十日えびす

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十日えびす (祥伝社文庫) 十日えびす (祥伝社文庫)
宇江佐 真理祥伝社 2010-04-14
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宇江佐真理著
描かれた世界も、そこに息づく人も…全く問題なく! …完璧に個々の描かれた人々とその生きざまは紛れもなく江戸の庶民だけれども…ちゃんと現在ここに生きている人々そのものでもあって…なかなかなかなかと頷いて読み終わったんだけれど…でもこの苛立ちはなんなんだろう。
あまりに人の好い人に対する…嫉妬?
なんでこんなにお馬鹿でやさしいの?…でも結局幸せに生きていく人にはこういう資質が不可欠なんだろうなぁ…という納得感もちゃんとあるんだけれど。
誠実なんだね。 この主人公は。 自分の思いにも、託された子供たちにも。 対照的にお熊を配して…その手際が?あまりによすぎるために、私はいらいらが募るばかり。
じりじりじりじり…いらいらに炙られているような按配で、どうにも肝が煮えた。
でもちゃんとわかってはいたのですよ。 だから私はお八重さんのように近所中のだれからも好かれ邪魔にされない…そしていつの間にか…本人は何かにあたるたびに自分の方が引っ越そうかなんて考える弱腰に見えるのに…ちゃんと自分の場所を確立していって、愛情もちゃんと勝ち得てという風になれないのだってことは。
そう、踏みとどまる線をできるだけ遠くにおいてぎりぎり踏みとどまっている人の繊細な勇気ですかね?ため息をついて認めざるを得ないのは?
強くなくてもいい、弱くではあっても、日常から逃げないで日常の何事にも向き合わなくちゃってことですか? 私がお八重さんから学ぶことは。それでもやっぱり…いらいらするんですよね。

時平の桜、菅公の梅

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時平の桜、菅公の梅 時平の桜、菅公の梅
奥山 景布子中央公論新社 2011-02-24
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 奥山景布子著

 

この作家の2冊目の本になる。  私の興味のある時代を舞台にした小説をこれからも書いてくれそうな気がして、期待している。  意外な気がしたのは…この主題だったら、たいていの人は菅公、菅原道真の立場からの話が当たり前な気がするから…。

この時代、権力の頂点にあった藤原氏の側からの視点で描いた作品がこんなに面白く読めたのは、この少壮の政に命を懸けて志そうとする時平という人物の造形にかかっているのだろう。  道真の晩年の大宰府左遷が頭ごなしの権力から出た沙汰ではなく…そこに至った道程の遙かだったことが面白く読めた。  またその主題のひとつに漢詩と和歌の違いという論点?があったことがこの作品に深みをもたらしたのだろう。  この作品の菅公は私にはあまり親しみたい人物には生り得なかったが、紀貫之は面白い魅力的な人物になっていた。ひょっとするとなかなか煮え切らないように見える時平その人よりも。 しかしそうは言っても、年若い主上が物の怪におびえるところを機転と胆力で乗り切るところなどはなかなか読みごたえがあった。    王朝風をイメージするためか?巻の冒頭ごとに時が飛んでその行間で時の流れを感じてもらう…という意図があるのかもしれないが…それが同時に時平の人間性をあいまいなものにしているようで…時にいらいらしたが…それこそが作家の書きたかった時平という人物であり、菅公の人間性のとらえどころのなさに通じるようでもあった。時平は政の最後の責任を負っていくと言っていたが負っていくには結局菅公という人をとらえきれなかったのかもなぁ…。 心の中で大きくしてしまった幻と格闘していたのかもなぁ…という切なさが心に残った。

 

光媒の花

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光媒の花 光媒の花
道尾 秀介集英社 2010-03-26
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道尾秀介著

