曙光の街 (文春文庫) 曙光の街 (文春文庫)
今野 敏文藝春秋 2005-09-02
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今野敏著

 

警察ものとかスパイものとかハードボイルとか…を扱った作品が好きなんだから読んでみるか…と、貸してもらいました。で、初めて読んでみたのです、この作家、ずいぶん作品が出ています。好きになればまたこれも泥沼。 

で、好きになったかも! こういう作品の主人公の男の人って…やるせない!切ない!だけどたまらなく魅力的。 本能のどこかにクールを装ったいじらしい優しさが組み込まれているんだろうね。 間違ってもやりすぎない。程よく微笑む。 このほどの良さは…泣ける。 復讐すら何とも程のよいところで完結する。 どうしようもなく引き寄せられてしまう。

こういう小説を読むと普段まったくと言っていいほど女性であるということを意識していない私が女性に返る。 ヴィクトールの生きている立場のなんとやるせないこと! 追い込まれる究極の選択。 そしてその見事な知性&腕力&技能の完璧さ。 絶対男性読者のために書かれた作品だとは思うけれど、男が惚れる男には女も惚れる。 兵頭にしろ倉島にしろほんまもんの男のそばにいるとほんまもんの男になるんだねぇ…と、なんだかハードボイルを読むたびに私はつぶやくんだな。しかし日本って本当に甘い国なんだね? 国境はどうなっているのかな? 公安は機能しているのかな? ともつぶやくんだね。ま、たまにいい男も排出するからいいのか!

さて「次も読んでみるか?ヴィクトール」と、父が言った。

そう、この本はちょうど卒寿を迎えた父から回ってきたんですね。90歳が読む本かなぁ…読む本だわ、結末のなんと甘美なことか!