吉原手引草

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吉原手引草 吉原手引草
松井 今朝子幻冬舎 2007-03
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松井今朝子著

久しぶりに?「読んだぁ~ぁ!面白かったぁ~ぁ!!」と、充実感がたっぷり、おつりを上げたいくらい満足感に浸っています。
「吉原」が書名に付く本は図書館にざっと300冊あるそうです。
話の種はゴマンとあるでしょうね?成り立ちから終焉まであの小さな土地で生き死にしていった人々の哀歓を思うと・・・。
江戸モノの物語には欠かせない?土地であり人々です。
新聞の書評で見て図書館に予約した時点で200人ほどの待ちがあってようやく届きました。江東区の図書館で19冊も所蔵していると言うのに・・・。現時点でまだ300人の人が予約を掛けています。その人たちに、「待つ甲斐ありますよ!」
目次を広げた時点からもう物語の世界に引き込まれます。

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「いやいやいや・・・これは藪の中か?わぉ、紐解き甲斐が有りそう・・・」と、ワクワクするではありませんか?
私が住んでいたのが今はもうない千束町、花園通りを隔てて向こう側は吉原、日本堤の方へ歩いていくと吉原大門がありました。
当時既に全くこの物語の雰囲気を忍ぶ縁もありませんでしたが、大門内の入り口近くに同級生が住んでいて、時々友人と遊びにいっては両方の親から足を踏み入れるなと叱られましたっけ。昼間のそこは唯人気の全く無いしらけた大通りが延びているだけでしたが。
あの通りがこんなにも異界だったとは・・・その後吉原を描いた本を読むたびに不思議だったものです。
この物語の中の人々は実に逞しくその世界で生きています。一人が語るたびに吉原が色を帯びてきて彩色されていくかのようです。
花魁「葛城」に何かが起こったんだ・・・それはなんだろ?・・・誰が堂関わってくるのだろう・・・この人の話は本当だろうか・・・あァ、何があったんだろう・・・と一人の話を読むたびに次が次がと急がれて・・・読み通してしまいました。
そう、最後の章にいたるまでに花魁「葛城」が少しずつ立ち上がって姿を見せてきます。彼女を取り巻いていた人々の思惑、打算、情すべてを受けて。それと共に語り手の人となりも浮かび上がって、最後には私は聞きまわっているこのいい男の聞き手を拝みたい気分にも。
そしてあの異界を見事に泳ぎ切って、首尾よく本望を遂げた花魁に喝采を送りたくなります(それにしても払った代価は高すぎる!)。
引手茶屋のお延さんに教えられて吉原には少々詳しくなりましたが(実に上手い導入ですねぇ)惣籬の花魁はいわばこの異界の上流社会でもありますね。その一番華やかな世界を垣間見ると同時にそこに居ざるを得ない男女の訳ありの事情の悲しさが浮かび上がって・・・人間社会の高度に濃縮された縮図が広げられた感じでした。
それにしても吉原に住む人々の語り口、江戸の町人の語り口・・・みんないいですねぇ・・・油を塗ったようにぺらぺらと・・・?話下手とか口下手ってのは江戸じゃありえないのかも?そういう私も早口で知られております?本当に濃密なお江戸の一端でした。
でもとりあえずはどう修業したらこんなに聞き上手に成れるんでしょ?そこが一番知りたいかも。それに葛城さんどこにどうしていやるかと?