 短編6話がぐるっと回っていく往還の?物語集。   全部読み終わってみるとなんだかちゃんと長い物語を読んだなぁという満足感がある。

第1話に出てきた公園の男の子が、2話のホームレス殺しをしたと思う小さなお兄ちゃんで、実際にホームレスを殺したのは世界を閉じ込めて生きるホームレスの男で、彼が3話の主人公で初恋のサチを助けられなかった少年だ…という風に物語は連なっていく。そのサチが第4話の主人公で小さな女の子がトラックにひかれることから救う。 そのトラックを運転していて危うく事故をまのがれた青年が第5話の主人公で姉の病気を心配している。その姉が最後の第6話の主人公の先生で受け持ちの少女と心を通わせることができたが、そのきっかけになったのは第1話の父の愛人を殺してひっそりと生きる印章屋だった…と続く。連作になっているが一つの街の人々の隠された人生の1ページを描いて、人のつながり人生の重なりそんなものが見えてくるようだった。蝶道というものがあると本の中にあった。本当にあるのだろうか? この作品のすべてに共通するトーンというか、底には悲しみが流れている(前半3作には悲惨さも怖さも)が、しかし蝶がその物語の中を鱗粉をまき散らしつつ揺れ飛んでいく光景が…時には少女のブローチだったりもしながら…イメージを連ねていく。それが、鱗粉がまるで白い靄のような明るさを物語全体に漂わせることになっているようだ。(しかし鱗粉は気持ちが悪い!)

この作家は表現がどんどん上手になっていく…と感嘆して読んでいた。すべての作品を読もうとは思っていないが(だって、ホラーがあるようなので)、私が選び取った作品はそれぞれに読後に見事な満足感や感動があった。それぞれの人の真情を彫り上げるような叙景や象徴の繊細さにうなりつつ読んでしまった。

でも一番好きなのは、まだ、「カラスの親指」かな。

カラスの親指 by rule of CROW’s thumb カラスの親指 by rule of CROW’s thumb
道尾 秀介講談社 2008-07-23
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ゆんでめて

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ゆんでめて ゆんでめて
畠中 恵新潮社 2010-07
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畠中恵著

 

この作家特有の?江戸言葉の表題です。 今は失われた?こういう言葉は楽しくもありますけれど「あまた」みたいにあまりに煩雑に思われるとうっとうしく思うこともあります。   表題にこのひらがなだと…何のこと?と思う人も多いでしょうが、畠中さんの作品を愛する人には…わかるのも楽しみでしょう。ゆんで、めてはまだ死語じゃないでしょうけど。       さて、図書館頼りの私、なかなか発表順に読んでいるか自信がないので、読み始めてしばし「あら、やっちゃった。なんか一作抜けたわね?」と、思いました。だから妙に不安で、わかっているんだかわかっていないんだか…でもそれにしてはなんかまじないにかかっているように道がある感じで…だんだん…そうか!そういう趣向か?意表を突かれました。          映画にもこんなのが結構ありましたね。 生きるか死ぬか?  あっちかこっちか? あの時あっちの道を選んでいたら…?たいていは選んだ道がなじむ道であるっていう落ちなんですが。   畠中さんのこの作品はずーっとそこに屏風のぞきさんの喪失感を引きずっていたので…奥行きができたようです。ちょっとマンネリか?と思わないでもなかったので、起死回生の一作かとも思えました。 

陰陽屋へようこそ

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陰陽屋へようこそ 陰陽屋へようこそ
天野 頌子ポプラ社 2007-09
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天野頌子著

 

外しました! っても、この作品が面白くなかったからではありません。 夢枕獏さんの陰陽師シリーズがありますが…私はそれ系の作品を探していたのではなくて夢枕さんの短編の時代物でなにか面白い作品が他にないかなぁ…と、探していたんです。 そこに目に入ってきたのがこれ。 なんか短編集っぽいし…朗読の素材にならないかなぁ…と、借りてきたのですが…。         これはほんのライトノベル?ターゲットは中学生でしょうか? そう主人公は往時の狐の誰かの落とし子、捨て狐の妖狐もどき君でした。 と、頼りになるんだかならないんだか、ただやたらといい男の陰陽師君。  周りののんきな?外野がいいから、つい楽しく読んでしまった。 こんな中学校だったら、いじめはないわね。 お狐君をみんな認めているんじゃないの。かははと笑ってしまった。 本人だけが隠してるつもりで、周りは面倒だから?そういうことにしているぜ…っていう脱力系のこの作品は夢枕さんの向こうを張って?思いっきりいいテイストじゃないの…? さて、続編んがあるんですか?…読むかどうかは思いっきりわかりませんけど一応思ってみました。 

 

 

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