果ての花火―銀座開花おもかげ草紙 果ての花火―銀座開花おもかげ草紙新潮社 2007-08
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松井今朝子著
図書館で本を探していて、「松井さんの本があったわ」見つけたので借りてきた。 読み始めて直ぐ山田風太郎さんの明治物、特に「警視庁草紙」「明治波濤歌」などの作品群が頭に浮かんだ。
絶対、あの作品たちから想を得たな!って思われるリスク承知で書いてみたかったんだろうか? それならば・・・むしろ期待すべきか?と思って読み始めたのだけれど・・・最後まで面白くなりそうも無いなぁ・・・ぼやきながら読み進んだ。 山田さんのは特急で読みふけられたのだけれど・・・なぁ。 そして「醜い筆」の終りでこの作品の方向と主人公の姿がまぁ見えてきたかなと思えてきた。それでもこの主人公のどっちつかずの姿勢のあいまいさがじれったくて潔くなくて・・・イライラを募らせるんだわ・・・と思っていた。
「果ての花火」の元岡っ引きの最後を読んで作家の描きたいのは、明治期を生きる御家人達江戸時代の尻尾を引きずった人々の寄る辺のなさ、間に落ちてなおかつ時代の流れに乗り始めた敏な人たちにあおられる人の頼りない浮き草の様こそが主人公なのかも・・・と思えてきた。 時代に逆らう確信犯になれない、そこまで芯を貫けない男の優しさが歯がゆいけれど、そのあいまいさに時代を強く意識させられた。そう思って西南戦争前夜の頃を描いた「直びの神」を読むと「禍つひの神」「直びの神」で現す日本人の精神世界から宗教観まで私は主人公宗八郎にやっと共感点を見出して面白くなりそうだわ・・・と、思ったのに・・・「え、此処で終るの?」
納得がいかなくて検索してみれば・・・「幕末あどれさん」「銀座開化事件帖」が先に出版されており、この本はその続編になるらしい。そしてこの作品の後すぐ「銀座開化おもかげ草紙」が発売されているそうな。
同じシリーズのものならそうと分かるように番号なりなんなり手に取った時直ぐ分かるような親切が欲しい!と、つくづく思った。
どうりで妙に中途半端な本だと思っちゃったじゃないか・・・と。