片眼の猿

題名INDEX : カ行 123 Comments »
片眼の猿 One‐eyed monkeys 片眼の猿 One‐eyed monkeys
道尾 秀介

新潮社 2007-02-24
売り上げランキング : 118924
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る by G-Tools

道尾秀介著

「シャドウ」でピンと来て?返却と同時に申し込んでおいたこの本が到着しました。他にもこの作家の作品はあったのですが、待ち人があるほど人気?だったのはこの作品だけだったのです。他の作品はいつでも待たずに読めるので~って思うとこれが読まないんだなぁ・・・何時でもって言うのはやっぱりいけない。
「シャドウ」で今を感じながら「なんかいい感じだぞ!」と感じた「なんか」の部分にジャストフィット?「いい感じ!」はありました。只、ほんの少し文章が単純で読みやすくって味わいが薄いって部分の評価が私流の「なんか」に填まっているのじゃないかなぁ・・・って言う危惧はあるのですが。
「シャドウ」の方が作品としてはずっと読み応えがありました、が、この作品は読みやすく楽しめました。それって暇だけを持っている私にはとても大事なことです。まぁまずテクニシャン!ですよ。
でも果たしてそれは謎解きものとして公平かどうかと考えるとどうかなぁ。私が特に単純だってだけの事かも知れず・・・?
エラリー・クイーンは認めないだろうな。だけどアクロイド殺しのアガサは黙殺するかななんてところでしょうか。
先ず、私はエスパーを想像しました!「超能力ものかぁ・・・」当然のように宮部さんの一連の小説を頭に浮かべて・・・ふむふむそういった方向ですかなんてね。
次いで秋絵さん、当然のように勿論女性ですよね?
何でこの事件をこの時点でこの探偵は追及しなかったかが今一分からないぞなんて思っていたのですよ。
ってわけで、終末になだれ込む直前で笑っちゃいました。
それと「片眼の猿」の意味が判らなくて・・・
で、結局私はこの寓話?知らなかったのですが、有名な話なんですか?終盤近くになってそれがヨーロッパの民話でと、出てきて「ああそうなのか!」と分かったわけなのですが。これってこの本の主要な柱になりうるお話なんでしょうか?この話が無くても秋絵さんは描けると思っちゃったのですが。秋絵さんに関してはむしろ鳩の見分け方の方が心に残りましたね。
このローズ・フラットのお歴々のことも視野に入れるならば、この「鳩の雌雄・・・誰も見分けようなんて思わないの」の方がインパクトがありそうだけどなぁ。
妙に修羅場も淡々として実際起きている以上にさらさらした感じでおぞましくなく、登場人物の多様さ(反面印象が定まらず薄い感じは否めないのですけれど)にちょっと楽しませていただいた感じかな。
この探偵さんも・・・マァ・・・確かに特殊分野で需要はそこそこ有りそうだし?ま、いっかぁ、楽しめた!
そんなわけで、一寸どうかな?とも思いながら「向日葵の咲かない夏」が今図書館も順番待ちになっています。
Read the rest of this entry »

天平冥所図会

題名INDEX : タ行 83 Comments »
天平冥所図会 天平冥所図会
山之口 洋

文芸春秋 2007-07
売り上げランキング : 132584
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る by G-Tools

