青い鳥

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青い鳥 青い鳥
重松 清新潮社 2007-07
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  重松清著
この作家の2冊目です。
で、簡単に、「ブランケット・キャッツ」より好きでーす!
「物凄くよかったでっす!」と、小学生みたいに言っちゃいます。
このところいい本に「当たり!」通しです。
「まほろ駅前多田便利軒」並によかったです。
「他に切り口は無いの?」って自分に突っ込みたいくらいですが・・・
「カシオペアの丘で」というのを今待っているところなのですが、これは私には初のこの作家の長編です。この本が余りに感動的だったので、ワクワクして首を長くしているところなのです。
さて、この青い鳥は8話で構成されているのですが、柱は村内先生という吃音の、だけど生徒に寄り添うことをのみを考えている先生です。
小学校から高校まで、いや現在ではまだ子供としか思えない大学生までかな?各クラスに是非とも一人配置していただきたい先生です。そうできれば・・・!
問題を抱えている生徒の所にまるで降ってわいたように!誂えたように?この先生が現れます。
そしてその生徒とこの先生の織り成す数日のふれあいが奇跡のような感動をもたらすのです。勿論出来すぎです。でもその生徒のために本当にこうあって欲しいなという祈りが通じたような嬉しさを感じつつ読み進みました。
先生の伝えることは「そばにいるよ」ということ!
上手くしゃべれないから本当に「大切なことしか言わない!」こと!
色々な意味で糸が切れ掛かっている子をそれぞれの人生にしっかり結びつけて先生は去っていきます。
本当に危機に現れて乗り越えられる見込みが付くと「間に合った!」と安堵して先生は去っていきます。
私自身はここまでの危機に陥ったことが無く学校を卒業してしまったので、先生にもめぐり合わなかったのだなぁ・・・と、少々がっかりです。
でもそこまで行かなくても、問題を抱えていなくとも、この先生が8話の間でそれぞれの生徒に伝えたことを読むだけでも何か得るところがあるのではないか?いつか何かの時の一助になるのではないか?とありがたく思えてしまった本です。
先生が真っ赤になってつっかえつっかえ言う言葉はスルスルと流れてくる言葉より耳にしっかり引っかかります。伝えようとする人の必死さが伝わらなければ、自分にかまけきって溺れかけている人には聞こえっこありません。
どんないい言葉を言われても、耳に残らなくてはお終いですものね。
耳に痛かったり、刺さったりした言葉は忘れられないものです。それと同じことかもしれませんね。
でも先生が言うことは大切なことだけなんです。大切なことってそんなに多くはないんですね。
これはありきたりの筋書きかもと思いながらも「カッコウの卵」では先生に後光が射しました。ありがたいと涙で先生が去っていくバスを見送りました。
こういう先生を養成する教育課程って出来ないものですかねぇ・・・絶対必要。

ブランケット・キャッツ

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ブランケット・キャッツ ブランケット・キャッツ
重松 清朝日新聞社 2008-02-07
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重松清著

お名前は本屋さんでよく見ていました。でも最近「極上掌篇小説」でこの方の短編読まなかったら、多分まだ取り付いていなかったかもしれません。
出版関係の会社に勤めている甥が「ほのぼの系が好きならお薦め。」と、言っていましたっけ。全編を通じて感じられる柔らかさがこの方の持ち味かしら?
大体私は猫より犬派です。
赤ん坊の時の猫の可愛さは確かに・・・認めるのにやぶさかではありません。以前ダンボールにもう抱きしめたくなるような猫の子が6匹、「どなたか飼ってください!」と描かれて道端に置いてありました。通る人皆思わず「可愛い!」と、抱き上げるのですが・・・。
「猫も必死だから、産まれたときは本当に最高に可愛くなるのよ。」と通りかかったオバサンが言っていました。
私は猫を飼ったことが無いのですから猫の眼差しについて言える立場ではありません、が、犬のことなら・・・犬の目は最高です!と自信を持って言えます。動物というものを家の中で飼うということに常に「?」を持っていなかったら、またこれほど旅好きで家を空けることがしょっちゅうでなかったら、絶対犬を飼っているところです。

