武家用心集 (集英社文庫) 武家用心集 (集英社文庫)集英社 2006-01-20
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  乙川優三郎著

この人の作品は・・・5・6冊読んでいるのですが・・・悪くないのです。
でも、もう一つ好きになれないのです。というか絶対作家の方で好きになってくれなくて結構!という姿勢でいるに違いないっていう気がしています。今まで読んだ本は、表現も、使う言葉も、とても吟味して丁寧に書かれていると思いました。それだから?隔てられているという気がしてしまうのかなぁ?と、思っています。親しくなれない感じです。
主人公たちもとてもシャイで謙譲の精神が漲っている?
「心の本当の所は明かせないのよ」とつぶやいて、いや嘯いているような気を感じるのです。知ってもらいたくて描いているんじゃないの?その態度は何よ!と言いたいもどかしさを感じるんですね。
庶民のものでもそう感じさせる作家の武家ものですから・・・さて、どうでしょう?短編8編・・・で、結論から言うと、やっぱり隔てを感じました。
節制、抑制、利いています。武家が用心するのですから・・・やはり垣根越しですかね。それが主題とシンクロしている部分も確かにあって、今まで読んだ中ではその点でこの題材はこの作家にはしっくりしているのではないかなどと不遜な事を思いました。
心配りのいい人とか、察しのいい人とか、気が利きすぎる人とか・・・皆ニュアンスは違いますが、私にとって怖い人たちです。読まれるって厭ですけど、読もうとする心ってもっと厭だと思うんですね。
この作品の人々はその気配が濃厚な心配り過ぎて息を詰めている繊細な人々のようです。
でも、清清しさを感じさせてくれるところがあるのが救いです。ただしそこにたどり着くまでの過程を楽しめるかどうかが乙川さんのファンになるかなれないかの分かれ目かも。