刑事のまなざし 刑事のまなざし
薬丸 岳講談社 2011-07-01
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薬丸岳著
久しぶりの?薬丸さんでした。が、何か新鮮さに欠けると思ったら…東野さんの加賀さんを思い起こさせるタッチだったからかもしれません。そしてなおいうなら…加賀さんの方が作品により出来不出来はあるかもしれませんが…すぐれていると思います。
いい連作短編でした! それはそう思うのですが…読んでいて稚拙な感じも受けました。置かれている状況、夏目さんの人生の選択、人格…すべてがちょっと簡単にきれいすぎたかもしれません。 勿論、そういう人格の男を描きたかったのでしょうが…それがもう一つ納得を生む表現が足りない…なんかそういう食い足りなさでしょうか。
「オムライス」は嫌な話でした。 でもこの母親は自分のしたことに本当に気が付いたでしょうね…。
「黒い履歴」は悲しい兄弟の物語でした。この弟はきっとちゃんとおじさんをして生きていくでしょうね。でも…大変だろうなぁ…。
「ハートレス」は主人公が輪郭を見せてくれました…同じような境遇の男が踏ん張ってくれるかもしれない…希望もありました…。
「傷跡」は取り戻せない時間と向き合わされました。こんな沼に落とされた男をどうしてあげられるんでしょうね。傷跡の多い女の子より殺人をしてしまった男を救う手だてが…。
「プライド」は何とも…。
「休日」は男たちがかっこよくありませんか?なんだかドラマでちょくちょく見ているようなお手軽な設定で、いいけど…どうかなぁ…。
「刑事のまなざし」表題ですが…。いい話にしたくてこれは反対にひねくり回されてしまったという哀れさが行間から漂ってくるような…テーマを設定してそれを文字だけで考えたというか…そんな…小理屈をねじ込まれたような…素直に共感して罪と罰を考えるのを反対に遠ざけられたような…なんか挟まったような…。
そんなこんなで…もう少し熟成を必要としたんじゃないかなぁ…?夏目さんも、彼の周辺も。