グスターフ・シュヴァープ著

さて、私の不幸は「日本書紀」や「古事記」を読む前に「ギリシャ神話」に親しんだことにあるかもしれない、と思う時があります。
また反対に私の幸せな読書生活は、ごく小さい時に「ギリシャ神話」にめぐり会う幸運に因ってもたらされたのだと思う時があります。
勿論幼い時に出逢ったギリシャ神話は、子供向けのもので岩波の「少年少女文学全集」に載っていたものです。
その後高校生の時に白水社から出たこの本にめぐり会って、それからずーっと一緒というわけです。
あの当時お小遣いで買うには結構「高かったなぁ!」という意識が抜けないので大切にしているだけかもしれませんが?
多分この本に親しんだせいで、西洋の小説や西洋絵画が理解しやすかったのは確かです。
簡単なところでは先日公開された映画「ナルニア国物語」でルーシーが始めて会ったタムナスに「あなたフォーンね?」という場面があったでしょ?
ギリシャ神話を読んでいればあれは「パン」ローマ神話では「ファウヌス」英語では「フォーン」のことね?とすぐ思えたでしょう。
「パン」というのは小家畜の保護者で牧人・猟人の保護者でもじゃもじゃの頭髪に山羊の角と足を持つ髭男として現れますから。
シェークスピアとか古典を読む場合はもとより現代小説においてもこの本から得た知識は大いに役立っています。
もっとも映画「トロイ」などを見るとちょっと苛つくかもしれませんが。
それでも物語の足りないところを自分なりに補い付け加えそれなりの楽しみを引き出すことができますからね。
決して無駄にはなりません。
私の読んだこの本にはトロイの原作になった「イーリアス」と「オデッセイア」も載っていたのです。
外国の子どもたちには当然この神話の知識がありますから、例えば「赤毛のアン」とか、そう「ジェーン・エア」なんか読んでも神話からの挿話が随所に出てきますものね。
私の憧れのロチェスターはジェーンに「「ヴァルカン」のような男だ!」と自分の事を言うではありませんか。
で、ほらここでもまたギリシャ神話が役に立つというわけです。
英語の「ヴァルカン」はギリシャ神話の「ヘパイストス」ローマ神話の「ヴゥルカヌス」醜い火の神、技術と職人の神だ!って。
名前がややこしいという人も居るかもしれませんが、日本の神様方もその点では負けていませんよ。
それに神話の始まりはヤッパリどこの国も似たようなものです。
私はちゃんと勉強したわけではありませんから、ただただ楽しむだけの読者ですから、いい加減な事を言っているのかもしれませんが。
でも子どもさんが童話に親しみ始めたら、是非「日本書紀」と「古事記」と「ギリシャ神話」の子ども版を挟み込むといいと思いますね。
あー、欲を言えば「聖書」もね。
そうすれば長じるに従って読書の世界が広がり、楽しみ方の幅も広がるというものです。
私も自分の子供達にそうした(かった?)はずなのですが・・・?
今、この本は絶版?かも知れませんし、子どもには読みにくいでしょうね。
だから、阿刀田さんの本でギリシャ神話の世界に入るのがいいかもしれません。
全く、阿刀田さんって、読書を楽しむつぼをよく知っていて、痒いところに手の届くタイプかしら?って思うのですけれど、やるじゃないですかねぇ?
古事記から聖書までちゃんと網羅していらっしゃいますよ!
これって、結局、阿刀田賛歌?