容疑者Xの献身

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東野圭吾著

この方の本も読んだことはありませんでしたが、図書館でも本屋でもよくお名前と作品はお見かけしていましたから知ってはいました。
ただ、ぱっと見て読みたいと思わせる題が無かったということでしょう。ところが少し前になりますが行きつけの美容院で担当のお兄さんが臨時休暇で、違うアーティスト(というらしいです)のお兄さんが私の頭をしてくれたのですが、その会話がこんなでした。
「いつも何をしているんですか?」
「仕事を聞いているの?それとも時間つぶしの趣味のこと?」(この時間に来るおばさんは暇にきまってるでしょ)
「暇な時何してるんですか。」
「そうね、まぁ読書かしら。」(なんでもいいんだけどね)
「えーボクも読書なんです。」(えー!ってほどのものでもないでしょ)
「あら、あなたみたいな若い人には珍しいんじゃない?」
「いやー僕よく読んでますよ。」
「どんな本が好きなの?」で、彼の名前が出たのです。
「その作家私が読んでも面白いかなぁ・・・」
「あ、面白いと思いますよ。絶対お薦めですよ。反対にボクにお薦めの本てあります?最近読んで面白かったの?」
「そうね、三崎亜紀さんの・・・『となり街戦争』と『失われた町』なんか良かったわね。」
「へぇボクその人知りませんねぇ。どんなカンジですか?」
「どんな感じって難しいわねぇ・・・不思議な魅力?」
とまぁ、そこそこ話ははずんだんですが・・・(ちなみにこのお兄さん、二度はゴメンなさい、私の髪が・・・ァ・・・ぁ)・・・でした。
で、東野さん検索。その結果他の本は直ぐ借りられたのですが、この本だけ数十人待ちという状況だったのです。だから来たらその時が運命?ということにして予約しておいたので、今週東野さん初体験となったわけです。
それで?うーん、そうですねぇ~、悪くないですっていうか、「献身」部分というか、情部分が変わっています。
ある意味感動的でちょっとウルウルさせられたというか、今時考えうる最高の献身を考え出したなぁと思えました。が、実際こんな恋情ありえるのでしょうか?ストーカー的執着性愛着思い込み恋?淋しかった潤いの無かった石神さんの選択した生き方は確かに見ようによっては壮絶なのに、何気なく理知的になされた選択と行動力にやっぱり?泣けないはずはありません。
それに最後のがっしりした駄目押し!
究極無償の愛と真の友情(3人の大学同窓生による攻防読み応え有りでしょう)と答えねばならない誠意・・・負い目を負って生きる心の負担は美里さんが既に見せましたしね。
さて、推理の部分です。死体が発見されて指紋のついた自転車、宿の髪・・・の状況で、当然あのブルーハウスの描写が生きてきますから「ああ、この死体は彼だ!」と解かってしまいますよね。それが一寸早すぎたのでその点で興味は「富樫の死体はどこから出てきてアリバイ工作がどう刑事を嵌めるのか」になってしまったのです。だから私も「思い込みによる盲点」に落ちたわけです・・・という点でちょっと忌々しい!って言うかしてやられたわけで・・・面白かった!です。
しかしなぁ・・・「数学は難しい!」ってことだけがわかればいい?
やっぱりなぁ・・・「博士の愛した数式」でも数学を愛せる人が羨ましく思えたけれど・・・この作品でもそう思えましたね、ここもちょっと数学苦手の自分の学生時代が忌々しい!ったら。
湯川先生が出てくる作品が他にもあるらしいです。探してみますか。
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夜の明けるまで 深川澪通り木戸番小屋

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北原亜以子著

北原さんの小説を始めて読んだのは「深川澪通り木戸番小屋」で、続けて何作か読んだのだから、その頃はもう女性の時代小説作家としてすっかり人気作家になっていらしたのだろう。その後「天保六花撰」で勢いが止まってしまった。作家のではなく私の勢いだが。「天保」ははっきり言って私の好みではなかったので「澪通り」の続きがでてくれないかなぁ・・・と、思いながら、お捨さんも笑兵衛さんも木戸番小屋を離れたのだから続きはないと諦めてしまっていた。
NHKで「慶次郎」を見てああこんな作品も有ったのだなとは思ったのだがTVで見る彼らの世界は妙に持ってまわって捻ってまわっている?って感じがして・・・なんかこう素直にうんうんと頷ける感じがもう一つ遠い。薄ぅーくいやーな情の押し付け、厄介すぎる勘繰りが被っているような、痒いところを掻き過ぎてくれてるような?これは読むには億劫そうだなぁと思った。そんなわけで以来北原さんの作品をチェックするのを忘れていた。そしたら見つけました。澪通りの続編を。
でも、これはどういう位置付けになるのでしょう。お捨さんは相変わらず健在でころころ転がるような声で笑っておられました、木戸番小屋で。(ともあれ、作者に殺されてなくて良かった!)
ほっとしました。中島町の木戸番小屋へ行けばあの二人が微妙に癒しを含んだ方向転換の風を吹かせているのだなぁ・・・でしょうか。
この小屋の前を通り過ぎて行く女たちは皆自分の足でおぼつかないながらも、かたくななりともお江戸の町でちゃんと生きているのだけれども、この小屋を通り過ぎた後〈何かながらも〉は憑いていた物を脱ぎ捨てて、以前より軽やかな、晴れやかな足取りになっていくようで、そこがこのシリーズの読後感のいいところなのだろう。
私とそう変わらない?年頃のお捨さんがどうしたら女神のような、他人への触媒のような存在で在れるのか?いい年をしてまだ棘だらけで自分だらけの私は頭を垂れてしまうのです。木戸番小屋のこの不思議な夫婦に、だからどうぞ何時までもそのままの存在でいてくださいと願うしかありません。何時か私がそこへたどり着けるまで。
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闇の底

