、思ったものだ。
しかし娘が母と付き合い、父を大事にしても「優しいお子さんで!いいわねぇ。」と、言われるだけなのに、男の子が親を大事にするとおかしげに言われるのはつまらないわねぇ。(私も言っちゃったなぁ、スマンこって!旦那様)
娘を持った友人たちは、娘が結婚しても娘と遊んでいるくせに、その娘が夫の故郷に連れて行かれると「可哀相、うちの婿、マザコンじゃなけりゃいいけど?」なんて言ったりする。
「おい、おい?」と息子しか持たない私は思う。
他人のことなら見えるんだけど・・・。
この本を読んだ人が皆、素直に「大事な者は大事!」と思うことが大事!と思えるとといいなぁ・・・、でも「女の子の読者の方が圧倒的に多そうだぞ?」と危惧もする。だって、女は自分が見えないものねぇ(へへ)。
男の子の方が争いがいやで、「女の軍門に下る平和」を選ぶ率が高そうだからなぁ・・・なんて、自分を含めて(自戒します・できるかな)周りの女を見回している。
リリーさんも当時独身だったからだなぁ・・・?なんてウラヤマシサも自分から隠そうとしてみたり。
「筑豊の子」と言えば、私の世代は「にあんちゃん」を思い出すだろう。「にあんちゃん」を思い出すと、あの当時の筑豊の厳しさも甦えって、リリーさんの「オカン」や「オトン」の道程が忍ばれる。
「オカン」は並々ならぬ、並々以上の、最大級でも追いつかぬほどの、愛情をすべて息子につぎ込んだのだろうけれど、「オカンの人生は18のボクから見ても小さく見えてしまう。それはボクに人生を切り分けてくれたからなのだ。」というところで、そう感じてくれただけで「オカン」はもう満足しただろうなぁと思える。
息子たちの「臍の緒」は私にも宝。いやいや、取り出すのはやめとこ。
読み始めた時にはこの文体が感情を韜晦してくれるだろうと思ったが、後半すっかり流されてしまった。
お母さんは息子から小さく見えなければいけないのに、夫の母も私の母も私もちょっと(丸々と!)太りすぎだよなぁ・・・とため息をつくことで、かろうじて堰を保とうとしていた・・・。
面白い文章、表現、観点もこの本の中には溢れていた!この文体で、素直に読ませるなんて、不思議だなぁ?

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堪忍箱

題名INDEX : カ行 28 Comments »

宮部みゆき著

「ブレイブストーリー」を予約しに図書館へ行ったら見つけました。
宮部さんの特に時代物の作品が好きですから、「読んでいないのがあったぞ!」と借りてきたわけです。
8つの短編が収録されていました。
この短編集は実に色々な感情をそれぞれに抱かせてくれました。
読後感の良いものばかりではありませんでした。いえ、読後感の良かったものがあったかしら?
特に表題になっている「堪忍箱」「十六夜髑髏」は堪りませんでした。
なんとも気の重いやりきれなさがありましたが、この短編集の中に心からくつろげて楽しめる作品は無かったのです。
宮部さんの底の知れない、間口の広い?小説世界をまた味わうことになりました。
どの作品もが闇を秘めています。この闇は人間の「心の病み」にも通じるようです。
読み終わって隣を歩いている人もこんな闇を抱えているのかもしれないとふと思った時、あぁ、この作品も時代を借りているだけで現代なのだと思いました。
それどころか私自身にも覗き込めば蠢いているような「病み」がありそうです。
ニュースを見ると信じられないほど世界中が病んでいるのではないかと思いますが、いえ、世界中なんてものではない、そんなご大層な世界に広げなくたって人は元々心の中に闇を持っていてそれが何かの形で現れるのが人の「病み」なんだ!
人からそっと出た一つ一つの「病み」がなんかの拍子でくるっと纏まるといやな事件が起きて、ついには戦争のようなものに変化してゆくんだ。
なんてことまで考えてしまいました。
私だって、覚えがあります。「てんびんばかり」なんて、大抵の女が心の底に秘めている魔物ではありませんか。
でも大多数の人はお吉なんだけれど、お美代みたいに後ろめたい人生をつい選び取っちゃって、落ち着かない人生を歩くことになる人間もいて、又、お吉がしなかった選択をする女も居るだろうし。
それはそのまま、会社や社会で男たちも繰り広げているささやかな暗闘と似たものではないでしょうか。
この作品群で見せられる闇は誰にでもありうる病みで、「今」という時代が生き難くなっている感じがするのは、その闇を心の中に包みきれない人が増えているからなのじゃないか・・・なんて。
人が隣の人に注意も興味も優しさも抱かなくなっているから、歯止めに成るものがどんどんなくなっているから・・・。
お吉だってお美代だって大家さんが居なかったら・・・?とか、「かどわかし」の小一郎だって、箕吉が心を残してくれていなかったら・・・?とか、「謀りごと」だって長屋の連中がお互いを全然知らなかったら・・・?とか、「お墓の下まで」だって、お滝が過去にあんな事をしていなかったら・・・あの子達は・・・なんていう風に関わってくれる人が回りに居るから閉じ込め切ったり、癒し治したり出来たんだもの・・・と思いながらも、じっとりといやな感じのものに纏いつかれたような読後感でした。
「お墓の下まで」は皆普通に会っていたらよい人ばかりですのにね。
この作品ばかりは悲しみが勝ちました。
どんな闇を抱えてもまっとうに、健気に生きていくことは出来るんです。
それに最後の「砂村新田」のお春と母親はいい感じでしたね。
私も優しかった母親をつい思い出してしまいましたが、お春の心遣りのつつましい優しさ控えめな利発さは人間というものに希望を抱かせられます。
最後の短編で少しほっとさせられて、また宮部さんに思うように私の心を操つられちゃったって思いました。
心に黒い漣を起こさせられて、一寸鎮められたような。

