イノセント・ゲリラの祝祭

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イノセント・ゲリラの祝祭 イノセント・ゲリラの祝祭宝島社 2008-11-07
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海堂尊著
やっと、やってきました。・・・というわけで完全にこの人脈に絡め捕られてしまった私です。仕方ないやね? お馴染みの知人たちが右往左往しているのだもの。この作品は時系列のどこに填まるんだ?なんて思いながら・・・どうしたって気にならないわけにはいかない。
こんなに簡単に?世界を作り上げてしまっていいのだろうか?と、思いながらすっかりその世界の住人になってしまっている?気がつけばもう10冊も読んでいるってこと?そしていっぱしに医療と厚生労働省のあり方に疑問と不安を掻き立てられて、意見まで持ち始めているのですよ。いるのですよ。
今回は先回の「ジーン・ワルツ」のように小説を読んでいるぞ!って感じではなかったのですけれど、作家さんが言いたいことは箇条書きで並べられた以上に実によく理解できたと思いますよ。そう、このコミカルに造形されたおなじみの人々がどんな現実を見せてくれるのかと興味津々です。
形態的には「ジーン・ワルツ」のようなの好きですけれど・・・
とにかくしょっぱなの目次と登場人物の羅列には驚きました。
「えらいこっちゃ!最近脳軟化症!この膨大な登場人物たち、ちゃんと私の脳が捌ききれるかしら?交通整理が大変そう?」って、懸念・・・読み始めたら直ぐ吹っ飛びました。例によってこの作家の恐るべきところは登場人物の設定というか表現の実に巧みな?個性付け!
おかしな渾名、それぞれの表情の見事なレリーフ。一人一人が直ぐに頭の中に定着します。それに定着しなくてはならない人物は主に数人。それもあらかたは存じ上げていますし。麗々しく登場人物と書き連ねられていても、ほんのちょい役さんも。でもこれだけきっちり紹介されるということは・・・この厚生労働省がらみのAi導入問題の真の解決までにまだ数作上梓される可能性があるということでしょうか?
厚労省の会議は踊り続けるのでしょうか?(踊ってくれればこちいのもの?)
とりあえずエイアイ導入は既定の事実になったのですよね?
なにしろ白鳥さんが絡むとコッチの頭も混乱するので・・・。しかもあの鵺のような知識人の会議!世の諮問会議というのは本当にあんなものなのかも・・・背筋が凍ります?
それにしても解剖というものに絡む警察司法医学の混乱は全く私には異次元の問題のようですが・・・病理と絡んでくるとやっぱり妙な不安が生じてきます。なんにせよ問題が大きくて、単に医者不足を嘆いていれば済むっていう状況じゃないことは分かりますし。
なんだかこの作家の本を読むと妙に追いつめられて何かできることは無いかしら?と、頭の中が右往左往してついでに体の方までなんかガタガタしてしまいます。楽しくおかしく読んだのにね。
 

海軍主計大尉小泉信吉

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 小泉信三著

8月ですね。(ブログに乗せるのが遅くなりましたが)この時期、結構、戦争・原爆の本を朗読なさる人がいます。
先日も林家三平さんのお母様の戦争疎開の頃を書いた本を朗読した方がいまして、聴いていたらこの本を思い出しました。
初めて読んだのは何時だったのか?父の本棚にあったのを読んだのだから中学生?高校生の頃だったか?
あの頃もの凄く感動した記憶が、細部も朧になった今でもしっかり記憶に残っています。「火垂るの墓」とか絶対二度とお目にかかりたくない・・・辛すぎるのだもの・・・というのもありますが。もう一度読んでみようと思って図書館で探したら、意外なことにありませんでした。
小泉さんの全集の何処かに入っているのかもしれませんが、カウンターで相談したら他の区の図書館から借りてくださるそうで・・・新宿区の図書館から回ってきました。ありがたいことですね。
昔読んだ時は父と息子の心の交感とでも言いますか、思いの節度ある表現に物凄く感心したんだと思います。なんて、素晴らしい父親と息子なんだろう。そしてどうしたらこんなに素直にその思いを表せるんだろう・・・それは不思議なくらい素直な心に思えました。
親子の間に流れる交情愛情がなんとも奥ゆかしく美しく、生まれたからにはこんな親でありたい、こんな子でありたい・・・そう涙しながら読んだものだったと思います。
今読み返すと、その思いには変わりありませんが、あの世界、彼らの住んでいる世界と現実の多くの赤紙に取られた兵士たちとの境遇との差を思わずにはいられませんでした。
なんという優れた世界に育まれたなんという選良だったのか?という思いが心のすき間に萌していました。
満ち足りてこそ礼節は知られるのだと。当時より格段と豊かになった国にあってさえ礼節は失われていく一方だというのに。あの頃の小泉家の人々には普遍にあった知性と感性はどこに失われたのでしょう。ひょっとすると戦争で失った物はかの家において日常化していた日本の美わしき家庭生活、精神的豊かさだったのかもしれない・・・とも思えました。
戦争初期で亡くなった方はある意味恵まれてもいたんだなぁ・・・。 戦死にさえも幸不幸があるようなやりきれなさも感じられたようでした。

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