ひかりの剣

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ひかりの剣 ひかりの剣
海堂 尊文藝春秋 2008-08-07
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 海堂尊著

いつもながら・・・面白かった!この一言で片付けてしまいたいと思うほど間違いなく面白いのです。この作家の作品は。一気に読んでしまいますが・・・特にこの本の場合、東城大学医学部シリーズとしては異色です。医学の、医者の問題を提起していないわけじゃないのですけど・・・だって今、私は「ヘー、そうなの?この頃厚生省はそんな事を考えていたの?ヒョットすると優秀な産科医が減っているのも、小児科医が足りないのも、家の近所には皮膚科医院と歯科医院ばかりが開業しているのも、遠因はそんなところに?」なんて考えたりしているのですから。「国を導く、国策ってやつ?失敗したのは誰が責任取るんだ?」「当然!自分たちよ。」なんですけれど・・・見るべきところを見ていなかった自分たちですね、反省しなくちゃ。子供たちよ、将来を考えて政治家を責任持って選びなさい!
まぁ、それはそれ、措いておいて、この作家、時代ものも書けそうな豪腕!剣豪小説?ぴったりかも。白鳥さんの袴姿?見てみたい。一刀両断なんて、彼のためにある言葉?
青春スポ根小説も書けそうじゃない?もっとも変にしらける恐れはあれども。高階先生みたいな鵺のなめくじみたいな偉人が抜け駆けるオソレもあれど。でもそれも楽しめそうじゃないの。
「ひかりの剣」の「ひかり」って朝比奈さんが出てきた時にはここか?と身構えたのですけれど・・・なんか違ったのです?
この物語の場合、朝比奈さんを出す意味って・・・にぎわかしの彩り?
おじいちゃんを出したいための布石に過ぎないのよねぇ・・・それに出てきたときの期待感がポシャル感じ・・・これって白鳥さんの助手のパターンみたいなもの。そうかこの作家の弱点は女性を描くことなんだ?そうか、課題を見つけてあげたぞ!みたいな乗りのいい気分、この元気感がこの作家の与えてくれる最良のものかも。どんな課題が医療現場に山積みされていようとも、絶対何とかなっていくさ、厚生省に白鳥さん居りせば?この本を読む大勢の読者が居りせば?
素直に頭にしみこむ感じ「厚労省」について考えよう。「医療制度」について考えよう。「病院と医者」について考えよう。ついでに「後期高齢者世界の医療」についても考えよう。

恋いちもんめ

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恋いちもんめ (幻冬舎文庫) 恋いちもんめ (幻冬舎文庫)
宇江佐 真理幻冬舎 2008-06
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宇江佐真理著

「この頃時代物を書く女性作家が増えていないか?」本屋で見つけたからためしに買って読んでみた。」と、父が電車の中で読み終えたからと置いていった。・・・って、この頃?良く見てみると彼女は私と多分同学年。決して新鋭ではないと思われますが。そういえば新聞の広告欄でこの作家の名前を見るようになってからでも大分経つ様な?。でも縁が無くて?多分まだ出会ったことが無かったのだろう。こういうのもひとつの出会い!
そうだなぁ・・・ごく普通にありそうな家庭、ありそうな職場?環境、ありそうな恋愛・友人模様、そうだなぁ・・・「やっつくれ」とか「滅法かいもなく」とか江戸言葉らしいのが多量に使われていなければ?時代ものじゃなく時代に囚われずに読める!っていうか、人間は変わらないものだなぁ・・・でも、舞台をお江戸にした分柔らかくって潤いがあって情緒を楽しめて、得した感じかな?と、読み始めた。
ところが不思議だなぁ、出てくる女性たちは普通に泣いたり怒ったり感情の動きも、行動もごく当たり前の娘たちなのに、今すぐそこで恋をしているかもしれない現代の女性たちと変わらないような事をしているのに、読んでいるうちに‘より’可愛くいじらしく思えてきて、これはやっぱり意地っ張りでも、強情でも、意地悪でも、それでも滅び去った大和撫子たちのお話なのかもなぁ・・・なんて最後には思ってしまった。それだけ現代って恋や愛が難しい社会になっているってことかなぁ。
源蔵とか佐平次とかおじさんたちが意外に生き生きしていて物語が膨らんで現実的に思えたのは、こういう人物の書き方が丁寧だったからかな。その分火事以後の栄蔵の行動が妙に作られすぎで・・・ちょっとしらけたかも。人情話の作りすぎ、せっかく自然な成り行きで来ていたのに惜しいような気持ち。それとかなり後口のいい物語に仕上がったのに、おきんさんを死なさないでもらいたかったなぁ・・・どう考えたってその必要ないのだもの。