日本婦道記

題名INDEX : ナ行 812 Comments »

山本周五郎著

「私の大好きな短編集である。」
ってことは、前にも書いているかもしれない。
先週先々週と私は忙しかった!自分の用件も友人たちとの楽しい会合もあったけれど夫の趣味の旅行へのお付き合いもあったし。
それはそれでとてもいい時間だったのだが、根本的には私は一人で静かに居たい人なのだろう。
身体ではなく人と会うことが多くなると気持ちが草臥れる。
まさにこの字のごとくクタット草が踏み潰されて倒れ伏したような気分になるのだ。
特に知らない人に会わなければならない時はなお更。割合、情緒安定型に見られるのでそれに気付く人はあまり居ないのだが。
そんな時これを読む。
気持ちを奮い立たせ、しゃっきりし、こんな自分じゃいけないと叱咤するために!とも言えるかもしれないが、反面大いに泣けるからかもしれない。泣くと誰はばからず心がむき出しになって表れて、それを洗い晒して、リサイクル?リフレッシュ??出来るような気がするから。
つまり新しく立て直すための1冊なのだ。
勿論若い人が今読んだら、反発の方が大きいかもしれない。
でも自分で決めた道を自分なりに誰にも知られることも無いまま筋を通して生きていく女性たちの気迫に私は打たれてしまう。
この中の11の短編のうち、その生き方について理解が出来る女性の数はそうは無い。
多分私にしてからがもうこんなに滅私では生きられない。凛々と言う音色まで聞こえてきそうだ。
けれどそういう事を別にして、彼女たちは清清しく、潔く、強い。彼女たちに包まれて助けられて生きたことに気が付かない夫や子供たち兄弟姉妹が居ても構わない。誰に知られることもないまま終るその見事な彼女たちなりの選択と実行力に敬服する。気が付いて認められることなど殆ど無い。感謝される事も稀だ。それでも彼女たちは行く!生き通す。
「風鈴」は私にはぐっと身近だ。弥生さまの気持ちは痛いほど分かるし、私も実はそうだった。っていっても、私は苦労はしていないけれど、みっともないことに回りの豊かさに目がくらむことがしょっちゅうあったから!
他の短編でも同じ事だ。その主人公が選び取るのはいつも茨の道で、誰も今では選び取りはしません。だから私は泣ける。素直に泣けます。
でもそれは自分はこんな茨の道にはいないでよかったという涙ではありませんよ。
そういう自分だったらいやだなぁと何度も振り返って、自分の気持ちを確かめたこともありました。でも違います。
一寸代償行為のような気はして後ろめたい感じはあるのですが。
彼女たちはいつも安易な道を取らないのです。
「辛かったでしょうね。」「大変だったでしょうね。」と手を取って撫でさすって上げたいくらいですが、彼女たちは「いいえ!」と微笑むだけでしょう。
いつも安易な道、楽な道をと選って歩いている自分を再確認して情けなさに泣けてしまいます。
この作品の中には「諭し」が多くあります。例えば「桃の井戸」の長橋のおばあ様など。現在身近にこんな風に諭してくれる人あなたに居ますか?それから生き様であなたに尊敬の念をかき起こしてくれる人が身近に居ますか?
この作品で読むこれらの諭しは私にはありがたく感じられます。
日本婦道記」という題名がいかめしいですが、とっついてみると確かに道は険しくありますがその道にちりばめられた教えや諭しは心優しく美しいものです。
こんな風に自分を確認すると、「明日は違う。」と自分を起こすことが出来そうなんです。
ま、2・3日で自分の道の石ころをさっさとどけてしまうんですけれど。そこがまた情けないところで・・・

