涅槃の雪 涅槃の雪
西條奈加光文社 2011-09-17
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西條加奈著
遠山の金四郎を描いて…もちろん主人公ではないのだけれど…このはすかいの眺めが面白かった…遠山さんをはすかいに書いているというわけではないのだけど。
遠山奉行を描いていてのこういう視線の作品は珍しい。
この作家は2作目なのだが初めて読んだのが「無花果の実のなるころに」だったし、この作家のことを知らなくて…まだ2作読んだだけだからまだ全然わからないのだが、最初の作品から受けた印象では時代物を書く人とは思えなかったので意外だった…と、思ったのだけど反対だった。 時代小説で出てきて「無花果」の方が意外だったんだということが分かった。
それならひょっとすると楽しみを一つ見つけたのかもしれない。
金さんならご存知!というくらいのものだが…この作品の金さんはなかなかのみものだった。というよりこの本の面白さは、金さんというより遠山奉行がいた頃の江戸の政情を描いたところにあった。 金さんと並べて、悪名だけはこの時代以降今も?鳴り響いている鳥居耀蔵を描いて、意外な公平感がある。 それは語り手ともなった遠山下の与力高安の人と簡単に和することのない独立独歩の人柄・正直に見つめる彼の目の力から生まれたのかもしれない。 非常に遠山・矢部・鳥居の人柄から政策までが依怙のない目で語られているような気がしてくるのである。   3人3様の懐の深さというか人柄の豊かさというか…多面的な人の在り様を上手に描き出したなぁ…。私は「そうだよ!人は一筋で描けるものじゃないんだから…」等と頷いている。 なかなかうまいなぁ…! そう高安氏の恋もなかなか面白かったし。 しかしお上の経済政策次第で憂き目を見る庶民の姿は今も昔も…タメ息だね。 他の作品も読まなくっちゃ…久々に…そうでもないか?…楽しくなってきた。