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薬丸岳著

大分前に「天使のナイフ」を読んだ後にこの本を予約したのですがよりによって今届いてしまいました。
「天切り松」にのめりこんでいましたからそのままのめりこんでいたかったのですが、取りに行かないと次に回って又今度は何時?になりますから。それにこの作家に前の作品で興味を持ったのも確かです。この作家は犯罪被害者の立場に立った作品を連続で世に送り出してきたようです。ある意味ジャストタイムで現在を切り取っていることは確かですし、戦後犯罪被害者になる確率が上がる一方で抑止力は全く働いていないというのが一般認識ですから。
この作品も実に興味深く読みました。
彼は犯罪被害者に非常に面白いと言うのは語弊がありますが独自の立場から目を注いでいます。
アメリカのドラマなどを見ていると「性犯罪者は矯正できない。」が常識のようです。性癖嗜好は矯めるのが本当に難しいことは想像できます。そういえば先日映画館で「リトル・チルドレン」という映画の予告を見たけれど、それも性犯罪者を扱っているようだったな。
アメリカでは今生犯罪者は居所を公表されて、住民たちも知っているといいますね。日本もこのまま子供たち(子供に限らないけれど)の被害が続くようなら考えてもいいシステムだと思って・・・現在の日本の恐ろしさに突き当たりました。
この作品で「子供に対する性犯罪殺人の抑止力をウタウ」殺人者は愛しい娘を持ってしまった性犯罪者で・・・彼の犯罪の動機を描くことでこの種の犯罪者たちの哀れさも恐ろしさも描いていますが、それ以上に結局彼らは矯正されないということを声高に言い募っているようでもあります。実際そうなのだろうか?家族にそういう犯罪者を持ったら、絶対そうは思いたくないだろう・・・祈る気持ちで矯正を願っているだろう。罪をあがなって再犯しないで・・・と。
統計だけでは決められないと一筋の光にもすがるだろう・・・とも思うと、この作家の描く世界の容赦の無さが胸に痛い。
だがやはりもっと痛いのは乱暴され殺されていった被害者とその家族で被害を阻止できるのだったらどんなに踏み込んでも許せると思う憤りもしっかり胸に生きています。
警官という道を選び又さらに選択を迫られた主人公の極限状態を考え出した?描ききった作家の現代社会の認識の確かさを痛々しく読みました。しかし、やっぱり表現の未熟さを思わないではいられないです。横山さんになれとは思いませんけれど、骨太な内容に緻密で微細な叙述が伴えばもっとこの作品は訴えただろうという気がして惜しいようです。言いたいことがいっぱいいっぱいで余裕が無いような?
それにしても現代の復讐譚は「モンテ・クリスト伯」の世界のように、カタルシスをもたらさないようですね?黒岩涙香さんの翻訳の「岩窟王」で始めてモンテ・クリスト伯を知った子供の頃は復讐は甘美に思えたのに。心って昔より複雑になったのでしょうか?それとも・・・?
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闇の傀儡師

