空飛ぶタイヤ

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空飛ぶタイヤ 空飛ぶタイヤ実業之日本社 2006-09-15
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池井戸潤著

「貸して」と頼みもしないのに、友人が「絶対面白いから読んでみて」と押し付けました。
例によって自分で自分の首を絞める図書館借り本に追われている私は、この本の知識が全く無かったので正直「迷惑な!」と思って放ってありました。
でも彼女に会う日が近づいてきたので、止むを得ず・・・手に。
そしたら寝られなくなりました。久しぶりに夜明かし、徹夜で読み続けてしまった本です。
どうして途中で本を置くことが出来るでしょう?
赤松社長のぎりぎりの崖っぷちを思えば?ホープ自動車の人々のありようを読み進めば?財閥系会社の性格、財閥要の銀行がらみの融資、資金の引き上げ・・・その余りの汚さを目の前にして?加害会社とされた社長の家族、被害者の家族の苦衷を読みながら?
早く読み終われば、それだけ彼らが早く救われるような気がして・・・
冒頭直ぐ「あ、あの三菱のトレーラタイヤの脱輪事件!」と気がつきましたし。
私の人生でたった一度の対企業への苦情電話はまさにその三菱自動車に対してのものでしたから。あの時は見事に一閃!石の壁の前ではじき返されちゃいましたけど。苦情処理係のおじさんむちゃくちゃ手ごわかった・・・記憶です!アレだけのことにでも見事に潜り抜けられてしまった私には、かの会社の手強さが下世話的に?理解できましたもの。
コンプライアンスって号令のように一時物凄くよく聞きましたけれど、実際生活の中で余り必要が無くて深く意識していませんでした。この意識の無さが一番の問題でしたね。
最近TVや新聞などで「この型の商品のリコールのお知らせ」を良く見るようになって、会社が責任を認めるところまで持っていくためには、私たちの知らないところでどれだけの人のどれだけの苦闘が有ったことか?と考えるようになりました。
使い方が悪い、整備が不良という言葉に隠れた多くの真実の多分ほんの一部が現れてくれただけなんでしょうね?
使う方が立証しなければ、取ってもらえないような責任って、ねぇ?
赤松自動車があれだけきちんと整備記録をつけていなかったら・・・どれだけ疑いが濃くても、そもそもの始めのところでどうにもならなかったんでしょうから。しかしあの自動車会社本当に腐っていたのね?怖ろしい!
大きくなりすぎると滞って濁って腐るのね。
それでもあの裁判きちんと見届けていなかったことに今更気がつきました。この意識の無さも大問題!
それで・・・殺人・・・?有罪じゃなかったのね?ウソッ!

吉原御免状

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吉原御免状 (新潮文庫) 吉原御免状 (新潮文庫)新潮社 1989-09
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隆慶一郎著

「捨て童子・松平忠輝」「一夢庵風流記」「見知らぬ海へ」に次いで4作目になります。前三作で三人の男、漫画だったら?さしずめ「漢」の字をつかうのかしら?とにかく主人公の三人の男にすっかり魅せられてしまいました。
男の人を、具体的に性格の魅力を、見せ付けるのが上手い作家だと思います。この作品が小説の第一作目だそうですから、これから読むべきだったかも。
司馬遼太郎さんも初期の小説群は本当に男を魅力的に描くのに秀でた人でしたが、それと通じるものがあります。「梟の城」とか「尻啖え孫市」などの主人公に・・・
隆さんの作品の主人公は歴史上の人にしてもあまり今まで脚光を浴びていない人を取り上げているので自由に思う様伸び伸びと描けているのだろう・・・と、思っていました。その意味ではこの作品の主人公は到底歴史上の人物ではない、全くの創作の人だと思われるので、本当はもっと伸び伸びしても良さそうなのに、意外にそうなってはいないのです。
むしろ妙に有り得なさが際立ったような気がします。
といってその嘘臭さがこの松永誠一郎という人物をつまらないものにしていると言うわけではありません。やはり見事な男です。でもこの作品の場合、主人公の魅力は二の次になったようです。吉原の開町に関する家康との密約?その経緯と柳生との複雑な関係の方がより一層面白くて松永さんは割りを喰っている感も。この第一作でもう家康影武者説が柱になっているのですね。次は「影武者徳川家康」を読まねばなりませんね。
この作家の作品の中では女性に魅力があるのは私が読んだ中ではこの作品だけです。二人の花魁の哀しさが、哀しさに花があるというと変だけど、そんな感じで心に迫ってドラマチックが盛り上がります。
それでも圧倒的に男を描くのが上手い作家だなという気は残りますが。
女性をもっと描いてもらいたかったなぁ・・・。
見事な男が増えていきますが、一番心引かれる男はまだ向井正綱です!
 

喋々喃々

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喋々喃々 喋々喃々ポプラ社 2009-02-03
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 小川糸著

