ぬしさまへ ぬしさまへ
畠中 恵新潮社 2003-05
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畠中恵著

はい!はい!やって来ました!シリーズ第二作がようやく読めました。平仮名で「ぬしさまへ」とある題名、果たしてこの「ぬしさま」はあの「主様」のことであろうか?・・・一寸三味線を入れて鼻声で「ぬしさまに・・・」とか「ぬしさんは・・・ありんすか?」なんて唸りながら待っていました。
恋文の宛名だったのですね?第1話でした。
でもこの本で一番嬉しかったのは「ねこのばば」を読み終わってから心配でならなかった仁吉の過去がやっぱり書かれていたことです。
案の定でしたね。長い長い片思いが丁寧に騒々しくなく語られて、この一編は仁吉ファンの私には嬉しい贈り物になりました。
この本の1話で語られた「あ、煙管の雨が降るようだぁ!」みたいな恋文の雨が降り続きそれを一顧だにしない仁吉の奥の奥に潜む初心さに嬉しくなりました。全く恋人にはこうあってもらいたいものですよ・・・って、それは罪だろ!可愛そうに、ねぇ?
何百年毎かに「恋と喪失」を繰り返す輪廻?そっちもきつそうだけどなぁ・・・と、ロマンスより安穏を選びかねない?私はちょっと思わないでもない・・・けど。人間の本質も妖の本質も変わらないんだね?
そんなわけでこの6話、好きな順に並べると・・・
「仁吉の思い人」
「空のビードロ」・・・え~困った。「松之助関係は柱の一つみたいでいろいろ知りたいのだけれど、この事件は先ず動物殺しからおぞましく、登場人物もおぞましい。いやな部分が多くて困るよ。
作品全体の読後感は悪くなかったのです。長崎屋はいつもの長崎屋ですし、一太郎は期待通りに頭の鋭い立派に体の弱い若旦那だし、妖たちはいつもの面々、何の不足も無く風景は同じです。
ただね、私的には兄松之助が登場するたびに長崎屋の大旦那が分からなくなるのです。「ホントはどんな奴だ?」って。
ですけれど主要な面々が既にもっと先の作品を読んで好きは好きになっているから?余り悲しい殺人事件はなしにして欲しいなって思ってしまうのでしょうね。悲しいだけならいい、おぞましいのはね。ついで「栄吉の菓子」かな?
「栄吉の菓子」は良く出来ていました・・・と、思います。
老人の孤独も、彼と栄吉の間に流れる細い糸のような交情も。でもこの老人の考えた賭けは他の作品でもよくある自殺して犯人をでっち上げ恨みを晴らすって筋書き風ですが、欲しかない人々しか身辺に集まらなかった(められなかった?)老人の孤独は悲しく思えてこの事件はやっぱり厭だな。
「ぬしさまへ」の殺人事件も犯人の少女も哀れすぎて・・・イヤだな。
「四布の布団」も「虹を見しこと」もそう。彼らの醸す雰囲気にはそぐわない・・・と、勝手に決め付けてしまいました。それなら自分で書けよと言われそう?そう、どうやら期待するものが私の中で勝手なイメージに膨らんで先走っていますね。
解決の上手さはあるし、妖との連携、会話、ユーモア(含ブラック)、情も好もしくちゃんと揃ってはいるのです。お江戸も今も事件は事件、猟奇的事件は同じく猟奇的、厭な世相は厭な世相と共通ですから仕方ない!か。
真綿の中で一本立ちの努力をする6話目の一太郎君がホント可愛い!
 

ぬしさまへ (新潮文庫) ぬしさまへ (新潮文庫)
畠中 恵新潮社 2005-11-26
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