出世花 (祥伝社文庫) 出世花 (祥伝社文庫)
高田 郁祥伝社 2008-06-12
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高田郁著

「おくりびと」の記憶もまだ新しいので・・・おや?と思いました。
それでも、この作品のオリジナリティと言うか、目新しく、書かれた世界は鮮烈で、見事でした。 新鮮さが初々しさにもなっています。どんなに偉そうに書かれた作品よりも、どんなに哀れに描かれた人よりも、どれだけこの世界の人が美しく清らかに愛しく思えるか? 不思議なくらいです。 同じ主人公の中篇三作です。
江戸時代の葬式のあり方など、多分にこの作家は調べつくして描いているのだろうと思いますが、死を描く作品は時代劇にはどれだけ多いことか・・・改めて思い返しています。 侍ものにしろ世話物にしろ人間を描けば死は避けて通れません。 でも送る人の心に送ることの自然を受け入れさせてくれるような作品はこれまで無かったでしょう? 結婚と誕生と葬式、この3っつを経て人は大人と成る。それでも死はやっぱり目をそむけたいものでした。 こんな風に正面に見つめること、しっかりと向き合うことの大事を改めて思いました。教えられたということでしょうか。
「おくりびと」もその原作か原案かなにかそんなものがあるようですが読んでいませんので、私には本で読む始めての世界でした。
そしてこの作品の主人公正縁ともう一人の主人公?正念の心の奥深さはどうでしょう?この幼い少女のあっという間の?十年が、1話ごとに確かに辿れるようです。 死ならずとも多分しっかり見るもの見据え受け入れるものがあれば人は独自に成長を遂げ豊かに目を見張らせるものになっていくのかもしれないと思いました。この二人が大好きな私でいられたら・・・と、思います。そうであれば、わたしも優しくなれるでしょうから。
それにしてもこの主人公の身の上には、「諦」と言う字が思い浮かぶ宿命がのしかかっているのに、なんと底明るいのでしょう? ふわっとありがたいような涙がにじむ世界でした。 この作家は素直です。その持ち味が大事にされますように・・・と、思いながら次作を手に取ろうと思います。

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