茗荷谷の猫 茗荷谷の猫
木内 昇平凡社 2008-09-06
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木内昇著

「染井の桜」「黒焼道話」「茗荷谷の猫」「仲之町の大入道」「隠れる」「庄助さん」「ポケットの、深く」「てのひら」「スペインタイルの家」短編9つ。木内さんが直木賞受賞して「のぼり」さんと呼ぶ女性であることを知りました。 受賞作の「漂砂のうたう」は出遅れて、図書館で借りられるのは…270人待ちです。ある意味意外でもあります。宮部みゆきさんの「小暮写真館」などは半年も前に予約して…まだ350人待ちですものね。もっとも私は賞というものを取ったからって予約することはあまりないのですが。「漂砂…」は描いている時代と人に矯味があります。                 この作家の作品は以前「染井の桜」を朗読された方がいて、のぼるさんと呼んでいたように記憶していました。 いいなと思い作品を検索してみたらなぜか新撰組関係が多いようでした。ですからてっきり男性だと…。が、まだ作品は少ないです。 しかし今回この作品(すぐ借りられたので)読んでみてなかなかの短編作品群に感嘆しました。うまいです。 少しずつ関連のある何かによって作品が続いていくのですが…そのつながりの妙はおいておいても、一つ一つが全く別種の趣を奏でています。 ま、好きなのも嫌いなのも。 でもそれぞれに不思議な興趣があって…読まされました。              たぶん私には「染井の桜」と「てのひら」が一番素直に読めたと思います。 特に「てのひら」は自分の身に沿ってくるというか、時代の雰囲気、母と娘の微妙な感情の擦れ違い思い入れというものが身近で、感傷に飲み込まれました。この作品群を読んで、この作家は「私好きだな」と思わされたのですが、それより文体やそこに横たわる感情の微妙な危うさが奇妙なねじれを感じさせて…一筋縄ではいかない作品を提供してくれそうだな…と背筋がゾクゾクっとします。楽しみでもあります。 その感じは「茗荷谷の猫」とそれに続く「隠れる」で気持ちに引っかかるとげのようなものがざわざわするのですが、「てのひら」で何がしか家に関してはほっとさせられて、それが読後感をよくしているのかもなぁ…。             内田百閒さんて「まぁだだよ」のあの先生ですよね?いったい本当はどんな人だったんだろうね?と、妙に気になっていますが。