動かぬが勝 動かぬが勝
佐江 衆一新潮社 2008-12
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 佐江衆一著

先日「動かぬが勝ち」を朗読会で聞きました。
実に見事な朗読で、魅せられてしまいました。最もその魅力の8割までが演者の力だったような気がしています。が、でも、この作家さん、名だけは知っていても読んだことが無かったのです。で、どうかな?読んでみるものだろうか?
職人物で定評のある作家さんのようですが、そういうわけで私が最初に取り上げたのはこの作を含む7編(うち剣術ものが前三作、市井ものが後四作)
朗読で聞いた「動かぬが勝ち」が確かにこの中では一番印象が強い纏まった作品でした。何しろ主人公の上州屋幸兵衛がなかなかいい親爺です。娯楽的な作品の魅力の一は主人公に共感できるか?愛せるか?にあります。その点只今同じ老後を養う身としては・・・こういう風に意気高くいきたいものですよ。
「峠の剣」はあだ討ち物ですが、十歳の孫の父のあだ討ちを祖父と曽祖父が助けるという珍しい条件です。これを居合わせた湯治客の婦人の目から描くのかと思いきや・・・ちょっと視線がぶれる感じで甘くなったようです。
「最後の剣客」は一人の剣客の数奇な生涯を描いて、悲しいながらもいいものを味わせてくれたと思ったら・・・剣客の執着の凄まじさ・・・銃声の後味の悪さ。しかしこの作品がこの集の2番かな、私には。
残りの市井物は小品が揃った。色々の味わいがあるが割合情緒的でさらりとしている風だ。どちらがこの作者の持ち味なのだろうか?
饒舌でもないし無口でもないほどのよさを感じる。汲み上げる情感に共感もする。特に最後の「永代橋春景色」の主人公の変わっていくさまは丁寧に描写されていて、読後感もとてもよかった。最後にこの作品で、またこの人の作品を読みたいかも・・・と、思えた。