一色一生

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一色一生 一色一生
志村 ふくみ求龍堂 2005-01
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志村ふくみ著

友人が「本を探すアンテナに」と言って貸してくれたのですが「読み終わったら「あなたの郵便局に寄贈してくれていいわよ」なんて言うから後回しの後回しになっていたのが、この本ではなくて「読書入門―人間の器を大きくする名著―」齋藤孝著なんですが。大体本でお薦めの本を探すのもなんかなぁ・・・と思うでしょ?そこへ持ってきて「器を大きく」って今から大きくしてどうするの?頭心デブ?なんて茶々入れて。大体私の郵便局って・・・あれは牛込郵便局です。寄贈本の図書コーナーがあって借りたりあげたりしています。
そろそろ牛込まで返しに行く本があるので、急いで読み始めたらこの本に目が留まったのです。志村さんなら伝統工芸展で着物に何度もお目にかかっています。着物のイメージが浮かびました。あの方が本も書いていらっしゃるとは知りませんでした。というわけでここでお薦めの「色を奏でる」を図書館に予約する前に志村さんの本あるかな?と図書館を覗いてみて見つけました。座り込んで読み始めてみたら・・・文章の言葉の美しいこと!折り目正しいこと!ちりばめられた色彩の名前の美しく雅なこと・・・つい気が付くと1時間経っていました。そんなわけで借りてきたのがこの本です。
特に出だしの樺の木の木屑の真紅の話にはゾクリとしました。
色鮮やかな血のような色が生々しくも美しく目の前に見えるようでした。
しっかりと読み応えがあります。美しい文で清潔に書いていらっしゃるのですけれども、中身はじっくりしみこんできます。職人さんの言葉には時々「はっ」とさせられることがありますが、まさしくこれは「はっ!」で出来ているようなのです。
色というのはありがたいものです。この世がモノクロームの世界だったら・・・って思って御覧なさい。日本の湿潤な四季が生み出す様々の植物から生まれ出る色の個性とそれに名前を付けた感性が、過去の人々からの賜物で、今もそれらを大事に愛して仕事をしておられる方々がいるということに無条件に感謝します。伝統工芸展ではいつも「あぁ、これ欲しい!」と切実に思う作品に出会います。勿論手の届かぬ物ばかりですが・・・こんな素晴らしいものがいつも身の回りにあったなら、その中で育ったなら、人の感性はどこまで磨かれるでしょうか?豊かな人になるだろうなぁ・・・と、思います。でも今は本当に立派な仕事をなさる職人さんの生み出す物は一部のお金の有る趣味人の下にしかないのですけれど。でも見る機会があればその機会を大事に心を育てたいと居住まいを正して思いました。
挟み込まれていた作品の写真を一枚コピーしましたが、読み始めた頃はこの他の「個人蔵」となっている作品、着られることはあるのでしょうか?どんな方が着られるのか実際着ていらっしゃるところを見てみたいなぁと思いました。作品は仕事ならなお更、着られてナンボですもの・・・と。ところが読み進んでこのお仕事のどれだけの手数か辛苦か・・・思い知れば知るほど、また職人さんや女性の仕事の探訪の記録、特に弓浜絣の項など読んでしまうと、とてもその作品着れる人は居ないと思えてきました。心を込めて織り上げた人の愛しい人かご本人しか着る資格は無いだろうと。
それにしてもなんと美しく一生懸命生きてこられたことか・・・一生を託す何ものかに出合うということは宝物にぶち当たったみたいなものでそれは天からのさずかりものなのでしょうか。大変で辛くとも羨ましいなと・・・今からでも見つかるかなぁ・・・などと夢見ているところです。93歳まで女性の寿命は延びる可能性があると今朝の新聞で読みました。ならまだ30年もあるのです?  また志村さんはなさってきた事を丁寧にそのままに的確に美しく表現できるなんて素晴らしい方です。手仕事の作品に詩心が溢れているわけもわかったような気がしました。

ブラックペアン1988

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ブラックペアン1988 ブラックペアン1988
海堂 尊講談社 2007-09-21
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海堂尊著