最近は外を全く知らない猫が居るらしいですね。友人の息子さんは一人暮らしで猫を飼っていますが、飼ったときから1度も外に出したことが無いそうです。「家の中しか知らないのだから、問題ないのよ。」と、彼女は言いますが、可哀相でならないと思うのは私の先入観のせいでしょうか?
さて、この物語に出てくる猫は本当に凄い!です。どんな親友よりも、どんな戦友よりも、利口で頼りになります。心を解いてくれもしますし、生きる道を教えてもくれます。猫に出来ないことは無い?
猫好きの人なら、我が意を得たりと文句無く肯定するのでしょうか?
1話では切なく、2話では悲しく、3話では淋しく、4話では切なく、5話では頼もしく、6話では素晴らしく、7話ではいじらしく・・・物語は猫の周りで展開します。
それにしても、そもそもレンタル・キャットって本当にあるのですか?寡聞にして私はこの商売を知らないのですが・・・私も助手席に乗せるどっしりとした年老いたブランケット・キャットがいてもいいな。運転しなくなってもう7年経つけれど・・・北海道の真っ直ぐに続く道を気の合う落ち着き払った猫ちゃんとならまたドライブできるかも・・・なんて。年取った猫というと直ぐに昔の化け猫の映画を思い出すんですけどね・・・ホントは。
1話ずつ、1匹ごとに、ふうっと猫が身近に寄ってくる感じ。
ひょっとして私猫好きだったのかも・・・なんて錯覚が錯覚じゃなく思えたりして。
犬だったらもっと会話しちゃって湿っぽくなってしまうのかもしれない。犬は確実に同情してくれちゃうもの。だから私はこの物語の中では旅に出たブラウンクラシック・タビー、アメリカン・ショートヘアーの猫がなんとも好きだな。男気があるじゃないの!
猫も犬も野生の呼び声に目覚める時がやっぱりあるのだろうか?そして1度目覚めて放浪の味を知ったこのタビーは「旅―」となってもうレンタル猫では居られないんだ。そうさ、そうでじゃなくちゃ
猫とはいえないでしょ?なんて思いつつ、一寸猫に詳しくなったかしら?いえ、これは特別中の特上の夢の猫さんたちで、猫好きの人にも憧れの猫さんのはずだよ・・・。ペットが見させてくれる夢の中でも極上の夢を7匹の猫さんに見させていただきました。

むかしのはなし

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三浦 しをん幻冬舎 2005-02-25
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三浦しをん著

「まほろ駅前多田便利軒」「風が強く吹いている」に次いで三作目の三浦しをんさんです。
そして改めて3作が3作とも見事に楽しませてくれたことに感心!しています。凄いや!全く違うテーストなんです。この方の作品順次読んでいっても良いかも!と思っているところです。
この作品はてっきり短編集かと思ったのです。
どれも昔話から想を得た独立した短編だと。
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でも、違いました。親子二世代の時空を超えて輪になって物語が結び合いました。そしてその各物語を橋渡しする軸が一本ありました。
でも1話簡潔だとしてもちゃんと纏まっていてそれぞれに面白いです。
昔話は各章の冒頭にかいつまんで書かれています。その話を知らない人は多分いないでしょう、少なくとも私ぐらいの世代では。
「かぐや姫」には「ラブレス」
「花咲か爺」」には「ロケットの思い出
「天女の羽衣」には「ディスタンス」
「浦島太郎」には「入江は緑」
「鉢かつぎ」には「たどりつくまで」
「猿婿入り」には「花」
「桃太郎」には「懐かしき川べりの町の物語せよ」
という具合にです。
それぞれは物語的には何のつながりもなさそうながら、匂うもの、なんとなく思わせる言葉などはあるようです。「ウン、アイデアだな?」

