引かれ者でござい ・ 待ち伏せ街道 ー蓬莱屋帳外控ー
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志水辰夫著
「つばくろ越え」を読んでから…当然これはシリーズ化されると踏んで…待っていましたから「蓬莱屋帳外控」と銘打って出版された「引かれ者でござい」はすぐ読みましたし…「待ち伏せ街道」も広告を見てすぐ図書館に予約しました。
ロードムービーはどんな時でも興味深く楽しめますが、この長飛脚という設定は志水さんの文章を読むのに最高のめっけものの題材、シチュエーションだとこの2作を読んで思っています。
「引かれ者でござい」は「引かれ者でござい」「旅は道連れ」「観音街道」3編。
「待ち伏せ街道」は「なまくら道中」「峠ななたび」「山抜け女道」3編。
ただ、これらの作品群は終わりに行けばいくほどぐいぐいひきつけられてくるのですが…忍耐力を要求するという点でハードルがどんどん高くなっているような気がします。
かなり微細な地図が必要ですし、行程を一緒に歩く根気も要求されます。 しかも実に先が見えない。 本当に一行ずつ、一枚ずつ、章ごとにようやく一枚一枚道の、登場人物の姿の、霧が晴れていく…という感じでしょうか。 正直かなりもどかしさを感じつつ、それでも読みふけっていき…最後にやっぱりそうだったんだなぁ…と腑に落ちてほっとさせられ、この主人公たちを改めて好きだなぁ…と思わされるのです。
全くどうしてこんな横道に入っていくのかなぁ…それが分からないうちはじりじりじりじり頭を焼きますね。だからこそ最後が嬉しいのですか? そこでやっと私は笑っちゃいます。
男って!と。 この!が何とも好きですね。
男を見込んで仕事の裁量を任せる勝五郎も忠三郎も見事なら難しい仕事を見事なし終える飛脚陣も見事!一仕事の後引っかかった脇道をとことん追っていく飛脚たちも凄い。そしてまた彼らもその仕事を引き受ける自分自身の背景を背負っているところも読みどころ。かかわったものに人にきっちり結末をつけてみせる器量に脱帽して読了する。もう強靭でしぶとくてかっこいい!この完璧感!街道や山越えの詳細が又限りなく興味を惹き起こす!関わってくる村人通行人が面白い。
3冊読んだところでようやく重い腰を上げて蓬莱屋の手ごまの飛脚さんたちのプロフィール帳を作ろうかな?なんて思い始めました。 仙造さんが好きで彼の登場を待っているのですが…他にもどんどん地味(そう)でしたたかで頭のいい目覚ましい男が排出されてきそうで…こっちも頭も心も整理して迎え撃たなくては…という境地?ですよ。
暇になったら三冊また読み通そうって思っているのだけれど…今が暇じゃなければいつ暇が来るんだ?というのが私の痛い処。
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