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藤沢周平著

昨日新聞を読んでいたら何かの雑誌の「2大人気作家、藤沢周平と司馬遼太郎の比較」という記事の広告が出ていた。
「こんなのが出ているよ。」と朝食を食べている夫に言ったら、「全然違うものを比べる必要があるか?何のために比べるんだ?比べる意味ないじゃないか!」とおっしゃいました。
ごもっとも!と、私も答えました。
確かにネ。「2大人気作家に違いは無かろう!」とは思いますが、この二人の作品は「まさに右と左、甲乙つけるというものではござらぬ。」という感じですか。
でもそれじゃぁ評論家さんのお仕事は随分限られてしまいますよ。
無理を通してもテーマを見つけるという姿勢こそが?面白い評論や論文を作り上げるこつ・・・卒論のテーマみたいに?そう、苦労しましたねぇ・・・大昔!
その雑誌はどの作品で何を比較しているのか知りませんが、意味や意義は後から付いてくる!
というようなわけでその後ぼんやり考えていたのですが、それで思い出したのが司馬遼太郎様の「梟の城」と藤沢周平様の「闇の傀儡師」です。なんてったって冒険物が一番好きな私、正直に言うと司馬さんに夢中になったのは一番初めに「梟の城」を読んだからですよ!「尻啖え孫市」とか読み進んで「国盗り物語」など戦国時代を舞台にした作品でもう面白くて面白くて・・・となったのでした。維新物も好きでした。でも明治が舞台の作品になって、作中人物が余りにも等身大?に近くなってきてなんとなく匂いまで現在と近くなってきてからは余り面白くなくなってきて、史談・地理・民俗・国家・・・なんて論ずるようになると私の興味は褪せてきたというのが正直なところです。
でも司馬さんの作品の膨大さを考えると・・・やっぱり比較なんて出来るもんじゃないなぁと・・・思っちゃいますね。
私は評論家でも分析家でもなくただただ面白いものが読みたいだけの読書趣味さんですもの、自分の好きな本だけありがたく読ませて頂くだけです。
藤沢周平さんはその点面白くなくなってきたなぁ・・・と、思うことはとうとう無いまま・・・私にとっては最初から最後まで面白く読ませる作家のままでした。全作品を読み終わったわけではありませんが、今まで読んだ作品全てが好きです。そして藤沢さんの「闇の傀儡師」を始めて読んだ時、ふと「梟の城」を思い出したんだという事をこの新聞の広告を見たときに思い出したのです。
「ああ、藤沢さんにもこんな伝奇小説があるのか!」でした。
そのとき時代小説を書く人はやっぱりこんな風な冒険活劇、筋立ての波乱万丈な作品を書いてみようと思うんだ!と思ったのです。
若いときに読んだ分ストイックにニヒルに見える、しかし激しい気性情念を持つ「梟の城」の葛籠重蔵の重さは物凄く魅力的でしたし、物語を主人公の向かう方角に引っ張っていく迫力も無常も、あくの強すぎるくらいの登場人物たちの性も申し分なく魅力でした。
が、今は「闇の傀儡師」の主人公鶴見源次郎の抑制の利いた静かな資質が好もしく思えます(23歳ですと!)し、作中しっかり書き込まれていく緻密な生活感がちょっとした清涼剤にも読み応えにもなって読後感が安らぐ感じがして好きです。登場人物全般に癖もユルイ?ようなところも含めてです。
もっともこの手の作品ならもうちょっと暴走してくれても良かったかなぁ・・・
それは私の年のせいだけではなく時代の色のせいもあるような気はしますけれど。
藤沢さんの作品に登場する浪人さんたちの生活の苦労がご本人?たちには申し訳ないながら楽しく読めるので青江又八郎さんも神名平四郎さんもこの鶴見源次郎さんも愛しちゃうんです。
この作品の田沼意次の造形にも興味が惹かれます。田沼意次って書く人、作品により色々な表情を持つ人物にできる、実在の人物としては最高の江戸時代キャラクターですよね。使いようで180度様々な性格・評価を付与できる特異な魅力的人物ですね。
私の子供の頃は賄賂で有名な政治家でその後の松平定信時代の方が「寛政の改革」として評価されていたんじゃなかったでしょうか。物語で登場させるには、松平定信は怜悧・清潔の度合いぐらいしかいじれそうもありませんけれど。
池波さんの「剣客商売」の田沼さんはまぁちょっと出来すぎ?ですが。
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四日間の奇跡