山之口洋著

まほろ駅前を読んで大和は・・・なんて書いたせいか、続いて図書館から到着したのがこの本。まさにまほろば「奈良」の物語でした。
吉備真備、聖武天皇・光明子・その娘孝謙天皇、道鏡の時代を舞台にお役人さんと皇后に使える女儒を主人公にしたとてもおおらかな?味わいの小説でした。
神も怨霊も人も混在して住んでいた!この時代は!って感じ?
史実の中の実在の人物を想像の空間で自由自在に操った?物語。
主人公も一応知っている名前です。ほんのお役人の葛城の連さんも和気の広虫さんも、当然和気清麻呂さんも。
あの道鏡事件で宇佐に出向き、平安京造営で活躍し・・・と私が知っている清麻呂さんは強くごついイメージで(そうそう京都の蛤御門近くに住んでいた時は彼を祭ったお向かいの護王神社で年越しの甘酒を頂きましたっけ)したが、ここではおねえちゃんにこき使われる可愛い弟で・・・なんか楽しくなるような読み物でした。
山田風太郎さんの明治物で一葉さんら明治の文豪とニアミスするような楽しさに通じる感じですか。
歴史上の人物が妙に身近にリアリティさえも感じさせて、吉備真備さんが孝謙女帝を「あの娘」なんて言って案じるところなどなんとも・・・アットホーム?でいいなぁ。
神も神だから怨霊も怨霊で紙一重、死者も生者も紙一重。だから日本は和の国だったんだなんて妙にナットクしたりして。
上の方でどんなに権力争いをしていても、下で実地に事務を進める人たちがしっかり自分の分と倫理を踏みしめて仕事をきっちりしていれば世の中はちゃんと回っていくのに・・・と、今の社会保険庁ならびに政治家の皆さんの醜態を聞くに付けこの本の世界を思い出しそうです。
一体日本は何時からこんなに有能なはずのお役人が堕落したんだ?
「世界一有能な官僚社会だ。」って学校の先生は言っていたじゃないか!ホント「国は政治家が方針を決めるが居なくっても優秀な官僚が居るから大丈夫!」っておっしゃった社会の先生が居ましたっけ。
と、憤慨しておりますが。
きっとこの時代が終り、祭られることの無い怨霊が畏れられなくなった頃から官僚・役人はきっと堕落するだけだったのかもねぇ・・・?つまり葛城連戸主さんみたいなプロのお役人が居なくなって身過ぎ世過ぎだけのお役人さんになったってだけのことさ。その点今の学校の先生も聖職者なんて自負の無い只の三文役人になっただけのことさ!と、物語のおおらかさと反比例するように私の怒りのボルテージは上がったままなのでございます。
死んでも仕事の進捗が心配で幽霊になってでてきて手伝うこの坊やを煎んじて飲ます方法は無いもんでしょうか?
天神様!どうぞ天満宮になぞ納まりかえっていないで今の政治家にもバチを与えてくださりませ!
子供たちよ!お父様・お母様をちゃんと祭らないと怨霊になって祟るよ!
?紙一重で私神様の方に転げたりして?そんな可能性も万に一つ?
Read the rest of this entry »

居眠り磐音江戸双紙 陽炎ノ辻

題名INDEX : ア行 363 Comments »
陽炎ノ辻―居眠り磐音 江戸双紙 (双葉文庫) 陽炎ノ辻―居眠り磐音 江戸双紙 (双葉文庫)
佐伯 泰英

双葉社 2002-04
売り上げランキング : 2437
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る by G-Tools

佐伯泰英著

先日薦められて山本一力さんに手を出した。最近知らなかった作者の作品に手を染め出して収拾が付かなくなっている観がある。昔のように本が早く読めない、しかも読む時間も減っているのに、読みたい本は山積していくばかり。「あの作家の本をもっと続けて読みたい」と思っているのに又新しい作家に手を出して・・・一体どうするの?
佐伯さんの磐音シリーズは何冊もあるのに気が付いていたから、手を出すには覚悟がいるぞって思って遠巻きにしていた・・・のに、山本君の磐音さんが余りに素敵なので・・・っていう本の入り方ってどうなんだろう?一力さんを続けて読む時間をひねり出すくらいなら、どうせなら磐音さんに填まってみるかという変な覚悟。五人待ちで届いたこの本は図書館員さんが苦笑して渡してくれたくらいひどい有様だった。ぼろぼろ!図書館で借りた本で今までこんなひどい本は見た事が無い。「全体に汚れあり」の図書館の付箋付きでした。それだけ読まれてきたってことでしょうね。それにしてもこのシリーズ、ざっと15冊はありましたね?
平岩さんの「御宿かわせみ」風永遠の泥沼状態でしょうか?鬼平風一気読み型でしょうか?
読み出した最初から登場人物の顔はTVドラマの配役どおりに出来上がっているというおまけ付き。
うーん、ちょっと違うぞ!と、本の最初の頃思った老分の由蔵さんもこの1冊目を読了する頃にはすっかり近藤さんの顔になってしまっておりました。一昔前だったら近藤さんが磐音役だったでしょうに・・・なんて変な郷愁?ま、でもそれは何の問題もありません!
昔の映画「血闘!高田馬場」を見て手を叩いていたおじいちゃんたちみたいに時代物の映画を見ているような気分で楽しく読ませてもらえそうです。
気分が盛り上がらないときの取って置きの一っ手にして時々様々な読書の間に挟みこむおやつみたいに楽しみましょう。
TVで見ている今津屋サンの方が太っ腹みたいだけど・・・磐音さんの剣の腕もTVの方が上手な感じだけど(1冊目では傷を負うことが多い?)、磐音さんは腕も良ければ経理も明るいと、現代に繋がるセンスも十分持ち合わせている以上何の心配もなさそうじゃないですか?うふふですね、このシリーズは。
とりあえず、これが第二巻になるのかな?と、「寒雷の坂」を予約しといたところです。
Read the rest of this entry »