凄い勢いで書き続けていらっしゃるようですね。
順番めちゃめちゃで読んでいるのですけれど、この東城大学医学部から桜宮病院に至るシリーズの過去に遡ったようです。
なのに?この作品が今まで読んだ中では一番昔を書いているのに文章が円熟しているような気がします。それはただこの作品が一番おとなしく描かれているからというだけの事かも知れず・・・
語り手となった主人公の世良君が未熟なのに合わせてはじけ過ぎなかっただけなのかも知れず・・・
でも、まぁ、文章的には一番読みやすいと言うか、エネルギーを要求されないと言うか、ハイテンションに置き去りにされずに済んだというか・・・内容的にも一番落ち着いて纏まったんではないでしょうか。それだけにあえて言えば今までのこの作家大好き読者たちには色彩が淡く感じられたかもしれませんね。でも今までで一番医者が書いたんだということが納得できました。勿論門外漢の私には今一使われる手術の用具の意味合いが理解できているとは思えないのですが、この作家の一番の持ち味「主張したい事を極彩色で劇画タッチで華々しく語る」という点は今回も諒解できました。
高階学長の若き日、速水君や田口君、桜宮病院長の名前など懐かしい人々?の若き日にも遭遇できると言う特典つきです。
娯楽と言う点では今回も及第点ですし、主張が理解しやすいと言う点でも及第点です。しかし本当に情緒が無いなぁ・・・と言うより実に見事に?感情を簡単な単語一つでクリアしてしまう辺り・・・これが現代なのかなぁ。しかし医者というのはやっぱり変人ぞろいだ。その個性を生かして存分に育っていってください・・・と祈りたくなります。ドクター・コトーにめぐり合うチャンスはまず無いし、救急車で病院に運び込まれたら、こんな先生・看護婦たちにめぐり合うのかもしれないものね。まぁ、とりあえず東城大学には田口先生が居るし、優秀な外科医も育っていく可能性はとても?高そうだし!いつも庶民は期待することしか出来ないのだから、せめてこの小説を楽しみましょう。手厚い医療行政をひたすらお願いするだけの庶民のために主張をどんどん繰り広げてくださいませ。
医療の本質は患者を生還させ、良質な術後生活を保障してくれることです。本当にお願いしますよ!と、今回もお医者さん方に頭を下げて読了と致します。
「夢見る黄金地球儀」が後一月足らずで届くと思いますし、「医学のたまご」が百人待ち「ジーン・ワルツ」が110人待ちといったところです。やっぱり読むの楽しい作家です。
 

巷談 本牧亭

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巷談本牧亭 (1964年) 巷談本牧亭 (1964年)
安藤 鶴夫桃源社 1964
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安藤鶴夫著

なんで今頃?と、思う本だ。子供の頃?既に父の本棚に何冊かの安鶴さんの本は並んでいた。あの頃父は落語が好きで鈴本に通っていたのを横目に?一寸羨ましく見送っていたっけ。だからか安鶴さんの本も愛読していたのだろう。でも結構父に隠れて父の本棚の本を背伸びして読んでいた私も安鶴さんの本に手を出そうとは思わなかった・・・のだ。それが今頃読んだのは、父がこっそり我が家に運んできたからである。父と弟の二世帯住宅の2階には贅沢なことに弟の書斎の隣に図書室なるものがある。同居した時父の沢山の蔵書もそこに収まった。ところがあの家は皆読書家。本がどんどん増えていき床が落ちかねない?というわけで弟夫婦は黄色くなった古い本の大処分に踏み切った。・・・となると当然まずは父の本だろう?大事だったはずの藤村全集・谷崎源氏始め明治大正期の文豪の作品集は一括りに玄関先に。その中から美術全集と安鶴さんをかろうじて父は救い出したらしい。周五郎さんの黄色くなった文庫は私が駆けつけて拾い上げた。そんなわけで昭和39年から我が家にあった本を今頃読んだのである。で、なんで今まで読まなかったのだろう!と、思いつつ私は次の「寄席紳士録」に取り掛かるところである。
凄い!のだ。素晴らしいのだ。面白いのだ。ここに登場してくる芸人さんとその芸人さんを愛する人々の日常が本当に(むくむく心の中で蠢くほどに)活写されていて生き生きしていて個性的で魅力的で泣きたいほど可愛いのだ。
この登場人物たちはもう既に殆ど全部の方がこの世にはいらっしゃらないのかもしれないが、確かに居たのだ!という実感がものの見事に!確かなのだ。皆好きだ、皆見事だ!そういいたいほど。
特に私は桃川燕雄さんが大好きだ。川崎福松さんとの生活が見事だ!そうとしか言えない。こういうお二人を読んでいると、なんと今の私たちの騒々しく饒舌で中身の無いことか!と、我ながら感嘆してしまうほどである。服部伸さんとこのお二人が故障した信号の前で立っている姿を思うと・・・この本の終わりの佇まいがそのままある一つの美しい時代の終わりの佇まいに思われてくる。
それに本牧亭のおひでさんは私の高校の先輩だったのだ。クラス会の場面のなんと心にしみたことか!だからこの本の中の地名は全部私の縄張りだったのだ・・・なんと遠くなったことか!いや、遠くしたのは私自身。私の怠惰だったと思われて、妙に忸怩としたものも有るのだけれど、それを押し流す勢いで何故か私の覚えているはずの無いあの頃の芸人さんたちが懐かしく迫ってくるのである。
「ああ、桃川燕雄という人が居たんだ!」
田代光さんの挿絵がまたなんとも言えず味わい深いのだ。