「マーゴの新しい夢」(ドリーム・トリロジー1)

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ノーラ・ロバーツ著

完全回復!勿論スティーヴン・キングからの、を狙って探した本です。
何か優しくって、ロマンチックで、乙女チックで・・・私の得意な分野の本をね?
少女っぽい題名の本を次々に探していって「ロマンスの巨匠が女性たちの愛と夢を描いた、3部作第1弾!」というキャッチフレーズに目が釘付け。
「トップモデルが10年後スキャンダルの中で破産・・・再出発は姉妹同然の親友2人と・・・」という補足事項で完璧!と思ったのです。
女3人が親友・・・また難しい設定だなぁとは思ったものの、それが出来ればそれこそ私の望む完全癒し系?じゃないの。
しかも3部作ともなれば楽しみは長―い尾ひれとともにだもの、注文したってなかなかこうは行かないってくらいのものです。
それに私は今までこの作家知りませんでしたけれど「ロマンスの巨匠」です!
ロマンスに巨匠がくっ付いているのですよ・・・と思って見回せば、なんか女性が喜びそうな題の本がずらり!扶桑社海外文庫です。今まで余りなじみはありませんけれど・・・ままよ!
この3部作「マーゴ」のあとは「ケイトが見つけた真実」「ローラが選んだ生き方」と続き、「愛ある裏切り」「悲劇はクリスマスの後に」「海辺の誓い」「珊瑚礁の伝説」それに宝石名をちりばめたシリーズと続いていました。ね?
「巨匠なのに知らなかったとは・・・」と、これを読むことに決めました。
填まれば尽きぬ泉のように作品がありそうですからね。
で、今猛然と腹を立てているところです。
読み始めて「あれっ?女性のシドニー・シェルダン?」って!本当は偉そうに言えません。シェルダンは2作で諦めました。
「タイプじゃない」と早々見際目をつけたのですが、その二の舞でしょうか?
まるで「ハーレクィン・ロマンス」みたいだわ。ジェットコースタータイプ。読み終わった今、作家が「ハーレクィン」の作家だと知りましたから、あながち間違えた結果ではなかったようです。
猛然と腹を立てていると書きましたが作家にではありませんよ、念の為。大方は物語の設定にです。(私って気が小さいから)
「だって、それじゃぁ、なんだって出来るだろ?」ってチョイトむかついています。って、そんなに大上段に言う必要は無いのです。
夢物語にどっぷりつかって面白いなぁ・・・って思えばいいのですし、余計なことに気を廻さなければものすっごく面白く読めたのです。
ただ私が持ち得なかったもの、持ちたいけれど与えられていなかったものふんだんに持たせておいて何が試練だ!何が自己発見だ!って私は猛然とやっかんでいるのです。
どんなに失意に落ちようと、男なら誰でも引き付ける絶世の美貌と肢体と向こうっ気を持っているのですよ。しかも後ろには白馬の美貌の逞しい王子様が居て、その鞍には財閥が仕込んであって、更に後ろには愛情深い理解も深い王様と女王様が付いていて、賢い母もいて、二人も真の親友が居て・・・それでどう不幸を持ちこたえられるって言うのでしょうね?アホくさ!
「好きなだけ甘く足掻けば?!」って言いたくもなるでしょう?
トップモデルがどんなで、大富豪がどんなで・・・って覗き見たい?それならいいかもしれませんね。
それとも素直に女の友情を信じてみたい?それもいいかもしれませんね。
モンゴメリーさんの世界に現代香辛料をまぶしたのがピルチャーさんの世界だとすれば、それに唐辛子興奮剤を振り掛けて「今」味にしたのがこの作品かなぁと途中で思いかけましたが、違いましたね。
愛すべき世界がここには無いのですよ。
プライドの質が?作家の資質が?色々なものがやっぱり違うのではないかなぁ・・・と、思うのですが、さて?
1940年代に育てられた女の子には刺激が強すぎたのだろうって?そうなのかもしれません。
でも、だって、やっぱり、ありえないだろ?
イエイエ、日本人でも凄い富豪層が財産保全、相続税回避のために海外で豪奢に暮らしているらしいですよ。
それに今の日本の女の子も男の子も脚は長く美貌もおさおさ劣ることはありませんし、恋人が、父親が(母親も)「IT長者にならない!」という保証も無いのですから・・・って、嗚呼、ヤッパリやっかんでいるんだな?
「嗚呼」の字を注目してください。ヤッパリ私にはこのくらい遠くあほらしい世界でしたよ。
白状しますが10代の頃こんなん回し読みしてましたわぁ。もうちょっと単純で、もうちょっと刺激の薄い・・・
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顔 FACE