名もなき毒

題名INDEX : ナ行 375 Comments »
名もなき毒 名もなき毒
宮部 みゆき

幻冬舎 2006-08
売り上げランキング : 2596
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る by G-Tools

宮部みゆき著

予約したことも忘れた頃に、「宮部さん?楽園がもう?」と思ったらこの本でした。そうそう、まだ読んでいなかったんだ。ちなみに今日の時点で「楽園」まだ270人待ちです。
私にとっては「ブレイブ・ストーリー」から約1年振りの現代ものです。結局時代物の方が好きなのかな?
一寸「ブレイブ」を思い出したのは、この作品もテーマの芯にスパイラル状に物語が蒔きついているという構造を感じたからでしょうか。
人の持つ毒、人が人に投げつける毒が文字通り毒殺事件の周りで回転しながら、人の持つ毒にスポットライトが当たっていく・・・人間が根源に持っている闇を順繰りに抉り出して行く・・・という風に読めたのですが。
丁度先週読み終わった「まほろ駅前・・・」とある意味正反対じゃないかとふっと思ってしまいました。
まほろ駅前ではどんなに毒され孤独になった魂にも触れ合う温みが何かの変化をもたらす・・・という善なる気分が感じられて嬉しかったのですが、今週は逆転しました。まっさかさまに転落!
だって主人公が繰り返しいわれることは「人がいい!」です。
彼の特性はそれに尽きます。彼なりの困難はあっても人目には幸せを具現している、他人に悪意のない、心栄えも心配りも‘いい’人。誰からも好意をもたれる人で、その人の周りにさえいわれも無い毒が忍び寄ってくる。本来来るはずの無いものが降ってくる。
これは何だ?です。
最初の毒殺犯の毒は想像力の欠落、他人を思いやれない心が振りまく毒。次の犯人は人間の欲が招く毒。そしてまるでその気は無かったはずの内気な青年が落ちてしまった世の中への恨みが招いた毒。黒井次長のいじめに会った娘が受けた毒。シックハウスとか土壌汚染とか社会が招く毒。人が生きていく中で否応無くぶつかる可能性のある毒が網羅されてねじ合わされて、その中心にどうにも説明の付かない「原田いずみ」という毒が大黒柱のように突っ立っている。
性悪説の具現化した魔物みたいに!
しかも読んでいるうちに心の隅に「あるある!いるいる!」に限りなく近い同意みたいなものが生まれ来てやりきれなくなる。イヤ!認めたくない・・・だけど底に忍び込んでくる肯い。
「いい人」「恵まれている人」「羨ましい人」「自分より何かで勝っている人」そのものが回りに全く責任も無く振りまく「毒」!果たしてそれを毒といっていいものか?ノン、絶対にそう呼んではならない。だが格差が広がっていくばかりのこの社会で、人は果たして憎悪を生み出さずに生きていけるのだろうか。
嫉妬や羨望や焦燥から毒を自分の中で醸してはならない。それは十分分かっている。
しかし「原田いずみ」毒は完全否定できずに社会に確かに存在すると肯って、これは人類発祥時から人類に課せられた業なのだろうか?なんて考えてしまったりしている。昔理科の遺伝の法則を習ったとき教えられた「劣性遺伝子」ばかり生み出す家系の事を不意に思い出した。ま、それは別問題か。
人間の遺伝子の中に時限爆弾のように組み込まれている悪意がどんなに愛情深い親の組み合わせの下でも無作為にポコッと産み落とされる。それこそが普通の人間には思いもよらぬ「原田毒」?それはもう神の悪意かも。
さて、最後のページです。救いと見えますか?毒消し役を志すということは・・・ねぇ、神にたてつく永遠の人間の無駄な抗いにも見えるのですが・・・北見氏も杉村氏も・・・一人ではねぇ・・・読んだ人皆が解毒剤に成るという道がある?・・・う~ん・・・
Read the rest of this entry »