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浅倉卓弥著

この本を図書館に予約したのは今年の「このミステリーがすごい!」大賞の広告の横に第1回大賞受賞作として載っていたからです。
だからこの賞の作品を読むなら「第1回の受賞作から読むか?」という乗りだったのですが・・・もう4年ほど前の受賞です・・・のに?20数名待ちました。・・・ってことは着実に読まれている本なのかな?・・・って、思いました。
昨日友人と会って食事をしている時に「今、ミステリー大賞を取った『四日間の奇跡』っていう本を読み始めたのだけれど、半分近くまで行ったのにどこがミステリーなのか分からないのよ。」と言ったら、「それって吉岡君の映画の?」
「え、映画化したの?」「私見たよー、そんなに前じゃないのだけれど、余り覚えていないけれどピアニスト役で吉岡君が出たのじゃないかなぁ・・・」「それだ!ピアニストの話だもん。」
吉岡君の一応ファンなんですけれど、その映画の情報は全く私に無くて、「映画化されたんなら本当に話題だったんだ!」と私の時代遅れ?をちょっとばかり嘆きました。あたしゃ、ヤッパ、遅れてるんだね~。
彼女に会うまでに読んでいた前半部分は淡々と進んで、ドラマ的には天才ピアニストが指を失い、知的障害の娘を引き受けるに至った経緯とその娘の才能を見出して慰問と言う生きがい?らしいものを見出して生活している現況が静かに述べられていくだけなので・・・と言ってしまえば身も蓋も無いけれど・・・丁寧なカタリ部分が続いていて、私はこの小説面白くなるのかしら?と、危ぶみ始めていたところでした。
でも映画化されたと聞けば、やっぱりミステリー!が始まるのだ?と、ちょっとわくわくですよ。
それにここまでのところこのピアニストを吉岡君が演じたというのも不足はありません。影が薄く暗いでも優しい青年ですもの・・・ん、うってつけかも?です。
と言うわけで今朝旦那が11時まで起きてこなかったので、何もせずに朝の七時から読みふけって、読みきりました。
だけどここからは敬輔はすっかり吉岡君の顔になってしまっていました。「北の国から」の語りの乗りになっちゃったんです、参ったなぁ。ありがたいことに?他の役が誰だったかすっかり忘れてくれていてよかった!
そしてもっとありがたいことに後半は一気に読めました。
浅田次郎さんの「椿山課長の7日間」を思い出したし、少年と少女の体が入れ替わるTVドラマとか母と娘の体が入れ替わる映画とか・・・幾つも類似作品を思い浮かべては・・・しまいました!
しかしこの作品の「脳」に関する沢山の知識(彼が自分で調べたこと、白石医師との会話、藤本さんや倉野先生との会話などから)や音楽のかかわりや知識などが丁寧に挟まれていてそれが重厚な厚みを与えていたし、何より舞台になったセンターというかホームと言うかこの場所の設定のうまさが生き生きしていてこの作品を際立たせていました。ちょっと羨ましすぎるような善意ワールド!だけど。
「入れ代わり」の描写を読む時には確かに類似作品の描写を思い出さないわけではなかったけれど、この作品は真理子という人の饒舌さと千織の言葉の無いのとの対比が面白いトーンになっていて、真理子さんの饒舌さには同じおしゃべりの私でも参っちゃいました。降参って感じ?
人を傷つけない饒舌ってとても難しいのに。
多くしゃべると多く不仲・・・っていうのが私の戒めなんですがね?
最も敬輔君が殆どしゃべらないのだから、真理子さんが喋り捲らなければこの話は進みません?!
それに倉野先生の造形が美しくて読んでいて敬輔君ならずともこの先生に傾倒する気持ちを持てたこともこの作品への傾斜を加速させたと言えるかもしれません。
いいテーマが浮かび上がってきたなと言う嬉しさでしょうか。
死とか心とか魂とか脳とか不思議な物をいっぱい考えさせて、優しく生きる人をちりばめて・・・読後感が柔らかかったなぁという嬉しさも。
多分前半の作品の底流を形付ける部分がちょっと長く感じられたことは確かだが(後半は夢中で読めました、念の為)それもこの作品の最後の感動を呼び起こすには必要だったのかもしれないなぁと素直に思うことにしました。書くほうもかなりの気骨と我慢を要したに違いないし。丁寧さが凄いよ!
吉岡君が演じたと言う映画近いうちにTVででもしてくれないかな。もうDVD有るよって?
ミステリー大賞まだ新しい?賞だから、追いつける?
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用心棒日月抄

