蜩ノ記 蜩ノ記
葉室 麟祥伝社 2011-10-26
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葉室麟著

葉室作品3作目。 なかなかいいな…と思う、さりとは周平さんや周五郎さんを読んだ時のような熱狂は起こりようもなく…それでも乙川さんより素直に読めるか?という期待を抱きつつ…3作目は?と期していたら…直木賞! 受賞前に予約しておいたのでこの段階で手にすることができた。
この作家の作品の中では今までで一番いい。
周平さんの「必死剣鳥刺し」を思い出した。
大名がいて、家来がいる。武家の不条理。独りよがりな理不尽な刑。
「鳥刺し」の主君よりましだろうか? 与えられた十年は死へ向かう10年で。 疑義を抱きながら仕えつくす数年とは違う。どちらがつらいか…想像でしかないが。
いずれにしても、凛とした佇まいの武士の姿を描き出したことは確かだろう。
その姿には瞠目する。 しかしこの作品で最も瞠目すべきは…というよりいやでも引っ張られてしまうのは源吉の姿である。 身近に手本もなく、生きてきた時間は余りにも短い。なのになぜ彼はこうも出来上がっているのか? 短命の人は生き急ぐ。早く大人になりすぎた。あり得ない…そこへ行きつく。 自分の息子があの年であのように出来上がっていたら…親は立つ瀬がない。 しかしその域を超えて源吉の佇まいは感動を呼ぶ。 かなわないと思う。 かなわないといえばこの家族全部がそうだ。 日常が忙しければ忘れていられるというものでもないだろう…常に終わった一日をため息とともに数えなおす日々だろうのに。
立派過ぎると思いながら教えられることはその中に確かにある。 10年と限られなくとも人は皆有限の中に生きているのだから。 私は悔いと忸怩で生きている。

さて、先日殆ど半年以上振りでこのブログをアップした。これは昨年読んで記しておいたものを遅ればせにということなのだが…どこで気が抜けたのかこの半年ほとんど読んだ本の感想を記していない。そうして顧みれば…ナント読んだ本すら覚えていない…あんまりだこの老け方は…物忘れの段階ではない。だから今年今から遅ればせにまた書き始めようと思っている…が…。この…が非常に多くなっているようで、これまた心配点ではある。