六月の夜と昼のあわいに 六月の夜と昼のあわいに朝日新聞出版 2009-06-19
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   恩田陸著
あらゆる小説の形式と、恩田作品のエッセンスが味わえる小説集。フランス文学者・杉本秀太郎による詩、俳句、短歌に秘められた謎と、新鋭画家によるイメージに誘われた、摩訶不思議な小説全10編を収録。と、あります。気をそそられるでしょう?

題がいいですね、夜と昼のあわいですよ、それもあの?六月の。濃厚なじっとり重い夜に昼か・・・。短編10作。しかし見事に20ページづつなんですね?最初の「恋はみずいろ」から当然読み始めます、ね。
それで、この本に好感を持ちました。杉本さんの作品?がどういう関係を持つのか良く分からないまま・・・この方は妙にフランス風調味料濃厚国粋型みたいなイメージ?よく知らないくせに無責任に言っていますが・・・結論から言えば私にはこの冒頭の1ページが本編の必要ではないという感じでした。作品を重層にしているとか奥行きを深くしているとかインスピレーションの源であるとか・・・いう感じはしなかったのです。「あわい」という言葉のためですかねぇ?
「約束の地」を読んでゴーギャンみたい・・・と、思って冒頭に戻ったら杉本さんのゴーギャンの歌。これだけは関連していたんだ・・・と。
むしろ挿絵の方がインパクトがありました。まず絵に引っかかって、作品に出かけていったという感があります。不思議なコラボレーションでした?
さて、この短編集最初の1作で感じた好感は次の「唐草模様」で、ちょっと待て!いやこのまま油断して読んでいってはならないような?
それでもまだこの作品は私の中に滑り込みました。
次の「Y字路・・」は好きですね。ルポ風な表現に乗ってその世界にするっと入り込む楽しさがありました。次の「約束の地」のゴーギャンはすぐイメージ浮かびましたが、私はあの絵が不快です。あの色、あの厚みに落ち着かなくなります。で、この作品にもその感じが濃厚でした。
そして、また「酒肆ローレライ」これも「Y字路」に共通した部分があって、より濃厚に情緒的でもっと好きですね。この世界紛れ込んで見たいのですけれど・・・こういう時って私には訪れないという確信がありますね。そこが私の人生の欠けている所なんです。
「窯変・田久保順子」はパターンです。星新一さんに限らず思い浮かんでくる作家がいそうです。類似の作を思い出せそうですし、ありきたりな感じがしますが、それでも面白く読めました。世界ってそういうことに満ちているといえばいえるさ・・・そんなもんさね。でもこうして消えていく命が実に多いのですから重いです、つい現実足元見えてしまいます。いえ、見ちゃうんです。
残りの作品は私には気持ちがよくなかったとだけ記しておこうと思います。忘れたいのです。そのほうがいいな、うん。