はぐれ牡丹

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はぐれ牡丹 (時代小説文庫) はぐれ牡丹 (時代小説文庫)
山本 一力

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山本一力著

しかし図書館でも本屋でも読んだことの無い作家って何でこんなに沢山いるんだ?って思います。
「時代小説ファンなのに一力さん読んだこと無いの?」
「時代小説書く人で読んでいないのは一力さんだけっじゃありませんよー他にもいっぱい居ますよ。」
大体あんなに作品の並んでいる佐伯泰英さんさえ、NHKでしていて山本君ファンの私なのに読んだことないんです。
「えー、結構面白いわよ、一力さん、読んでごらん。」
というわけで来たのがこの作品でした。が、「あかね空」って言うのを最初に読むべきだったのかもなぁ・・・と思っています。
藤沢周平さんでさえ何回目かの候補の後の受賞ですのに「あかね空」で一発受賞と解説に書いてありましたもの。お薦めされる?ならそっちでしょ?
この作品は妙に饒舌で忙しくって雑に慌しい印象を受けました。江戸の庶民の長屋生活ですよ、当然でしょ?のはずですがそれ以上必要以上に忙しい感じを受けたのは何故でしょうね・・・と考えていたのですが、多分主人公の一乃さんの直感の走り方、他の会話を割って入るあの直感に寄る結論の無茶さによるのかなぁ・・・?と思えます。
冷静沈着鉄幹さんとおしゃま息子とのアンサンブル構成のために必要以上に一乃さんを走らせた?
だけど一乃サンの人を巻き込み引き寄せるカリスマ性がもっと際立ってこないと煩く感じるのではないかなぁ・・・?
いやぁ、結構彼女の性格はしっかり書き込まれているでしょ?父娘の交情といい?
そうだけどあの性格じゃ元気猪突猛進が取り得の魅力で今一?
だからアンサンブル+人情なんじゃないの!松次郎さんとお加寿さんの話なんかいいじゃないの。
だけどそれでも今一ナットクできない、寅吉と一乃のやりとりがうまくいきすぎだーな。
同じ長屋でも平四郎サンの居た長屋は夫婦喧嘩頻発してたけどこんなに騒がしくなかった。
そこが作家の個性の違いだぁ・・・それにしても周平さんは上手かったなぁ・・・と、そこにたどり着くようで。
だけど、一力さんの他の本持っていたら貸してね?
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母の愛(与謝野晶子の童話)

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与謝野晶子著

与謝野晶子さんに童話があることを今まで知りませんでした。
でも図書館でこの本を見つけたとき意外ではありませんでした。
だって11人もの子供を育てた偉大なる母としての彼女のイメージはしっかり頭にありましたもの。そして彼女は情の人と言う印象も。
夫への子供への愛情の濃さではどんな女性にも退けを取らないと言うか全ての女性を凌ぐと言う感じもしています。
だから母としての彼女は子供にお話をいっぱいしただろうと言うことは想像に難くありません・・・と言うわけで読み始めました。
編集の松平盟子さんの所々に入る解説によれば、まさにそのとおりで最初の童話は子供たちへのものだったようです。
収録されていたのは短いお伽噺が6篇、自伝的エッセー「私の生い立ち」童話「環の1年間」「八つの夜」「うねうね川」「行って参ります」ですが童話は全編を収録していないのです。中の何篇かずつの収録です。ですから少し喰い足りない思いなのですが編者の解説の通り確かに?余り面白くないお話も、纏まらないお話もあるのです。
でも私が一番心を引かれたのは全編を通じて感じられる言葉の美しさでした。全ての文章が子供に聞かせるために磨きぬかれ、選び抜かれたように品がよく丁寧で美しいのです。
それが特に生きていたのはお伽噺のうちの「紅葉の子供」と「私の生い立ち」の中の「西瓜燈籠」でしょうか。この二編は声に出して静かに読み心が洗われるような気分を味わいました。
なんと言う節度の感じられる文章なんでしょう!と私は感じ入ってしまいました。先日一寸必要があって本当に45年ぶりくらいに森鴎外の「高瀬舟」を読んだのですが、あの作品もそうでしたが文章の薫り高さがもう抜群に見事なのです。勿論与謝野さんの子供向けの文章と鴎外の磨き抜かれた文とでは重みに違いはありますが。
どちらも声を出して読むと私の言う意味が判ってもらえるかもしれません。与謝野さんの童話は心から優しくなれますし、「高瀬舟」では心が高揚してしかも深沈ともしてもいくようです。そしてその底に美しさが感じられると言う点で通じるところがあるようです。
時代でしょうか?
童話では「八つの夜」が今の子供たちにも十分楽しく読めるのではないでしょうか。「変身ものですよ!」と言えば読んでくれる子がいるかもしれませんね。小学校で朝の時間に1話ずつ読んであげたいような気がしています。
そういえば「行って参ります」の中に「山椒大夫」が「三舛太夫」ともじって出て来ましたよ。お二人は親交があったのですから鴎外さんは笑ったことでしょうね。
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容疑者Xの献身