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横山秀夫著

「ローズ・マダー」で傷めた心を回復させるのに選んだのがこれです。
段階的回復術?です。急にロマンチックなものを持ってきても精神的違和感が増すだけ?って言うこじつけです。
これだって特別優しい物語ではありません。ご存知のように横山さんですから。
前に「心理合戦物」と私が名付けた作家のものですからね。これもその一つです。
ステーィヴン・キングの心理物とは違って、ここでは確実に正常な心の合戦が繰り広げられます。
それにこの作品の主人公はちゃんと彼女の世界を堅実に築き上げ、成長してゆきます。これは凄く嬉しいことです。主人公に共感してしかも応援して読めるのですから。
この作家に信頼が置けるのは、又は優れていると思えるのは、向上する、受け入れる、展望ある明るさがあることにです、底の方にですが。地平線上に柔らかい朝日が差し染める頃あいにも似た?

主人公の平野瑞穂さんに最初にお目に掛かったのは「陰の季節」という短編集の中の「黒い線」ででした。その時私は彼女の上役でもある七尾友子さんの方を女を認めたがらない石頭の刑事たちと出世競走の心理合戦を渡り合える女性キャラクターとして「長編の主人公になれる有望な器ではないか?」と、思ったのです。
瑞穂さんの方は似顔絵書きという特殊技能がありますから、面白いアイデアの短編小説にはなるけれど・・・という感じだったのです。「黒い線」での瑞穂さんは警察機構に押しつぶされてしまった感があって、むしろそれをばねに七尾さんが男相手に渡り合っていくというシナリオを想像したのでした。
しかし「顔」で瑞穂さんは立ち上がりました!
だから、私はキングの「ローズ・マダー」の後にもう一度これを読み始めたのです。
だって、瑞穂さんは健気に立ちあがったのですよ。
ちゃんと自分が「成りたい者」「それを夢見ていた自分」を取り戻すべく、着実な足取りで、すっかり退けられてしまったところから・・・まだ、乱れがちな足取りではあっても。
傷ついても、押しつぶされても、それでも自分の行きたい道を歩く姿を、作家はきちんと丁寧に描き上げてゆきます。
「顔」の瑞穂さんは五つの短編集の中で語り継がれる物語で一歩づつ、足取りを確かなものにしていくのです。
「目標を持っている人ほど素晴らしく、強い人は居ないんだなぁ・・・!」と、私は羨ましくも思え、実際に今そういう道を辿っている多くの若者にエールを送りたいような気分になれました。
警察ってそれにしてもなんと話の種の尽きないところなのでしょうね?最近怠慢?を突っ込まれている、不祥事多発警察には女性の活躍場所が山のように?ありそうですよ。区役所の分室なんかに行くと凄く暇そうにあくびをかみ殺しているおじさんとパッタリ目が合っちゃうことがありますが・・・有効利用?して無人の交番に置いてくれないかなぁ・・・なんて思うこともありますが・・・話が逸れましたね。
地(自分の置かれた立場)に足が付いていて、正面切っていて、意志を持っていて、若い人の小気味良さがあって。まだ?私も間に合うかな?なんて思えたりして?いやぁ、慰められました!
瑞穂さん念願の場所に戻れたのですから、今後も見守っていきたいんだけれどなぁ・・・
あっ、ちょっと訓練して、こんな私みたいな暇なおばちゃんを無人交番に漏れなく一人か二人配置するのってどうでしょう、ボランティアで?
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ローズ・マダー