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1章読んで、2章目読んで、どういう風に響き合わせるのだろう?と私は首を傾げています。「昔話はいわば借景に過ぎないのだろうか?」と。三作目でフット気が付きます。最初の章で主人公は「明日、隕石が地球に・・・」と「俺」の感情を話す場面がありました。で、2章が「ロケット」?で、3章が「ディスタンス」?お伽噺の世代から時空を越えて・・・風?・・・繋がり?なんて薄ぼんやりです。
「入江は緑」でやっと「隕石がぶつかるのか?ここへ来たか?」・・・という風でした。その一章ごとに「この話いやだなぁ・・・でも、この話一寸良いよね」でもよさそうはよさそうなのですが。最後まで読んで「ああそうか!」それで今私はももちゃんがあの短命のホストの子なのか、彼を始末してしまったのに違いない城之崎組の田山の子なのか知りたくてたまらないのです。田山の考え方の捩れ・・・「こいつ生きてるよ不条理の世界で十分」なんて・・・やっぱりももちゃんと響きあってる・・・親かも?だとすると・・・大変だぁ?
入江で今日も緑をみている「ぼく」も、都会で今日もタクシーを転がしている「私」も、地球の運命を軌道を回って待っているだけの人々も、エウロパと木星の基地に降り立てたカメちゃん、サルとドームの中で花の香に包まれている「私」も皆案じられるけれども・・・やっぱりももちゃんだ。
不思議なことにももちゃんのことはあまりわかっているとも思えないのに、一番気になるのはひょっとしたら桃太郎のせいかもしれない。多分一番なじみの深いお伽噺の摺りこみによって?
そしてその昔お伽噺を夢中で聞いていたかもしれない大多数のチケットを預けられたかもしれない卑怯な「僕」たち「私」たちを思ったりして。それが普通なんだろうねぇ。でも今日も入江の緑を見ていたり、タクシーを転がしたりして自分の居場所を知っている人間でいたいなぁ。
星新一さん没後10年だなぁ・・・また読んでみようかな?なんてぼんやり思ったりして。
 

極上掌篇小説

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極上掌篇小説 極上掌篇小説
いしい しんじ 石田 衣良 伊集院 静角川書店 2006-11
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1冊にこんなに沢山の短編が入っている小説を読むのは本当に久しぶりですよ。たまたま図書館で眼に留まったのです。この頃図書館予約可の30冊が次々にやって来る?ので、それに追われてその場で出会った本を読むということが少なくなりました。
この沢山の短編を読もうと思ったのは、中にぴかぁっと光る掌編にめぐり会えるかという期待が大きかったってこともありますが、この沢山の作家の名前に心辺りが余り無かったからでも有ります。
このところ初めての作家に挑戦している私ですからね。
読んだことがあるのはこの中では筒井康隆さんだけという寂しさ?
「これはいい、この感じがいい」と思った人の作品を読むっていうの・・・いい案でしょう?
それに声に出して本を読むとすると、私の集中力が続くのは大体15分くらいですから、この短編なら大体その範囲に収まりそうです。いい話があったら声に出して読んでみましょうという心算もあったんです。
結果・・・惨敗!ってこともないか?30人3〇掌編の中から2つほど救い出しました。おまけして5つ?好きになれそうな作家。しかしやっぱりこれだけ短いとその判断もつきかねますね、本当のところ。
それに読み終わってこれがどういうコンセプトで編まれた小説集なのか見当もつかないんです。もうね、バラバラ?
だからとりあえず好きになれた、または面白く読めた作品だけ挙げておきましょう。
大崎善生「神様捜索隊」
片岡義男「目覚まし時計の電池」
いしいしんじ「ミケーネ」
重松清「それでいい」
筒井康隆「出世の首」
「神様捜索隊」だけはこの際花丸印です。この作家の代表作?とでも言うものを先ず読んで見ましょうかと思っています。
この作品のテイストがあるといいけどなぁ。
こういう柔らかさ、のどかさ、緩さの中のきらっと輝くもの、ふっと笑顔がこぼれそうになるもの。そんなものを、そういう作家を発掘できたらなぁ・・・。
そう思ってこの本を返しに行こうと思ったら、先日新聞の書評で見た重松清さんの本が届いたと図書館からメールが来ました。
重松さんの本は始めてです。この掌篇集で「それでいい」を読んだ作家です。とりあえずこの作品には好感を持てたので受け取って読むのが楽しみです。

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