聞き屋与平―江戸夜咄草 (集英社文庫) 聞き屋与平―江戸夜咄草 (集英社文庫)集英社 2009-07-16
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宇江佐真理著

宇江佐さんが続きます。
これは主人公与平の晩年を描いて主人公の死で終るので、明るい作品とはいきません。といって主人公がしたいこと「聞き屋」という変わった商売で聞く話とそれから派生する様々なことどもは明るくないわけでもありません。       つまり人生はこんな色合いで終始するんだろうな・・・という感慨が生じました。 人の人生に関わるということは怪我無しにはできません。しかし聞いてもらうことで聞いて貰った人が助かるのは事実です。  ただ黙って聞いてくれる、そういう痛みを引き受けてくれる人が身近に居たなら・・・あなたは幸せです。聞いてもらって再生していく人が清清しく描かれています。人のつながりが幸せ感になります。
今、そういう人の居ない人が圧倒的なんでしょうね。
その意味で言えばまさしくこれは精神科の医者の原点です。カウンセラーの原点と言ったほうが身近かな?
薬を処方する前に出来ることがあるでしょう?ということです。
だからこれは時代をかりた普遍的人間の物語です。与平さんは亡くなってしまったのですが、ある意味聞くことの中にある醍醐味は奥さんに伝わったのかもしれませんね。この仕事は尽きぬ井戸のようなものです。作家の覚悟次第では物語は永遠に続いていくという気がするのですが・・・
人は聞いてくれる人を常に必要とし、また人に必要とされる事をしたいと願う人も常にいる・・・それが人間の営みのようですから。