利休にたずねよ 利休にたずねよPHP研究所 2008-10-25
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山本兼一著
実に面白く読みましたね。年が明けて書く読書録としては最高の本にあたったかもしれません・・・と、満足して・・・2回読み直したところです。ほんとのところ図書館から借りて週明けには返さなければならない本に追われているので、読み返す時間などないのですが、それでも読み返してしまいました。京都で三千家の佇まいを日常目にしていた私には利休という名は偉大で意外に身近です?一応お茶の経験もありますしね。歴史上の偉大な文化人という扱いでしょうか。でも政治家という側面も感じていました。
なにしろお茶のというか茶道の話をするとなれば・・・特に利休の侘びち茶の話となると・・・美しい物寂しい言葉が多出します。文を読んでいるだけで一つの世界にたゆたう楽しさを満喫できます。日常忘れていた美しい日本語にいっぱい出会えました。
それに利休の行きた時代の息吹!お茶を通しての武将、高僧、女性たちと利休のつながりがそれぞれの人から語られて生き生きと利休が立ち上がってきます。利休の色々な時の色々な横顔が。時代にのしかかるような一人の巨大な男、利休の生きた道筋が見えてきます。語る一人一人の人の心に大きな何かを刻みつけて逝った男、利休。それでもなお利休は一個の大きな不思議です。
聡過ぎる利器、利休。人の心の機微を底の底まで覗いてしまえる、利休。貪欲きわまりない豪腕、利休。あらゆる物を置き去りにして美のみを見つめられる情念、利休。畳の目一筋も読みきる繊細な美意識に支配される、利休。一人の女性に囚われて見果てぬ夢に絡み取られて枯れられない、利休。尊敬と憎悪に取り巻かれた、利休。様々な利休が様々な横顔を見せて大きな背中で坐っていました。家康のような(私は嫌いなので)策士が利休の掌の中で独り相撲を取っているみたいに心が右往左往するのが痛快でした。
あの緑釉の香合が宗恩の手によって粉々に砕け散った時、女としてはそうあるべきだと思いながら宗恩の見果てぬ夢を悲しく読み終わりました。誰の手にも余る男だったのかもなぁ・・・と。敬い尊ばれても当人は誰からも理解はされたくはなかった・・・そんな男を見せてもらったような気がします。