ソロモンの犬

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ソロモンの犬 ソロモンの犬
道尾 秀介文藝春秋 2007-08
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道尾秀介著

「シャドウ」「片眼の猿」に次いで三作目。で、この作品が今のところ一番好きかも・・・なんて思いながら読み始めた。この作者の文章は前にも書いたけれど、妙に?読みやすい。素直なテイストって言っていいかなぁ。
それにこの作品の底に流れる「不審」感が魅力的。
何だろう、なんだろうって、それは、その感じは何だろう?って思いながら引きずられていく。
会話で作る空気に不審が匂う。
主人公のあいまいな性格がこの作品のあいまいさを増幅して、はやく隠されているものを分かりたい一心で先へ先へ読み進む。
「犯人はこの4人の中にいる?」「本当に?」
「じゃぁ、犯人が割れる?どこで?」
そうしてこの作品に緊張感が生まれる。意外と?この作者は技巧派じゃない?ごく日常的な学生生活が続いて・・・分かりやすいはずの会話がそうは見せない。
でも果たしてこの会話は分かりやすい会話なんだろうか?字面だけ見ればね、でもあいまいな不審が掻きたてられるでしょ。
で、流れ込むのが最後のあれ。
テーマとか主張とかはなくても雰囲気に迷わせて読ませる、これも面白い・・・って思っていたのに、なんてことの無い結末に一寸肩透かし、って、あれ最初のフェイント許していいのかな?ごく穏当な結末・・・これなら確かに確かだけど・・・これで良いのか?たわいなさ過ぎな感も。
マン・マミーヤ!が出色だから許してもいい、かも。
あの動物学・生態学ホントでしょうね?それなら許してもいい、かも。
だけど私にはまだ「シャドウ」かな。
オービーの動きを読んでいて我が家の愛犬を思い出したので一枚挿入

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ジェネラル・ルージュの凱旋

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ジェネラル・ルージュの凱旋 ジェネラル・ルージュの凱旋
海堂 尊宝島社 2007-04-07
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海堂尊著

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「 このミステリーがすごい!」で初めて眼に付いた作家さんです。図書館で手に入る順に読んでいます。