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藤沢周平著

先日新聞の広告に「藤沢周平さんの世界」を作品ごとに地図や資料を載せた小雑誌が発行されるという広告が入っていました。
全部で30冊ほどになるのだったかしら?
藤沢さんの人気は凄い!と、改めて感心しました。
私も読みながら海坂藩の地図作ってみようかなぁ・・・と、漠然とですが考えた事があるくらいです。
藩主の家系図とかもできるんじゃないかなぁ、なんて。
やっぱり、やるよねぇ・・・ファンは!またはそれで商売できると思う人いるわよねぇ・・・!
実際いっぱい出ていますよ。でも又出るようです、それもシリーズで!
私は攻略本の類は買わない主義です。それって一種の攻略本でしょ?それなのになぜか購買申し込んじゃったんですねぇ・・・なんでだろう?
最初が「用人棒・・・」だったからかなぁ。*訂正「蝉しぐれ」が1号、用心棒は2号でした。
青江又八郎と出会ったとき、私は凄く嬉しかったのです。
その後、神名平四郎とか立花登とか伊之助とか魅力的な主人公何人にも出会いましたが、その中で最初に出会ったのが彼だったから特別な思いいれがあるのです。
周平さんは本当に沢山の魅力的な人物を生みだしたと感嘆し、そこから得られた沢山の楽しみに物凄く感謝しています。私の老後の?とっときのお楽しみのつもりです。
これまでどれだけ楽しませてもらったことでしょう。
青江さんはそれまで幾つか読んだ短編の主人公たちとは違って貧乏にいつも鼻面を引き回されていましたけれど、又危険に付き纏われていましたけれど、底に流れる明るさと逞しさは庶民のものでした・・・という気がしませんか?
それくらい地に付いていて生活があって敏くて気も心も回って・・・機転が利くと言えばいいんだ・・・一つ一つの挿話の解決が痛快で心温まる何かがあって・・・重層になったモチーフがしっかりしていて、いやぁーなんて素晴らしい小説だろうとすっかりファンになってしまいました。
だからこれ1冊で終らないで続きがあると分かった時は狂喜乱舞!でした。
だって、この話はこの1巻で実に見事に完結していたんですから。
「えー、どういう風に続けたんだろう?」でした。
で、正直に言っちゃうと、私の中で青江さんはこの1冊で終わりにするぞ!絶対終ったんだぞ!2・3巻は無かったんだぞ!と、言い聞かせています。4巻は読むのをためらったままです。
凄く惜しいのは1つ1つの「用心棒挿話」だけは残しておきたいという誘惑がそれでも私の心をつかんで離さないんです。
問題はこれが現代の単身赴任サラリーマンの話に置き換えられるような気がするからです。
そして私が付いてゆきたいのに付いていけない妻だという気がすることです。
ここで引っかかっちゃうんです。
由亀さんの事を考えちゃうんです。だから「日月抄」は良いのです。結ばれる望みは儚かったのですから、私は祈って読んでいればよかったんですからね。
でもその後は?彼女はおばばさまに仕え、留守を守り、夫を案じて日夜無事の帰還を待ちかねて、寂しさに耐えているわけです。
男は外へ出れば、同僚も仕事先もあり人との出会いも多い・・・危険もあるけれど絶対家にいるより生きがいがあるよ!
一緒に心を通わせて仕事をする人は多いでしょう・・・だからここで許せないんですね。夜鷹のおさきさんの挿話は許せますよ、なんとか。
でも、佐知さんはいけません!心を通わせる状況なのは百も承知でいやです。どうしてもいやです。心が通っているからいやです。
由亀さんはただでさえ不安の中に居続けて、健気に耐えているのに・・・やっぱり駄目です。
といって、佐知さんに文句はありません。
有能なこと、いじらしいこと、女性らしい全てのしぐさ、行動力、全く文句なしです。だからいけません。
由亀さん太刀打ちできないじゃありませんか、遠く離れて対抗する術無いんですもの。
それなのに3巻は酷に過ぎます。時代小説というより手馴れた男性読者向けの剣豪小説風?になっていくようで。
というわけで折角続きがあるにもかかわらず青江さんは「用心棒日月抄」で私の中では終わりなんです。
でもその1冊は大事な1冊なのです。
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指輪物語