題名INDEX : ラ行 223 Comments »

スティーヴン・キング著

ズーット前から本屋さんの棚に随分な比重を占めているこの作家が気になっていました。
映画が好きな人も大抵は彼の名に馴染んでいますよね。
それなのになんかボタンを掛け違ったように彼の「本」とタイミングが合わなくて・・・。先日やはりめぐり合い損なっていた浅田次郎さんの作品を読んだのを一つのきっかけにスティーヴン・キングの作品を何か読んでみようかな?と思いました。
図書館でズーット見ていたのですが、映像で先に見ちゃったものが多いのです。私は映画も本もホラーとオカルトは苦手です。
「スタンド・バイ・ミー」「ミザリー」「シャイニング」「グリーン・マイル」「ニードフルシングス」「ランゴリアーズ」「IT]・・・などは見てしまっています。「シークレット・ウィンドウ」って言うのも原作は彼だったでしょうか?
半分は後味が悪くて、見ちゃったのを後悔しましたけれど、「スタンド・バイ・ミー」と「グリーン・マイル」は割合に好きでしたから・・・迷いました。
でもよく考えてみればこのどちらもある種の感動はありましたが、本当に気持ちがいいという類の作品ではありませんでしたね。
「グリーン・マイル」のトム・ハンクス演じる看守は死ねないのですよ。死ねないなんて、そんな恐ろしい罰は無いでしょう?夜、布団の中でもし永遠に死が訪れなかったら・・・って考えて御覧なさい。永遠に眠れないのと同じくらい、いやそれ以上に苦痛で恐怖で・・・眠れなくなりますよ?
ところが怖いもの見たさっていう気持ちって、やはりあるんですね。
で、ままよ?と上の映像作品を除いていったら「ローズ・マダー」って言う作品が目に飛び込んできたのです。
全く聞いた事も無い、だから先入観も全く無い作品だったのです。だからこれを選びました。

そしてやはり半分後悔しました、「読み始めて!」
そして「読み終わって」、読んだことを半分後悔しています。
怖くて怖くて目が離せなくなっちゃったんです。だから読み終えてしまったのですけれど。
映画だったら思わず目をつぶるところで、本に喰らい付いちゃったのです。
どうなるんだろう?逃げおおせるのだろうか?と頭はズーット囁き続けて、しかもローズの、ノーマンのそれぞれの心を描写している部分に猛烈にがんじがらめに移入させられて・・・
一体どうしてこんな言葉が、的確すぎて恐ろしい言葉の数々が繰り出せるのだろうかと思いながら一語一語にぐるぐる巻きにされていく感じでした。
ノーマンの頭の中を書き記す部分は濃い印刷になって、ローズの部分とくっきり分けられているのですが、そのノーマンの部分ですっかり参ってしまいました。
男が女を罵り貶める語彙のあきれるほどの多さと、汚さとに嫌悪感、吐き気を催すほどの嫌悪感を感じていました。
ローズの「ローズ・マダー」の絵が動き始める所から「あー、これがキングの世界だ!」と思ったのですが、その辺りで「こんな作品の虜になったら駄目だよ!」という自分の声も聞こえなくなりました。
全く先が読めないのですから、先を先をとただただ読み進みたかったのです。
最近日本のホラーがハリウッドでも通用するとか、あちらに無いタイプの恐怖だとか聞くようですが、私は怖いので「リング」も「螺旋」も読みも見もしていないのですから分からないのですけれど、「なんかヤッパリこれは私のタイプじゃない!」と警告する声を横に夢中になってしまいました。
人間の本質そのものがここではホラーなのです。
そして読み終わった今一番怖いと思っているのは連鎖ということです。
ノーマンは父親の彼への「体と心への暴行」の中で育って、今度は妻への「心と体への暴行」で生きてこられました。だからその対象を失った衝撃が彼を狂気に追い込んだのでしょう?
そして14年もの間夫の「恐怖支配」の中で生きてきたローズは、それから逃げ切ってロージーになれたはずなのに、ようやく訪れた穏やかな日の中で「暴行に走りたい、誰かに報復したい」意識に支配されかけます。
だからこの物語世界には本当の安らぎは一片も、これっぱかしもありません。
あの絵の中に広がる異次元は二人の狂気・異常心理のせめぎあいのリング・戦場なのでしょうか。
どこかおどろおどろしい雰囲気があって、決してただの救いには思えませんでした。
キングの世界は不思議な終末・物語の奥行きを異世界への広がり・で見せましたが、現実世界ではこの連鎖を逃れられない人々の累々たる骸があるのではないかと想像します。
あの「種」を持たない人々はどうやって逃れたらいいのでしょう?どうやって連鎖を断ち切ります?
過去を全く切り離せるのかどうか、いや切り離して生きられるものなのか・・・私は恐怖の堂々巡りの中に浮遊して居ます。
ちなみに、題「ローズ・マダー」は「ローズ・マーダー」ではないのです。赤紫、色の名です
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クィン氏の事件簿