つむじ風食堂の夜

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つむじ風食堂の夜 (ちくま文庫) つむじ風食堂の夜 (ちくま文庫)
吉田 篤弘筑摩書房 2005-11
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吉田篤弘著

例えば寒くなってきた早朝、というか夜中うんと遅くにふと忘れていたことに気が付いてベランダの花に水をやりに出る。月が凍っている。ため息をつくと小さな魂がふわっと白く憧れ?いずる。その大きさに見合った、というか、その枠にすっぽりと収まったような本だった。丁度私のサイズ!めぐり合ったのは当然のような、奇跡のような。でも見つかった!という感じ。同類だ。
この作家の本はまだ読んだことが無かった。ただ「極上掌篇小説」という30人もの作家の本当に掌篇作品を30も並べた短編集でこの作家の作品を見たことがある。・・・そしてその作品は・・・記憶に残っていない。少なくともその作品を読んでこの作家の小説を図書館で探そうとはしなかったのだ。
なのに、この作品は私のつぼに填まった。ぴたりと!どの部分を取り出してもOK!こんなことはめったに無い。
いちいちこだわって感想を言わずにすむありがたさ。そう、そのまま読んで味わえばいいのだもの。つむじ風食堂の灯を。月舟町の人々を、その店に集ってなんとも嬉しい会話をする人たちを、夜の街に明りを灯す果物を。雨降りの先生の過去も今も、ひょっとしたら未来も。
ところで困ったのはこの作家のほかの作品、読んでみるべきでしょうか?この作品だけをお友達と呼んで大切に心の隣にそっと置きますか?読めば・・・芋蔓式にお友達がふえるでしょうか?

トリップ

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トリップ (光文社文庫)
トリップ (光文社文庫) 角田 光代おすすめ平均
stars普通(?)の人たち
stars現実とファンタジーの境界線を楽しみたい。
starsここではない自分の居場所

