英雄の書
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宮部みゆき著
これは・・・呆然としてしまいました。 出版されて直ぐ申し込んだつもりが後れを取ったらしく? 今頃ようやく手にしたのですが・・・これだけ待ったのだからさぞかし沢山の人が読まれたことでしょうが・・・皆さんどう思ったのでしょうか?
私は「いや、どうしよう・・・」ってあいまいな気持ちで読後記録を書き始めました。
「その意気やよし!」って言葉がまず頭に浮かびました。
ある意味非常に直截に作家の言いたいことが腑に落ちてきます。
語りたいこと、この物語を通して伝えたいと思っておられたのだろうことが・・・わかるような気がします。 でも・・・でも、なんです。
読み始めて直ぐ、なんだ「ブレイブストーリー」に続く似た物ファンタジーなのか!・・・っと、ちょっとがっかりしました。 だとするとロールプレイングゲームの物語みたいになっちゃうのかな?と思ったからです。宮部さんの作品の凄いところはそれでも読ませてしまうところなのですが、それでは私にはちょっとつらい。
読み進むにつれて物語の姿が朧に見えてきたら、今度は子供に読ませたいという気持ちのせいか(青少年読者を意識しすぎか?)、主人公を11歳の少女にしたことから生まれたある種の破綻が気になってきました。そこはファンタジーですから印を戴く者として大人びてもそれは現象なんですが、それでもかなり無理が生じたような気がしてなりません。 違和感がどうしても消えません。
感情的に寄り添ってあげたいと思うと途端に隔てられる感じでしょうか。むしろこの女の子に負わせた「その意気」が大きすぎて物語IN物語の方向がばらついてしまったのではないか・・・それで・・・どこをどの筋を拾っていけばいいのだろうと迷ってしまったようなのです。中途半端な大人なので・・・私。
光まばゆい誰もが憧れ信じる英雄の影の部分黄衣の王が背中合わせにあるという単純な図式の上に今の社会で起こりうる加害者と被害者の背中合わせ、何時どちらに転ぶかもしれない危うさを乗せているのだと受け取ったのですが・・・この物語性が反対に実際の社会をきちんと見据えないあいまいさに陥れたのではないかという気もしています。 どこを受け取りどこを主たる綱にするか迷いながら読んでしまったせいか・・・読み終わって中途半端に置かれたような・・・呆然という状態になったのかも?
これは・・・永遠の一部を切り取ったもの、世界の全ての輪廻の回転中の一時のことなので・・・続編は無いと思いますが、そう思うと益々消化不良に陥った感がするのであります。
作家というのは・・・これで結構つらいのよ・・・物語を生み出して・・・それが見事に一つの世界を生み出せたとして(ひょっとしたらいい作品を書けば書くほど)・・・作中の人物やイデオロギーが長生きして読者に影響を与えちゃうのよ・・・毒を生み出す事だってあるのよ・・・でもそれは物語だから・・・それはその輪の中で終ってるものだから・・・なんていうグチめいたものが聞こえたような気も?
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