「食堂かたつむり」というのを予約しようと思って図書館検索をして見つけました。肝心の「食堂・・・」の方はまだ当分届かないようですが・・・
意外なめっけもの!でした。なんてったって舞台が谷中のアンティーク着物屋さん。この頃街を歩いている時にアンティーク着物とかリサイクル着物とかの店を見かけると、なかなか素通りできない私です。
しかも子供の頃の私の行動範囲と少し被る谷中から鶯谷・日暮里・湯島と、なじみの有る通りや店屋が・・・「ああ、あそこだな?土手の伊勢屋?」
「ああ、美味しいけど並ぶんだ、あそこ。そういえば暫く行っていないなぁ、けとばしや」
「お、三社祭の日に丁度父といったところよ、アンヂュラス」
みたいにちょこちょこ出てくるのですから・・・嬉しい!
それにしても息子と同い年ぐらいの作家さんの作品に郷愁を感じさせられるってのも・・・なんとなく照れますなぁ。
昔の記憶の中の下町よりもう少しテンポのユルーイ感じの人々が行きかい、柔らかな時間が流れているような気がしますが、イッセイさんが纏う雰囲気には昔の町内のおじさんの匂いが嗅げたような。
しかし、こういうステキな町に生きていても、人生は儘ならないものですなぁ?ため息!それでも栞さんの生き方には他のどこより谷中辺りは似合うなぁ・・・こういう若い人の店増えているしなぁ・・・
栞さんのお店は別として、中途半端におしゃれな?軽い!店が浅草には随分増えたなぁ・・・頭をかなり絞っても、「この店の前身はあ~~~なんだったかな?どんな店だったっけ?」と思い出せないくらい微妙に少しずついつの間にか変化しているんですね。変わらないと思っていた故郷も。
だからこんな本はステキな息抜き・・・とはいっても栞さん・・・不安です。「今」はいつだって大事です!けれどねぇ・・・

ジーン・ワルツ

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ジーン・ワルツ ジーン・ワルツ新潮社 2008-03
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  海堂尊著

こうなったら一蓮托生とでも言いますか?読まないわけには行きません。あの、あの人の、あの人が・・・みたいに芋ずる式です。
この主人公?・・・「あ、医学の卵の薫君のお母さん?だって、ゲーム理論の第一人者の伸一郎が夫なら・・・?」
清川先生?「『ひかりの剣』のあの清川君?へぇ~アレから20年後に飛んだんだ?偉くなっちゃって!
で、最終的にはこれは薫ちゃん誕生秘話だったのね?って処に落ち着くわけですが・・・これだもの海堂さんの本どうしたって続けて読まざるを得ません。嵌められた!って感じも無きにしも非ず?
でも、やっぱり面白いんです。そして、今までの作品の中では一番「あ、小説になっている!」という感じがしました。
読んでいて手ごたえがあったのです。
勿論今までも医学の、病院の、大学医学部の、様々な問題点を考えさせられてきましたけれど、今回の作品は私が女性であるためにより一層理解しやすいフィールドであったためも有りますが、実際危惧していろいろ考えていたことでも有ります。大抵友人と集まると、孫の話、娘が息子が結婚しない話(驚くほど多いのですが・・・)が親の介護の話に次いで話題に上がる率が多いのです。ごく当たり前の事を理恵先生はごく当たり前に言っているような気がするのに、そのどれもがなんだか言い難い世の中になっているような気がします。
若いうちに子供を産んだ方が・・・なんて簡単な科白も、働く女性に女性が言うわけに行かないでしょう・・・?だって、女性の足を女性が引っぱってどうするの?みたいな雰囲気感じますもの。医学がそれだけ進んでリスク回避もそれだけ可能になっている(と、思われる社会になって?)のに。とにかく10年後、税金納められる人ってどのくらいになっているのかな?社会基盤や道路や箱を維持するお金はあるのかな?だけど全ての事を棚に上げて、必死で考えるべき問題だよね。日本の人口問題。だけどもう埋めない私が言えることは「産んでもらった子は社会全体でなんとしても育てましょうよ!」
 

さざなみの家

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さざなみの家 (ハルキ文庫) さざなみの家 (ハルキ文庫)角川春樹事務所 2002-09
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連城三紀彦著

友人が「ねぇ、面白い本読んだの。で、色々考えちゃって、あなたの感想を聞いて見たいのよ。読んでみてくれない?」と言う。
この作家の名前は知っているが1冊も読んだことはない。でも、そういわれると読みたい病がむくむく立ち上がった気配。読むのは好きだし、それについて語れるのは大歓迎。彼女も図書館で見つけたというし、で早速図書館へ。
とても面白く読み終えたけれど・・・何処か胡散臭い。
丁度嫁姑物をTVドラマで見るみたいに、何処かにごまかしを隠して甘めの衣で包んで、人ってねぇ・・・って、なだめられているような・・・この薄物を剥ぎ取れたら何が出てくるんだろう?何も出てこないよ。だって「ほんとう」を見ないようにしているんだもの・・・みたいな?
ただ物語りは実に上手いのです。面白い設定から入って家族の肖像画が描かれて、それぞれにそれぞれのそれぞれなりの言い分がちゃんとリアルっぽく描かれて・・・なんと大らかな家なんだろう!
なんてそれぞれのキャラクターがその凸凹がパズルのようにうまくはめこめるんだろう。彼女の出っ張りと彼のへっこみがなんてうまくはまるんだ?
ほどのいい意地悪と、ほどのいい裏切りと、ほどのいい思いやりと、ほどのいい誠実さと・・・何より程の良い家族思い。
私って身びいきなの。よそから見て何がわかるの、この大家族の良さとその裏に隠れた苦労と許しと思いやりが?みたいに、そう大向こうから正面切って大目玉でギョロリと睨まれた感じ。
「毎日少しづつ疲れていくと、その疲れに慣れて、疲れを疲れと認識しなくなるものよ。そう大家族もやってみるといい味でるわよ。家族の丁々発止は無いと薬味のない蕎麦みたいなもんよ。やったんさい!」そういわれても・・・毎日慣れて行く重みを見つめちゃうと・・・その果てしない努力は(いや、果てはあるんですけれど)いや、私は考えただけで疲れそう。だってこれ「ほどのいい」っていうキーワード付きだけど、実生活では「ほど」は取っ払われているんだもの・・・
さて、彼女はどんな感想を期待しているのかな?
 

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