神田堀八つ下がり―河岸の夕映え (徳間文庫) 神田堀八つ下がり―河岸の夕映え (徳間文庫)徳間書店 2005-06
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宇江佐真理著

初めてこの作家の作品を読んだ時には正直この作家の作品を好んで読もうとは思いもしなかった。それがたまたまサークルで取り上げられて有無を言わさず?回ってくるようになって・・・いい作品を見つけた。
今は回ってくるのを楽しみにしているくらいだ。
前に書いたが「たば風」が転機?になったと思う。その前にもこの作家は短編がよさそうだとは思ったが・・・「錦衣帰郷」で違う一面を見たように思った。こんな事をいうのもなんだが・・・この作品をしっかり書き込んだら、帰郷というその一面だけでなく徳内のすべてを描いたら、素晴らしい作品になってこの作家も男性の時代作家に肩を並べる・・・いや骨太の作家になるのではないかという気がした。次いで回ってきたのがこの作品。短編6作。「おちゃっぴぃ」と同じく長屋物。堀尽くし。登場人物のその後も入るので馴染みやすい。
先日宇江佐さんの作品の話をしていたときにある人の感想は「いかにも女が藤沢さんや山本さんの世界に女の情感を押し込んで書いているって感じが、女を感じすぎていやなの」だった。
そうか・・・と思った。「恋いちもんめ」を初めて読んだときの私の感想はそれに近いものがあったのかもしれない。だから彼女に「たば風」を読む事を薦めてみた。「違う印象を持つわよ」と。
しかしここ数冊の短編集の中には特に女性作家を感じさせない作品がある。しっかりした江戸の下町世界を堅実に構築している印象もある。確かに女性ならではの視線はあるがそれはそれでいい視線だと思う。
この6作の中では「浮かれ節」は既読。「どやの嬶」「身は姫じゃ」を楽しく読んだ。「身は・・・」のほうには落語の雰囲気もある。それが女性らしい視点で描かれているのが功を奏している。「八つ下がり」の友情もむきつけじゃ無くていい。しかしこういう話には確かにあるピリッとした何かが欲しいという気もする。そこがすこし惜しいような・・・。