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アガサ・クリスティ著

私の秘蔵のとって置きの大事な1冊をご紹介します。
ムシュー・ポワロとミス・マープルのファンは多いでしょうがハーリ・クィン氏のファンはどのくらいいるのでしょう。
ポワロさんほどじゃないかもしれませんね?
物凄く魅力的な不思議な人なんです。
私は彼とサタースウェイト氏のコンビが大好きです。
先日浅田次郎さんの「天国までの100マイル」で「地上からホンワリ足が離れたような優しい」と書きましたが、これもある意味現在から「ホンワリ足が離れていて優しい。」のです。
時の壁を越えるのです。
過去の事実がハーリ・クィン氏を呼び寄せ、サタースウェイト氏が解決への道筋を辿る、そして新しい人生が生まれるのです。
重大な岐路に立ち、その人に失われた過去が覆いかぶさって、人生を失いそうになっている時、それが鍵です。
過去の真実を見失った人に・・・そう私は思って読みます。
真実はいつも優しい。
真実はいつも正しい。
真実は道を開く。
ハーリ・クィン氏は虹色に輝いて、その光で真実の姿を浮き上がらせます。
そして人生の傍観者・観察者たるサタースウェイト氏に一瞬の舞台が与えられるのです。
そして誰かが新しい未来に進み出ます。
私はその「感じ」に心が揺さぶられます。
サタースウェイト氏の気持ちにふっと寄り添えます。
私は好きな人が舞台に上がるのを舞台の袖で見守っているような気持ちです。
不思議な解決の中に漂うメルヘンとロマンが心地よい酔いを私にくれます。
「あーいいなぁ!」と1篇ごとにため息が漏れます。
そうです。これも短編集です。
「ハーリ・クィンの冒険」が12編収められています。
その最初の「登場」にこの物語の姿が全部現れています。
12の物語が12色の色を纏っているように12通りのドラマの「その時」にハーリ・クィンは現れます。
現れなくても彼を思わせる何かが天啓の様にきらめいて隠されていたものが現れるのですが、私はその一つ一つが独創的で魅力的だなぁと思います。
まるで救いのようなのです。
命や愛が危機に瀕している時に舞台が展開してもたらされる何かの始まりに、サタースウェイト氏と同じ様に心をときめかせます。
そして私はこんなドラマチックな「救い!」が嬉しくてたまりません。
その中には「死」もあります。
「翼の折れた小鳥」は哀れですけれど、サタースウェイト氏と同じに私も「救えませんでした。」という気がするのですが、物語の世界ではやはり不思議なロマンチックさに安らいでしまうのです。
そして、クィン氏が絶壁の果てや世界の果てに歩いていく時、私の心臓はどきどきしてロマンを満喫するのです。
この12編の中で「海から来た男」が特に好きです。
あの短編の中で断崖の家の「シニョーラ」が息子の事を語る場面があります。
その息子の父親を知ることなく別れたのに、「あたしはあの男のことが分かるようになりました・・・彼の子どもを通してね。あの子を通して、私は彼を愛するようになりました。今では彼を愛していますわ・・・・・・・別れてから20年以上も経ってはいるけれど。彼を愛することで私は一人前の女になりました。」というところがあるんです。
ある意味究極の愛ですよね。この愛の為にハーリ・クィンが現れるのですから、震えが来ます。
「そしてこの珠玉というには余りに趣味的に美しいきらめく物語は「ハーリクィンの小道」で閉じられます。
「あなたは人生から、そんなに少ししか学ばなかったのですか?」
別な意味で私はまた震えます。
「しかし私は・・・まだ一度もあなたの道を通ったことがない・・・」
あぁ、私も・・・。しかも私は見えもしない。
私の心は波うったまま閉じられますが、何か輝くものを抱え込んだような気分なのです。

