宮部みゆき著

図書館で何人か待ちだった本が届いたと連絡を貰って受け取りに行きました。「嘘ッ!」でした。
自分では文庫本か新書版くらいの本を予想していたのですから、私ものんきです。
本屋さんで探す前に「映画」を見て納得がいかなくて、パタパタっと図書館で検索して申し込んで、本を確かめなかったのは私がうかつでした。角川書店の上下二冊本はそれぞれ一冊の厚さが4センチ余りもあろうか?と言う代物でした。
「これじゃ持ち歩いて電車の中で読めやしない!」と言うわけで、読み終わるのにたっぷり1週間はかかろうと思ったのですが・・・かかりませんでした。
でもひどい寝不足で、今頭が働いているかどうかちょっと?かなり!疑問です。
面白かった!
多分、本当の推測ですよ・・・私はロールプレインゲームと言うヤツが苦手です。でも多分?子供たちが小学生の頃友達と廻し読みをしていたゲームの攻略本のようなものを想像してしまいました。
本当に「ゲーム」っていうのはインベーダーからロードランナー、テトリスからズーキーパーぐらいのものをいうもんですよ!私に言わせれば!
ま、それはさておき、この本を読んだのは映画がきっかけでしたから、私が最初に思ったのは「脚本」というもののことでした。
あの本を2時間ほどの映画にまとめるには大変だっただろうということは良く分かりました。それにしては実に要領よく芯を一本にして対象を絞って換骨せずに構築した手腕が「光っていたんだ!」と、思いました。
脚本家を目指す人の気持ちがなんとなく腑に落ちたような気がしました。
下手な脚本家に手がけられたら「骨抜きになって物議をかもす!」なんていうことが起こるのも「なるほど!」です。この映画の脚本家は実にシンプルに「選び取った」のだと感心しています。
さて、宮部さんのこの物語です。
映画と違うのはこれは大人の私にも色々考えさせられる「精神的なステップ」がいっぱい散りばめられてあって、私も子供に戻らない「今の自分のまま」、ハードルを越えていかなければならなかったのです。
そして今の私はこの旅を潜り抜けたワタルほども自分の50年余りの人生でしっかり考え奮闘してこなかったということに気が付いてしまいました。いやはや!
宮部みゆきさんの手の平でまたしても自由自在に操られてしまいましたね!
最後の1ページを読み終わって、今そのことに感心しまくっているところです。凄いや!
だからある意味この本は私を「東京タワー」より泣かせました。
私の中に残っている童心が素直に感応してしまって、彼の(ワタルの)最後の願いにはもう涙!でしたから。
「よくやった!よく成長したね!」と、頭を撫でてあげたいくらいですが、彼の方がもう私より大人です。
気恥ずかしくなっちゃいましたものね。
読む人は皆きっとこの本のどこかで自分の問題と向き合うことになりそうです。
そのときにワタルのような選択をするかどうか分かりませんし、違う選択肢を選ぶのもありなんですよ、きっと。それで良いんです、自分の現世ですからね。
でも、選択すべき時にきちんと自分の選択を出来る自分でいたいものだと・・・遅まきに思ったことでした。
書き抜いてしまっておきたいような言葉をいっぱい見つけました。
宮部さん真っ向から精神論というか倫理論(道徳論?)を振りかざしているのだと感じましたが、その包み紙のオブラートがまるで万華鏡のようで本当に楽しい読み物でした。
キャラクターがちゃんと映画を離れて一人歩きしています。私の中で。
映像を見た後でそれに左右されないでイメージを作るのって結構難しいものでしょう?それなのにこの物語に関しては簡単に私のワタル、キ・キーマ、カッツ、ロンメル隊長、ミーナ、ミツル、カッちゃん、ラウ導師の「オリジナル?イメージ」が出来ました。
それだけ宮部さんの筆も生き生きと登場人物?を描き出していたんですね。きっと、また読み返しちゃうわ。何度も何度も!