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三田完著

中西龍さんというアナウンサーを知っていますか?
私は全くラジオというものを聞かないので、この方をNHKのアナウンサーとしては全く知りませんでした。
アナウンサーの事を書いた本なら「読み」について何かいい示唆がえられるかもしれない・・・くらいの気持ちでした。
でもこの方の名、覚えがあります。鬼平犯科帳のナレーションに名前がありました。独特の声―美声、美声と本には書かれていましたが、私にはなんと癖のある特徴的な声だろうとは思っても美声として聞いた覚えはありません。鬼平のナレーションで、この人どこから持ってきたのだろう?知らない名だけれど、演歌の紹介するような司会業みたいな人かなぁ?ドサ回りの劇団の呼び込みとかアナウンス向きだぁ!なんて思った事を思い出しましたが、失礼でしたねぇ・・・でも、あながち全く間違えたと言うわけでもなさそうだな・・・と、読み終わって思いました。
個性というのは諸刃の刃ですよねぇ・・・。私はやはり女性の立場で読んでしまいますから、彼を通り過ぎていった多くの幸せにならなかった女性たちの事が思われます。葬式の前に殴られるたび一つ一つと増えていった指輪を見る奥様の心を見つめてしまうのです。
それでも彼女はどんな人間か知った上で、かなりよく知りぬいた上で結婚しているのです。龍さんの魅力のというか魔法の一端が見えるようで怖かったですね。使っている言葉の品(しな)と彼の性癖の間にある落差は業という厭な字をイヤでも思い出させます。
序章と終章を家族の立場から描き、真ん中は龍さんのドキュメンタリーと二村さんというNHK職員からの視線を交互にリレーしています。二村さんと(だけではないけれど)の会話で見せる「でございます」調と紅灯の巷で酔い遊ぶ姿態との落差は人間を怖いものにも、すごいものにも見せます。彼の詩には情があり、彼の短歌には気障があるけれど人の心を捉える心も同じだけある。だけど多分・・・と色々考えて、考えても及ばない闇を感じる。しかもその闇は愛情も打算も強欲も無常も無慈悲もなんとも濃いごったなもので練り上げられている臭さを秘めていて、これが中西ファンを生み出したのだろうなぁ・・・
アナウンサーとしてのお仕事に接することが無かったのを本当に残念に思いました。
せめて一生懸命あの鬼平のナレーションを頭の中に呼び出しているところなのです。
「咳、声、咽喉に浅田飴」 うーん、確かに、まだ記憶している。人の頭に刻み込まれる声を確かにお持ちだったのでしょうね。
しかしNHKというのはなんか厭なところだなぁ・・・ずーっと支払い続けてきたのはいいことだったんだろうか?とも。

歌酒場 ナレーション 中西龍 歌酒場 ナレーション 中西龍
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