忍びの国 忍びの国
和田 竜新潮社 2008-05
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和田竜著

「のぼうの城」の作者の二作目の小説です。前作が本当に面白く読めましたから、直ぐ予約して待っていました。期待に違わぬ力の入った作品でした。
が、「のぼうの城」とは全く違う性質の舞台、主人公でした。文章の力強さ、骨格のしっかりしているところ・・・やっぱり畳み込まれてしっかり読まされてしまいました。
ただ、主人公はやはり「無門」という百地三太夫の下人なのでしょうが、伊賀忍者集団とも受け取れなくもないのですが、そして集団と見た場合、私も信長ではなくともこの「人でない者」たちは実に無気味でしたね。
最終的にはこの無門という男に共感が持てなかったことが決定的でした。
お国との経緯にはほほえましい部分や人らしい部分があるのに、それが却って彼の個人の気味悪さを増長させるようなところがありました。
勿論育ってきた環境などの説明はありましたし、想像力のすべてを動員して分かろうとしてみたいのに、分かったとしてもなおかつ共感は覚えられそうにありません。その育ちを知れば知るほどこの集団の気味悪さはどうでしょう!
確かに、それほど異質な‘人’を、またそういう人間たちのおぞましい集団を、実に見事に描いているとは思いました。銭と彼らの関係を実に見事に描ききっていると感心してしまいましたが・・・その主体となる部分は読んでいて楽しくはなかったなぁ。
丸山城築城落城の経緯などを別とすれば、本当の意味で楽しめた部分は日置大膳と長野左京亮と信雄のやりとりとその関係の部分と柘植三郎左衛門と下山平兵衛のような集団を外れた者たちの部分だったように思います。
昔、子供の頃に読んだような忍者物の楽しみは皆無のようでした。スピード感もあり、戦闘場面の描写は見事なだけに、厭なものも抱え込んでいるようで・・・。忍者者にはどうしても「猿飛佐助」「霧隠才蔵」とかワクワクする意表を突く冒険の楽しさを何処かで求めてしまうんですかね?
忍術?の凄さもちゃんと描かれていたのに・・・ちょっと郷愁・・・昔の忍者に。アレは楽しかったなぁ・・・真田十勇士とか?
最終場面の大膳の言葉がこだまするんですよ。
「虎狼の族の血はいずれ天下を覆い尽くすこととなるだろう。・・・・・・その血は忍び入ってくるに違いない。・・・自らの欲望のみに生き、他人の感情など歯牙にも掛けぬ人でなしの血は・・・浸透する。」
これが書きたかったんでしょうね。そしてこれがこの作品におぞましさを付加したものの真の正体かも?周りを見回して御覧なさい・・・ね?今の社会は・・・乗っ取られちゃったんだ・・・あの血筋の者たちに!
 

のぼうの城 のぼうの城
和田 竜小学館 2007-11-28
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