「あれ、間違えて予約したかな?これ読んだ奴だった?」
と、一瞬思いました。
「いや、だけど進行方向が少し違うような?読んでないでしょ?イヤ読んだよ。やっぱり読んでない。」
何しろ順番通りに読んでいない私です。「えー、今までこの作家の本で読んだのは・・・」からおさらいです。「螺鈿迷宮」「ナイチンゲールの沈黙」「チーム・バチスタ」・・・だけだよ、こりゃナイチンゲールだよ、どう考えても・・・と、自問自答しながら読み進めて、なんだ事件?はここ東城大学付属病院で同時進行しているのか・・・にたどり着きました。
小夜さんバージョンと翔子さんバージョン。または小児科バージョンと救急救命室バージョン。
そしてようやくアッチコッチで軽くアッチの状況が臭わされているのに気が付きました。「あ、はー、むふっ!」
「作品を繰り出す速さ!」と、この作家を畏敬の念で見始めていましたが・・・ヒョットするとこのシリーズどこまで引っぱるのか分かりませんが、ずーっともう最終案まで出来上がっているのでしょう。
凄い頭?だ!
前に劇画だ!と感心しましたが、今回も太いテーマはちゃんと理解させられた上で?面白くおかしく楽しく頭を突っ込んで一気読み!
ホント、男だなぁ!速水先生。かっこよすぎ!
こんな手腕と度胸と決意とを胸にたくし込んだお医者様、どこの自治体でも咽喉から手が出るほど欲しいでしょ?ところがどうやらそうじゃないようですね?何処かでこんな速水先生が逼塞している?逼塞していても居てくれればまだ日本医療は見込みがある?死に絶えている気配が怖い。
鬼より怖い赤字!公が付くところの一番怖い赤字!もっともお役人は赤字を埋めるのは税金と思っているから余り赤字に切実ではないんですよね・・・って結果が今の日本?
でも公僕さんだったらお願い、何が最優先事項で何に税金使うか真剣に考えてね?と、思うけれど、これが、専門家がいつも正しいとならないから難しいんだよね。立場立場を離れずに物を言っていたら迷走するだけ。
救急ヘリねぇ・・・こんなに毎日救急車が走っているのを見て、平気で道を空けない車が居るのも見て・・・渋滞で止まっているのも見てて・・・ここを乗り切れるのはヘリだけだけど・・・果たしてここからそのすぐ先の聖ロカ?まで救急ヘリで運ぼうという決断はどこで誰がするのかなぁ?あぁ、そうかあれは病院間移送に使うのか?いや大規模事故の時も使えるだろう?あの場合?この場合?・・・???
するってーと、それを判断できる人を育てなくちゃ、で、運ばれてきた人を有無を言わず受け入れられる救急病院を充実させなくちゃ。
で、そのためには救急医をもっと沢山育てて、配備しなくちゃ・・・と、最優先事項がどんどんわからなくなってきて・・・「専門家さぁん、しっかり考えてぇ!」と投げ出してしまったところです。公にお金が無くなると平均余命がどんどん短くなりますよぉ~高齢者の皆さぁん。でもマァ、これ以上伸ばさなくても良いような?
さてどこから手を付けてどこへ行けば安心救命社会?が出来るのか?
そういう意味でも?こういう面白い作品で一寸ばかし能天気であなた任せで生きている私をも考え込ませてくれるこのお医者さんは、凄い!

おまけのこ

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おまけのこ おまけのこ
畠中 恵

新潮社 2005-08-19
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畠中恵著

「しゃばけ」シリーズの本らしいものを図書館で予約しておきました。そして「しゃばけ」の次に読めたのがこの本です。
それで遅ればせながら「しゃばけ」シリーズが何冊でているのか調べてみました。01年「しゃばけ」03年「ぬしさまへ」04年「ねこのばば」05年「おまけのこ」06年「うそうそ」07年「ちんぷんかん」6冊ですね。それに外伝?「みぃつけた」と「つくもがみ貸します」つごう8冊楽しめるようです。
まだ2冊終っただけですから嬉しいですね。
先日シャンソンを一緒に聞きに行った友人が「告白」という歌を聞いて「あぁ、あんなに『愛している』って言われて見たい・・・」とため息をついていましたが、私は「あいしてる」と「ジュ・テーム」を何度言うか数えておけば良かったと思っていたのです。
「大事大事お前が大事!生きていてくれさえすれば嬉しい・・・」と親に言われ続ける若旦那。しょっちゅう仁吉と佐助の兄やたちにおでこに手を当てられている若旦那。まさに手当て!女にとっての心の手当ては「愛している」といわれ続けることかな?と「大事なら大事と言ってもらえることの幸せ」を思いました。
「言わなくても分かっている」ことは実際の人間関係の中では本当に少ないんですよ。その科白は面倒がりの男のおためごかしです。
実はなくとも口だけは使う男と実は有っても口が伴わない男が居たら女は口に騙される事を選ぶかもしれませんものね。
なんて事をつらつら思っていました。
この物語を読む幸せ感ってそんなところにもあるのかも・・・って。
思いっきり甘やかされることの幸せ!勿論若旦那にとっては「とんでもない!」でしょうが、他人事?で読む方はウラヤマシさで妙にいっぱいになって、病弱で儘ならない若旦那にうんと同情できて、妙な加減にずれて心配性な兄やたちに満足し、鳴家たちの様子にホッコリする!今の世の中への口に甘い薬みたいだ!

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真綿で包まれ、その上を絹で包まれ、さらにその上を黄金で包まれ・・・こらっ!って?一太郎君はちゃんと黄金でもくるまれていますもん!こんな最高のシチュエーション畠中さんはどうして思いついたんでしょう。
「しゃばけ」ではまじめに「ものの大事」「勿体無い」を考え込んだ私が、この作品ではただただ?のんびりさせていただきました。
一つ一つの章には切なさがあるのに、廻船問屋兼薬種問屋・長崎屋さんには大きな心配の周りに柔らかななんともいえない甘い香りの風が吹いている。その風にまた吹かれたくなる。次は何が来るかな。

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