64(ロクヨン) 64(ロクヨン)
横山 秀夫文藝春秋 2012-10-26
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横山秀夫著
「横山さんどうしちゃったんだろう?新刊全然でないねぇ」「そうだなぁ~、まだ若いし病気でもないだろ」なんて父と話していること数年。
新聞に7年ぶりの文字と共にこの広告を見つけました。ファンは皆待っていたんですね。数日後に図書館に申し込んだらすでに数百人待ち。文庫ではないので我慢して待つこと…ようやく届きました。(病気だったという話も)
おなじみのD県警物のミステリー。その中の白眉になりそうな…。どの作品でも横山さんの作品を呆然として一気に読んでしまう訳は、あまり物事を深く突き詰めて考える癖?の無い私にとって、この作家の作品に出て来る多くの主人公たちの頭の中の複雑なからくり。信じられない程緻密で疑り深く繊細で猜疑心に満ちて…行ったり来たりの疑問符に満ちた…文章で言えば推敲?ともいえばいえる恐ろしい思考の深読み。 否応なく主人公と頭が同調してしまって、次は次はこの先の局面は…と夢中で読み進んでしまう。
今回の64という符丁の着いた事件の結末も気になるが…二渡さんの行動への三上のじれ…広報官としての立ち位置の揺らぎ…読みふけるこっちも揺らぎに揺らいで…彼の立ち位置が定まったときの、覚悟のほどがいかなる苦渋と困難と葛藤の中から出て来た崇高なものであるのだ、と妙に信頼できて清々しくなってしまった。 仕事に生きるってこういう事なのかな。ついていけるよね。 こういう男の娘だもの…何とか生き抜いて欲しいし道を見つけてほしいな…と、最後まで見つからなかった彼の娘にまで祈りを、なんて気持ちにまでなってしまった。いい作品だ!実に満足して本を閉じたのだけれど…「64」ね。あの犯人も追いつめてね。
警察ものとしては警察の仕事はこうして数珠つなぎに事件から事件へ、刑事たちの葛藤と絡みの上につながって行くんだなぁ…と、D県警のある年のその時の構成員のその時の事件の一部を切り取って見せられたような臨場感があった。