のぼうの城 のぼうの城
和田 竜小学館 2007-11-28
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和田竜著

初めての作家の作品ですが、ベストセラーとか?図書館に予約を入れましたら500人待ちでした。今現在でも400人余の人が予約を入れています。ようやく来た本ですから歴史・城好きの旦那にもお薦め、私に先だって読み、「結構面白かった」と言っております。
正統派?歴史時代物!素直な読みやすい楽しい作品になっています。
歴史の大体の流れは正確に現在伝わっているようにちゃんと押えていますし、その上で当然?もう真実の分かりようの無い実在の主人公とその周りの人物をとても魅力的に造形していると思いました。登場人物が好きになると作品の魅力は倍増します。そしてちょっと戯画化されているほど愉快な豪傑の関東武者たち。大好きになってしまいました。のぼう様の佇まいも「我が!我が!」の個性的過ぎる大物たちを纏め上げるにはこういう人物しか有り得ないだろうという風合い?が実にいい塩梅でした。
忍城へはお城大好き旦那に引きずられて行ったことがあります。
城跡の公園はホテイアオイの満開の頃で美しく綺麗な公園に整備されていました。 泥田・湿地帯だったという面影は、池を配した公園というコンセプトで生かされて?いるだけでした。
暑い最中に行田駅からのバスもなく、自転車で走らされた忌々しさがそのときの主な記憶です。それでも三成様が苦戦させられた城という興味は大きかったのです。私は彼がなんとなく好きです、頭のよさと見合わない?生き方の不器用さが・・・かな?
そのときにはこの忍城に篭城して戦をした成田氏の知識は殆ど無かったのですが、帰りにはそのときの城主成田氏長だけ覚えてきましたが・・・どうやら覚えるべき人物はその氏長が小田原城入城の後城代になった長親の名だったようです。
さて主人公ののぼう様は城主氏長の従弟に当たる、忍城城代長親です。この亡羊と取り留めの無い人物があの天下に名を残した忍城水攻めを凌いだ頭領に据えられたのですが、戦いの顛末は本当に小気味の良い後味の戦となり甦りました。
支える側になった農民の心の動きまでたくみに配されて、あの忍城攻防戦が実際にこのように行われたことに疑義のすき間も無く・・・と、読み終えた後わたしは好い気分で思っています。
戦前の忍城方侍大将たちの描写も、寄せ手の三成、吉継、正家のありようも私の気持ちにぴったり迎えられる巧みさ!
「うん、こうもあったか!」です。
歴史のすき間でかろうじて名を残した人々がこんな風に生きてくれると本当に嬉しい。こういうとき素直に作家に感謝を述べて、さらに面白い物を書いてねと念を押したくなるのですよ。