まほろ駅前多田便利軒

題名INDEX : マ行 243 Comments »
まほろ駅前多田便利軒 まほろ駅前多田便利軒
三浦 しをん

文藝春秋 2006-03
売り上げランキング : 8579
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る by G-Tools

三浦しをん著

「風が強く吹いている」に続く三浦さんです。
この本の方が大分長く待ちました。
まほろ市まほろ駅前、名前がいいですものね。題名で惹かれちゃいました。大和は国のまほろば・・・でも東京近郊なんですね?そして畳み込まれる挿話の一つ一つ、その展開はうるわし!では無いのですけれど、一つ一つの挿話の読み終えての情感がうるわし!でした。
不思議な関係の男性二人の1年間の生活の中でかもし出される1種の交情がえもいわれぬ絶妙のコンビネーションで気持ちの良い読後感が1話ずつ重みを増して、引っぱられるようにのめり込んでしまいました。
どちらも人と交わるのが下手、と言うより怖くてできなかったのに、それが事件を重ね人と介入するうちに変化していく。その過程がありえないような事件の積み重ねなのにそこに混じりこんでくる人々の孤独を癒してくれる。いや癒さないまでも他人と関係が生じてしまう。それが暖かい関係にしろ凍るような関係にしろ。便利屋に依頼する人も、依頼された便利屋も、その仕事に関連した人も。
他人といい関係を作って頼ったり頼られたりする手間をかけるには人生忙しすぎたり?いやそれよりいい関係を作るノウハウが伝わらない社会になっている?いや単にシャイで頼めない?ただ単に感情が介在するのがウザッタイ?お料金が介在して乾いた関係なら頼める!
「お願いできる?」って言うより「依頼します」の方が楽ってだけ?
ま、なんでもいいけど、言葉を交わせばそれだけで何か細いつながりは出来てしまうけれど・・・それも厭な時はどうするかなぁ・・・人はそこまで行くと生きていけないのかもなぁ・・・
だから、彼らはその手前でか細い人間味を漂わせているんだろうな。
その頼りない人間味でもかすかなぬくもりを発しているんだろうな。
そのかすかな温度に私もひきつけられたんだろうな。二人になって増幅していく分暖かくなって。
人と交わるのがイヤで?高校時代一言も口を聞かなくても、誰をも傷つけなくとも、他人から悪意を引き出してしまうこともあるとすれば、傷つかないで人は生きる術は無いのだろうなぁ・・・なんて考えてしまいました。
人と係わって生きるということは傷つけることも傷つけられることも許容すると言うことでしょうか。それならそのキズを嘗めあう人がいれば少しは生き易い?
多田さんと行天さんの関係にほのぼの感を持ってしまった私って、思いの他?人間関係に行き詰っているのかも。
まほろ駅前で、この修復された二人が便利屋家業を続けていって欲しいな・・・と思っています。悲しいかな、ご近所付き合いが希薄になったとか、親戚が遠くなったとかいわれても、こんなマンション暮らしをしているのですから、私も一つ依頼したいことがあるのです・・・。
まほろ駅前よりきっと都心のマンション街の方が依頼は山ほどあるのでしょうが、この読後感はやはりまほろ駅前でなければ出来ないんだろうなぁ・・・
Read the rest of this entry »

Design by j david macor.com.Original WP Theme & Icons by N.Design Studio
Entries RSS Comments RSS ログイン