つるかめ助産院 (集英社文庫) つるかめ助産院 (集英社文庫)
小川 糸
集英社 2012-06-26
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小川糸著
「食堂かたつむり」「 喋喋喃喃」 に次いで3作目。 まだ小説は数冊しか書いていない作家さんだと思うけれど…まだ30代の若い作家さんだと思うけれど、最近の若い女性作家さんの露悪的な感情のひだを思い切りえぐってアイロンをかけて伸ばしてさぁどうだ?…なんていうえげつなさが全くないところがとても気に入っている。 ま、つまりこの3作に関しては…というところだけれど。 作家の業と言ってしまえばそれまでだけど、安心してこの作家はいい!と思っていると突然足元をすくわれることが…ままある。 毒はやはりある、避けて通れないという事なんだろうね。特に人間と人生とこの世を描こうとすればするだけ。
3冊目…この作家の作品にもただの甘さだけでないものが少し顔を出して来てはいる…なぁ…と思ったけれど。     「喋喋喃喃」は設定そのものがたぶん今の女性たちにとっては全くあり得る当たり前のことかもしれないけれど、設定そのものの苦さが私には難だったけれど、その設定の上でさえも甘さが勝っていてその甘さが少々腹立たしかった。 それでもこの作家の気分には柔らかさ温かさが充満している。 その居心地の良さが今のところ身上で、私はそこに得難さを感じている。
この作品はその設定の最初の苦さが…物語が進むにつれて…それは生きていくうえで当たり前に降りかかってくる類の苦さにすぎなくて…生きていればこういう日も、そういう日も、こういう人にも、そういう人にも巡り会って…それを素直に受け入れさえすれば…事態は好転もするし、前向きにもなれる…ということがお伽噺的な調味料をかけて提出されている…という感じで読んだ。 そう、生きていくにはこういうフェアリーチックな調味料は誰でも欲しいよね! そうそこがこの作品の最高の魅力なんだ。 一呼吸おいて前向きになれる手伝いをしてくれるのかもしれない。元の世界に戻った彼女の人生からは島にいた時のような魔法は消えてしまうだろうけれど…色々な人が色々なことを抱えてそれでも前向いて歩んでいるんだってところが彼女の心の芯に宿ったことは確かだよ…と満足して私は読み終えた。  で、アップしてから気が付いた。 「ファミリー・ツリー」を抹殺していた…記憶の中から? あらら…