他に「マン島の黄金」という短編集に1篇ハーリ・クィンの短編が収められています。

パール街の少年たち

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モルナール・フェレンツ著

先日ブロードウェイのミュージカルを総集した番組をBSで見ていました。
私は見ては居ないのですが「回転木馬」という有名なミュージカルがあります。
その「回転木馬」の紹介に「戯曲「リリオム」の翻案で、アメリカらしくハッピーにしたものだ。」というのがあったのです。
え、「リリオム」?それで思い出しました。
大好きで大好きで何度読んだか知れない物語をです。
小学生の頃、読むたびにネメチェク・エルネーの為に、ボカ・ヤーノシュの為に、子どもたちの失われた空き地の為に流した涙を。
で、今日書こうと思うのは彼の代表作といわれる「リリオム」ではなくて、私の大好きだった「パール街の少年たち」です。
今でも読まれているのでしょうか?
舞台はハンガリーの「ブタペスト」でした。
今は「ブダペシュト」市というのだそうです。
物語の子どもたちはこの都市のペシュト側・下町に住んでいます。
でもこの遠い国の子どもたちの日常は、その世界は、私の子供の頃の仲間や東京の下町と変わりはありませんでした。
私も彼等と同じに空き地の権利をめぐって隣の町内の子どもたちと戦争をしました。
負けてすごすご帰る日もあれば、勝って意気揚々と日暮れまで遊びほうけた日もありました。
お隣の五つ年上のお兄ちゃんにくっ付いて、二つ年下の弟を引き連れて空き地を走り回りました。
ブタペストのその空き地も、浅草の空き地も同じごく当たり前の子どもの世界でした。
「少年少女文学全集」の中に収められたこの物語で、私は全く私たちと変わらない外国の男の子たちを見つけ出したのです。
ボカはお隣のお兄ちゃんでしたし、ネメチェクの気持ちは私の気持ちでした。
隣の町内の子どもに追われて転んで泣いた私を、お兄ちゃんが引きずって帰ってくれた日の無念な気持ちは、ネメチェクが仲間の旗を奪われた日の屈辱と重なり合いました。
命を懸けてネメチェク・エルネーが守った仲間の旗と空き地はボカが思ったように、子どもらから「奪われる姿をネメチェクは見ないで済んだ!」という無理やりの慰めで終りますが、私はその空き地がNTTのビルになってしまった姿を見なければなりませんでした。
だから、物語の終わりはいつも涙で涙で、文字が見えなくなりました。
東京の子どもの遊び場であんなむき出しの地面はもう無いのでしょうか?
土管がゴロゴロし、電線の芯だった木の筒がゴロゴロしていただけの、時に雑草で姿が埋まるような空き地は?
だからこの物語を読む子はもう居ないのでしょうか?
私にとってのこの「永遠の物語」と、あの何も無い空き地にこだまする子どもの声が今も当たり前にあるといいのに・・・と思わずには居られません。
昨年ハンガリー旅行をするにあたって、ハンガリー・ブタペストといえば「パール街の少年たち」の私は図書館で探してみました。
ちゃんとありました!
図書館で時間を忘れて読みふけった私は、帽子を目深に被って帰らなければなりませんでした。
そして男の子だけではなく女の子のお母さんもこの物語に気が付いて、子供たちに勧めてくれたらいいなぁ・・・と思いました。
町内に子どもが溢れていましたし、その子供等がみんな寄り集まって遊んでいました。
小学6年生から幼稚園の子どもまで一緒でした。
あんなふうに安心して子どもを遊びに出してやれる社会はもう遠い世界なのでしょうか?

ハンガリーは日本と同じに姓・名の順です。
ですから図書館で検索する時は「モルナール」の名か題名で検索してください。
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