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 角田光代著

東京近郊の町で繰り広げられる日常。彼女を彼女が見て、その彼女を彼が目撃し、その彼を・・・と言う風に短編で次々に一人一人の人生の断片が・・・と言うか・・・断章を10、私が読んだわけですが・・・この不思議な日常。
日常に過ぎないのだけれど・・・この浮遊感?・・・いや、なんだろうこの感じ・・・と、捕まえ得ないじれったいような・・・靴下数枚重ねた上から足の裏を掻くような遠さ?いや本当に遠い!
いやいやいや・・・この人たち・・・どこへ行くのさ?行きつくことないんだろうなぁ・・・の「・・・」部分がすべて?みたいな?の「みたいな?」の「?」部分?に形を当てはめようとしてみたらこんな人々になった・・・みたいな。で、これが凄く今っぽいから困っちゃう。
私ってこういう世代から遊離しているの?それともアッチが浮遊しているの?さぁ、そこのところの不安がじりじり背中に這い上がってくる。
こんなごくそこにいるような人たちの内部がこんなで・・・袖摺り合わせて行き合って、しかもお互いに「生きあって」いるなんて変!
彼らが自分の周りを見て描写する自分の世界の断片の無機質さがもう「私たち」では無い事をじりじり場所取りして迫ってくる主張になっている。
しかしそれでも彼らは彼らを見ている。見ていて何か思うことによってその人の生を何とか形作っている。非常に消極的な否定によって?いや、やっぱり理解は出来ないかも・・・心の底をさらいつくして見れば何処かに洗いざらしたカスになってこびりついているかもしれない?イヤだな!
「ここにいる理由を見つけられないらしい。」「許可を得ていないと感じる」そうか?理由が無ければいられないのか、許可が無ければいられないのか・・・それってそもそも得ている人っているんだろうか?
「秋のひまわり」のテンちゃん、「あなたは、あなただけは居場所を確保してね。」と祈ってしまった。
こんな風に見えちゃってそれをこんな風に豊かな文章で書きこめるって・・・どんな神経なんだろうなんて・・・変にワクワクしてしまう。
前に1作読んでいるのだけれど、この作家好きか嫌いか決められなかったので、短編を選んでみたのだけれど・・・どこか目を離せない、でもどちらかというと目を離していたい・・・
目を宙に浮かして、カラッと軽い声で、裏声の手前の高さで、抑揚を捨てて・・・読んでみる?
心の襞って襞だからいいんだよね。伸ばしてアイロン当てちゃったら目も当てられない。

こころげそう 男女九人お江戸恋ものがたり

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こころげそう 男女九人 お江戸恋ものがたり こころげそう 男女九人 お江戸恋ものがたり
畠中 恵光文社 2008-01-22
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畠中恵著
 

「心化粧(こころげそう)」
口には言わないが、内心恋こがれること
江戸語辞典(東京堂出版)より

「恋は仕勝(しがち)」―恋愛は自分勝手にするものである。恋愛は周囲の者に遠慮せず、思い通りに進むものだ、の意

「乞目」―出て欲しいと望んだ采の目

「八卦置き」-八卦見。易者。多く大道で商う

「力味」―意地っ張り、強がりのこと

「こわる」―強がる、強情を張る
「幼なじみ」

と、各章は「幼なじみ」を除いて江戸語辞典から説明がされている。
この作者は今まで読んだ作品から感じていたのですが「数多(あまた)」という言葉がお好きなようです。多出します。気になります。引っかかっていました。
江戸の言葉らしい言葉を多用することで雰囲気を一層盛り上げようとする意図は分かりますけれど、やりすぎじゃない?こんなに気になるんだから・・・とまぁ。
そのセンスがこの作品の章題に結実?したようです。
今まで読んだ「しゃばけ」シリーズと底を流れるトーンは同じです。
ユックリとおだやかに、コッチは成り行きに気が付いているのに・・・お願いだからもうちょっとテキパキ、シャキシャキ進めてもらえないでしょうか?って思う部分もあります。
でもその長閑さを、お江戸風をファンは愛して選び取るのでしょう。
本当の江戸っ子ってきっとこうではなかっただろうけれど・・・もっとちゃきちゃきしてたかも?でもお江戸言葉に彩られて今よりスピードの遅い、表現のあいまいなゆったりとした情があって・・・「昔はよかった!」と、こうだったと思いたいファンの一人なんだな・・・私も。
現代に出てくる幽霊は絶対こんなに穏やかじゃないもの。トラウマとストレスと狂気に彩られて。でも200年昔は・・・って思いたいファン!恋や愛に敏感な女の子、鈍感な男の子、訳知りでイナセなお兄ちゃん、甘やかされたかわいい世間知らずなお嬢ちゃん、やり手で世話好きのお姉ちゃん・・・皆生き易かった時代があってもねぇ。幽霊だってまだ風情があった!よ。
そういう人々の心が行き違ったとしてもねぇ・・・殺人だって、まだ柔らかかった時代が・・・って、それは困るよ。

話は変わりますがTVの若旦那、ちょっと可愛いじゃありませんか。

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