三屋清左衛門残日録

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藤沢周平著

時代物って、ここ数年ますます人気になっているって本当でしょうか?
駄目といわれれば読みたくもなります。
小学生の頃父親の本棚は秘密の花園。
「下の方はお前たちも読んでいい本・ここから上の方はもう少し大きくなってから。」といわれれば、上の方から読みますよね?
そんな天邪鬼は私だけ?
というわけで中学になる前にもう子母沢寛・村上元三・柴田練三郎・などを読み飛ばして、たどり着いたのが山本周五郎さん。
心残りは「読んで良し!」と言われたばかりに読まなかった島崎藤村全集!なぜか今更とっつけないのです。
そんなわけで中学生の頃は周五郎さん三昧。
他の方々には私は馴染めませんでしたが、周五郎さんの世界はそれに比べてなんと居心地が良かったことでしょう。
お説教じみていていやだという人もいるようですが、私には素直になれる優しい世界でした。
悲しみも辛さもじんわりと沁み込んできて、だからこそ優しさも響いてくる世界でした。
あらかた読んでしまってさぁ、どこへ?
そして時が流れて藤沢周平さんにめぐり会ったのです。
周五郎さんを読みふけったように、周平さんを読みました。
「溟い海」から入って虜になったのですから、最初明るい優しい世界だと思っていたわけではありません。
それでも周平さんは一気に読ませる何かを持っていました。
重い暗い苦しい世界から明るい光や望みに満ちてひょうきんなユーモアのある世界まで広い広い世界が広がっていました。
本の中の人がそこで生活していて、生きていて、泣いて、笑って。
読めば読むほど魅力的な世界が広がっているようでした。
「時代小説」は別に昔の人の生活を覗くものではありません。
人の心の世界はどんな衣をまとっていても普遍だという事を実感させてくれるだけで、そこの住人は今隣を歩いている人となんら変わりは無いのです。
彼の紡ぎ出す世界は「リアルがセピア色を帯びているだけ」という気がします。
だから私も一緒に笑い泣いて・・・
特に「三屋清左衛門残日録」は「いい世界で、いい心持で読めて、読後感も良くて・・・周平さんて本当にいいなぁ!」でした。
それが60歳を目の前にして、もっと切実に「いいなぁ・・・!こんな風に生きていけたらなぁ。」的?読み方になってきて、今では清左衛門さんの世界に密着している感じです?
清左衛門さんは55歳前のご隠居さんですけれども。
是非引退?する迄に、ご隠居さんになる前に、夫に読んでもらえたらと思うのですが、(男の中にはこんな人も居るんです?)周五郎さんや周平さんの世界を情が勝ちすぎていて軟弱だと思っているようで?(読んだこと無いくせに!)残念ながら読みません。
せめて出だしの第1章「醜女」だけでもねぇ・・・と、思うのですが。
老いて残りの日を数える「残日」ではなくて「日残リテ昏ルルニ未ダ遠シ」の意味だそうです。
確かに清左衛門さんの人生はまだまだ色々あり賑やかでもありますが、一つ一つの挿話に緩い下り勾配を歩んでいるそこはかとない悲哀が漂って、坂道を下っている私にも迫ってくるものがあります。
友人たちに「これ本当にいいわよぉ!」と、貸したら、
「ホント面白かった!」
「じゃァ、次私が借りるね。」・・・といって廻っているうちに行方不明になってしまいました。
皆夫が定年、もしくは限りなくそこに近づいているから?
還ってこないので読みたくなったら図書館で借り出してくる始末です。
ストレス解消には周五郎さんの「日本婦道記」を読んで思いっきり涙を絞るか、周平さんの「三屋清左衛門残日録」を読んでソフトタイプの感傷に浸るか!の私です?
最近映画やTVドラマでも彼の原作になるものが多くなりましたから、TVや映画で周平さんを好きになる人も多いのでしょうね。
特に数年前にNHKでしたTVドラマ「三屋清左衛門残日録」はなかなか丁寧なよい出来栄えだったと思いました。
仲代達也さんは適役でしたが、それ以上に熊太役の財津一郎さんが秀逸で私のイメージにぴったり、更に南果歩さんの嫁・里江がきりりと歯切れよく明るさが小気味よく良かったと思いました。
せめて「蝉しぐれ」もこのくらい丁寧に・・・ねぇ・・・!
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メリーゴーラウンド

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ロザムンド・ピルチャー

メリーゴーラウンドはこの世界の象徴である。
子どもらしい、愛らしい、懐かしい、人がメリーゴーラウンドに抱いているすべてのものを思い出して欲しい。
そしてそれを美しい色彩の混沌というか、シャッフルというかしたものが、ここでのピルチャーさんの世界である。
つまり似つかわしいものの、理解しあえる人の、「輪」とでも考えたらいいのではないかなぁ。
血縁を取り除けてここには同じ魂を持った人々が自然に結びついて生まれた優しい世界が誕生している。
主人公のプルーは両親の愛も理解も受けなかったが、芸術家魂を持った伯母とその連れ合いにはとても愛されて幸せに育った。
サブ主人公ともいえるシャーロットは経済的には豊かだけれど愛の無い家庭で非常に孤独に育っている。
この二人がコンウォールの芸術家魂を揺さぶる美しい景色の中で出会って、同類という家族が生まれてくるという物語だと私は思って読んだ。
そしてこの物語のもう1つ女性読者を引き込まずにいないキーワードは芸術である。
優れた絵心を持っている人々が引き合って愛が生まれて、理解が出来て、ぬくもりが生まれていく。
なんと格好よくも魅惑的であることか。
芸術の才能の無い読者としては羨ましくも憧れる。
風光明媚な観光地での恋が語られるのだから、これが憧れずにいられようか?
全く、「アーティスト」「画家」って言うだけで殺し文句だ。
繊細で、気まぐれで、美の探究者・・・多分、絶対、永遠には独り占めできないものよ・・・ため息。

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