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J・R・R・トールキン著

さて、なんといって書き始めたらいいか?
そもそもこの物語について書いてもいいのだろうか?
随分悩みました。
私自身に限ってみれば、お勧めしたくてしょうがないくらいの本です。
でも、なんといっても長すぎます。
この物語を読むに当たって、まず「ホビットの冒険」や「シルマリルの物語」を読んでくださいなんて言ったら、モットモットモット大変です。
全部読めばあなたはトールキンが作り上げた大宇宙・一つの壮大な歴史・別世界の大叙事詩の見届け人になれますが。
それはそれは素晴らしい世界です。
ところがこの物語が映画化されたので、本は読んでいなくとも、この物語を映画で楽しんだ友人が何人かいたので、
「本はもっと面白いわよ!」
「映画の補足にもなるし、イメージがぐんと膨らんで指輪物語の世界がビビットになるわよ。是非お薦めよ。」
なんて、薦めてしまいました。
私の本の選択眼を信頼してくれている二人の友人が早速評論社の文庫本9巻を買い込んで挑戦しました。
でもお一人は一巻を読み終える前に
「あんた本当にあれ面白いと思ったの?」と言ってくるし、
もうお一人は
「駄目だ!名前が頭に入ってこないんだもの。映画なら顔で分かるけどさ。オーランド・ブルームは覚えた(綺麗な人よねぇ!)けど、
役名はなんだったか、だいたいあの人間じゃない種類ってなんだっけか?」なんて言って、どうやらブックオフ行き?
で、もう一人
「ちょっと長すぎてさ、本屋で立ち読みしたら、読み通す自信が無くなったから、あなたの借りてまぁ一応挑戦してみるわ。」
と言った友人がいたのですが、彼女は6ヶ月かかって何とか読み終えたのです。
でも「ちゃんと分かったかは自信が無いわ。」ですって。
3人の共通項は50代。
ふーむ、確かにカタカナの名前は強敵ですし、また登場人物の量?は半端じゃありませんから。
だから、お若い方に(頭の中が?)お薦めしたいと思います。

「すっごいなぁ!」とタダタダ私は感心してしまいます。
一人の人が天地創造から人間の世になるまでの壮大な歴史を作り上げてしまったんですものね。
しかも飛びっきり想像力に満ち溢れていて、とびっきり勇壮なんですもの。
ホビット族とかエルフ族とかドワーフ族とかエント族とか人間族とか魔法使いまで沢山の種族を作り上げた上にその言語まで創造してしまったんですもの。
どきどきしながら読み進んで、はらはら手に汗握って、夢中で応援してしまいます。
それにあの地図!
一生懸命彼らの辿った道を指で追いながら読みたいのですけど、足りないところ、見付からないところがあって(出てくるすべての地名が載っているわけでは無いのです)、自分の想像力で補わなければならないのもそれはそれで面白いのです。
そして種族のそれぞれの家系にまで目が向くと又そこには面白い興味深いものがあるのです。
この物語の登場人物の中で私のお気に入りはアラゴルンとサムです。
アラゴルンの指輪の旅が始まるまでの長い苦闘の生活と彼に付き纏っているなんともいえない憂愁、この旅が始まってからのサムの使命に対する無私の無垢の奉仕、忠誠心が私を魅了するのです。
「ああ、こんなに意志強く真一文字に生きられたら!」なんて思ってしまうのは、私が全くその正反対の生活をしているからに他ならないのですけれどね。
私の送っている、又送ってきた生活には無いすべてのものがこの物語にはぎっしり詰め込まれているのが嬉しいのです。
私の中にあるロマンチックな感情が最後のアラルゴンの王位継承とアルウェンとの結婚、そしていずれ訪れる別々の死に過剰に?反応してしまうのです。
この恋の場合アラゴルンよりアルウェンの選んだ路の方が過酷ですよね。
私にはそう思われて、アルウェンの為に涙を流すのですけれど、成就した余りにも甘美な恋は美しすぎて、私の流す涙も又甘いのです。
旅の間にフロドの負った永遠に癒されない痛手も私の心を揺さぶりますし、ピピンとメリーの二人には笑わせてもらいましたし、ギムリとレゴラスの種族を超えた深い友情にも感動させられますよね。
最もこの旅の仲間の取り合わせそのものが意義も魅力もあるのですけれど。
この長い物語の中から一体どれほどのものが汲み取れるかは読む人それぞれのお楽しみでしょう。
そしてきっと汲みつくす事は出来ないほどいっぱいお楽しみの可能性があるでしょう。
冒険が好きなら、虜になるのは簡単!
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