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東野圭吾著

この方の本も読んだことはありませんでしたが、図書館でも本屋でもよくお名前と作品はお見かけしていましたから知ってはいました。
ただ、ぱっと見て読みたいと思わせる題が無かったということでしょう。ところが少し前になりますが行きつけの美容院で担当のお兄さんが臨時休暇で、違うアーティスト(というらしいです)のお兄さんが私の頭をしてくれたのですが、その会話がこんなでした。
「いつも何をしているんですか?」
「仕事を聞いているの?それとも時間つぶしの趣味のこと?」(この時間に来るおばさんは暇にきまってるでしょ)
「暇な時何してるんですか。」
「そうね、まぁ読書かしら。」(なんでもいいんだけどね)
「えーボクも読書なんです。」(えー!ってほどのものでもないでしょ)
「あら、あなたみたいな若い人には珍しいんじゃない?」
「いやー僕よく読んでますよ。」
「どんな本が好きなの?」で、彼の名前が出たのです。
「その作家私が読んでも面白いかなぁ・・・」
「あ、面白いと思いますよ。絶対お薦めですよ。反対にボクにお薦めの本てあります?最近読んで面白かったの?」
「そうね、三崎亜紀さんの・・・『となり街戦争』と『失われた町』なんか良かったわね。」
「へぇボクその人知りませんねぇ。どんなカンジですか?」
「どんな感じって難しいわねぇ・・・不思議な魅力?」
とまぁ、そこそこ話ははずんだんですが・・・(ちなみにこのお兄さん、二度はゴメンなさい、私の髪が・・・ァ・・・ぁ)・・・でした。
で、東野さん検索。その結果他の本は直ぐ借りられたのですが、この本だけ数十人待ちという状況だったのです。だから来たらその時が運命?ということにして予約しておいたので、今週東野さん初体験となったわけです。
それで?うーん、そうですねぇ~、悪くないですっていうか、「献身」部分というか、情部分が変わっています。
ある意味感動的でちょっとウルウルさせられたというか、今時考えうる最高の献身を考え出したなぁと思えました。が、実際こんな恋情ありえるのでしょうか?ストーカー的執着性愛着思い込み恋?淋しかった潤いの無かった石神さんの選択した生き方は確かに見ようによっては壮絶なのに、何気なく理知的になされた選択と行動力にやっぱり?泣けないはずはありません。
それに最後のがっしりした駄目押し!
究極無償の愛と真の友情(3人の大学同窓生による攻防読み応え有りでしょう)と答えねばならない誠意・・・負い目を負って生きる心の負担は美里さんが既に見せましたしね。
さて、推理の部分です。死体が発見されて指紋のついた自転車、宿の髪・・・の状況で、当然あのブルーハウスの描写が生きてきますから「ああ、この死体は彼だ!」と解かってしまいますよね。それが一寸早すぎたのでその点で興味は「富樫の死体はどこから出てきてアリバイ工作がどう刑事を嵌めるのか」になってしまったのです。だから私も「思い込みによる盲点」に落ちたわけです・・・という点でちょっと忌々しい!って言うかしてやられたわけで・・・面白かった!です。
しかしなぁ・・・「数学は難しい!」ってことだけがわかればいい?
やっぱりなぁ・・・「博士の愛した数式」でも数学を愛せる人が羨ましく思えたけれど・・・この作品でもそう思えましたね、ここもちょっと数学苦手の自分の学生時代が忌々しい!ったら。
湯川先生が出てくる作品が他にもあるらしいです。探してみますか。
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